人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小
チャールズ・グッドハート(著)
,マノジ・プラダン(著)
,澁谷浩(訳)
/日本経済新聞出版
作品情報
■デフレ、低金利の時代がついに終わる。インフレと金利上昇の時代が到来する。グローバル化のスピードはゆっくりとなり、労働分配率の向上、賃金上昇から格差は縮小に向かう。■世界経済の大転換をもたらす最大の要因は、高齢化、労働人口の減少による世界的な人口構成の変化とグローバル化の減速だ。■コロナ感染症世界的流行の衝撃は、本書で描いたトレンドを加速させる。インフレはわれわれが想定していたよりもずっと早くやってきて速度を上げて上昇することになる。■インフレ率は、政治指導者が許容できる名目金利を大幅に超える水準まで上昇するだろう。金利上昇に伴って国債価格は下落し、非金融部門の企業や政府が抱える過剰債務は債務返済の負担を大きく増大させるだろう。■それによる敗者は貯蓄者、年金基金、保険会社、それから金融資産を主に現金で持っている人々だ。中央銀行が高いインフレ率に不満を感じ金利を上げようとするならば、中央銀行の独立性を脅かすような政治的怒りに直面するだろう。■中国が世界的インフレを抑止することはもはやない。中国が世界経済に与える影響はもはや過去のものとは同じではない。■すでに高齢化が進んでいる日本でなぜ、新しい変化がまだ起こっていないのか。この謎解きも行う。
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商品情報
- 著者
- チャールズ・グッドハート, マノジ・プラダン, 澁谷浩
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2022.05.23
- Reader Store発売日
- 2022.05.23
- ファイルサイズ
- 23.7MB
- ページ数
- 376ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (13件のレビュー)
-
「大逆転」といったタイトルでもあり、異説、新説のような雰囲気だが、読み始めると、これが王道だと感じるほどに説得力がある。主張をひと言で述べるならば、"人口構成とグローバル化が今後30年ほどインフレ圧力…をもたらす”ということ。少子高齢化は、経済の衰退とデフレを齎すという論説への反論本である。・・・が、インターネットを検索すると「少子高齢化がインフレを齎す」という論説も多い。異説でも新説でもないし、そもそも説得力があるものだという事を少し残念にも思いながら、気を取り直して、その両端の考えを読み解いていく。
中国の台頭と東欧の世界貿易システムへの参加は、世界貿易における利用可能な労働力に、巨大な供給をもたらした。さらに先進国では、団塊の世代が労働力に加わったり、女性の労働市場への参加が増大したりという2つの変動要因が加わり、1991年から2018年の27年間に先進国の実効的な労働力の供給量は2倍以上も増えた。これにより、労働者が溢れ、交渉力が弱体化した。
端的に言うと、高齢化により労働者が減れば、交渉力が復活するという事。更に、商品は輸送できるが高齢者の介護のようなサービスは輸出できず、労働力の自国確保の必要性が増す。実証的にも、高齢化はインフレ圧力を生むことが知られている。また、グローバル化は、国際分業により世界的な格差を縮めたが、国内の不平等は数多くの国において拡大してきた。安価な国に製造業の生産が移り、労働者の競争相手がグローバル化されたためだ。
「では、なぜ日本が当てはまらないのか」本著の真髄はここから。
少子高齢化が顕著である日本が、デフレ下にあったのはなぜか。著者は幾つかの論点を挙げる。一つは、日本企業は国内の労働力不足を相殺するために、グローバルな労働供給を利用する行動をとった事。1987年から海外関連会社の数は5倍以上に増え、海外投資、海外生産比率共に長期に上昇傾向にあった。海外市場を開拓して安価な労働力を利用しようとすることで、結果的に国内のインフレ抑制に影響与えていたのだ。また、バブル崩壊に続く複数の銀行の倒産、アジア危機。これらの時期に失業が増加し、賃金が低下した。
もう一つ。日本の社会的価値の中で、雇用保障が最優先事項となっている。雇用者による解雇(雇い止め)は、非難の目で見られるものであり、不明誉で好ましくない行為である。そのような厳しい社会慣行のもとでは、他の国々と違い、経済の成長鈍化が失業率の上昇に伴わない事は、驚くべきことではないという。
日本だけ特有の理由と言われると確かにその通りだと思う。中国が隣国にあり、生産工場を移管した企業は多数あったし、日本に逆輸入するメーカーも存在した。こうした要因を無視して、これからの景気動向は語れない。読んで良かった。続きを読む投稿日:2024.03.12
人口大逆転、、、変な日本語だが、
要は人口ボーナスから人口オーナスへ転換した国で何が起こるか、
これを真っ先にその状況、すなわち高齢社会になった日本をモデルにして考察する、
というユニークな本。…
本来高齢化社会になって労働人口が減ると、高金利、インフレが起こるはずだが、
日本はならなかった。
その理由はグローバル化にあったと解説。
日本は労働力を海外に求めた。現地生産という形で。
結果インフレはおこらず、日本自体が低賃金国になったのが現在。
日本もさることながら、中国もその入り口に来ていることに警鐘を鳴らしている。
それだけ世界経済における中国の影響が強くなったということだ。
この本はコロナ前、2019年に書かれている。
コロナ後にインフレが加速することまで予見していて、しっかりした本だ。続きを読む投稿日:2023.09.08
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