マインドハッキング―あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア―
クリストファー・ワイリー(著)
,牧野洋(著)
/新潮社
作品情報
ネット上の行動履歴から利用者の特性を把握し、カスタマイズした情報を流すことで行動に影響を及ぼす「マイクロターゲティング」。フェイスブックから膨大な個人情報を盗みこれを利用したのがケンブリッジ・アナリティカなる組織だ。彼らは何のために国家の分断を煽り、選挙結果を操ったのか。元社員による衝撃の告発。
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商品情報
- 著者
- クリストファー・ワイリー, 牧野洋
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 書籍発売日
- 2020.09.18
- Reader Store発売日
- 2020.09.18
- ファイルサイズ
- 1.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (11件のレビュー)
-
選挙対策もコロナ対策も根本は同じ
10代後半から20代前半でどれほどのことができるだろう?
鼻ピアスに髪を染めた表紙のこの若者は、若くして車椅子での生活を強いられ、プログラミングにのめり込むと同時に政治にも興味を示し、とりわけオバマ…陣営の選挙活動に感化され、母国カナダの政党に加わり党の選挙対策を進めるが、あまりの後進性に絶望し、イギリスに渡る。
大学に通いながら今度は英国の少数政党に参画するが、党勢衰退を予測して煙たがれ辞める。
次いで軍事コンサルタントのデータ分析官として働き始めるが、ある画期的手法で膨大な個人データを集めることに成功する。
それを利用して、ターゲットに個別のメッセージを流布し、世論を操作するビジネスモデルを確立する。
アメリカの大富豪からの資金援助を受け、全世界で明らかな違法行為に手を染める同社に次第に不信感を強め、昇給を固辞して会社を辞める。
その後に起こったブレグジットや米大統領選でのトランプ当選に同社が深く関与していることを知り、告発を決意し、ガーディアンやニューヨーク・タイムズなどで不正の実態を話し、アメリカやイギリスの議会の公聴会で証言する。
フェイスブックからは訴えられ、すべてのアカウント停止措置も受けている。
ここまで15歳から25歳までの出来事で、すべての内幕を暴露した本書出版時もまだ20代だろう。
おそらく映画化されるだろうし、本書にも出てくるヒュー・グラントは、本人役で出演することになるはずだ。
映像化も楽しみだが、本書の価値は単なる原作以上のものがある。
告発内容も凄いのだが、とにかく全編に渡って入る著者の政治・社会学的分析が的確で、専門家も顔負けだ。
選挙におけるマイクロターゲッティングの対象者の選定や、文化と過激主義の不思議な相関関係など、当事者の視点とは思えない深みがある。
騒動が落ち着いたら、カナダのトルドー首相は、台湾のオードリー・タンのように、著者をデジタル担当大臣として登用したらいいのではと思わせるほどの有能さ。
本書で最も意外で印象に残るシーンは、スティーブ・バノンとの初対面の場面だろう。
いまのように誰もが知る存在になる前のバノンが、同社のターゲティング責任者である二十歳そこそこの若者に会いに、わざわざイギリスを訪れる。
目は血走りやさぐれた感じの強面の男が矢継ぎ早にする質問に淀みなく答える著者。
最初のミーティングから波長が合い、オタクな仲間同士、時を忘れ語り合う。
「文化を変えたいんだ」とバノンが語れば、「では、どう文化を定義しますか?」と合いの手を入れる著者。
意外に感じたのはこの部分で、短兵急な狂信者のイメージしかなかったバノンが、根本的な変革を志向していたと知り、恐ろしさはかえって倍増した。
政治とファッションは根源的な部分で共通しているという指摘も面白い。
他人との関係のなかで自分自身をどう見ているのかという微妙な構成概念に基づいているため、どちらも周期的に変遷する文化とアイデンティティだと捉えられ、同じ現象を違うやり方で明示しているに過ぎない。
イスラム過激派にしても、ナチやKKKにしても、イデオロギーより彼らが信奉する美学やファッションを分析するほうが遥かに有益だと断言する。
文化と過激主義はお互いを補完し合える関係なのだから。
オバマ選対本部がパイオニアとなり、2008年のアメリカ大統領選挙で展開したマイクロターゲッティングは、大量の有権者データを取り込んで細かくカテゴリー化する機械学習アルゴリズムを使い、どの有権者を説得して、どの有権者を投票所へ向かわせるべきなのか、最適なターゲットを予測する。
ターゲット対象は、「支持者でありながら必ずしも投票しない有権者」と「投票するが支持者ではない有権者」で、「投票所に行かない有権者」や「支持者になりそうもない有権者」はもとより、「支持者で投票もする有権者」でさえ対象から外される。
ケンブリッジ・アナリティカ(CA)は上記を改変し、「投票所に行かず支持者になりそうもない有権者」も対象者に変えた。
ターゲットとして最もふさわしいのは、神経症型か自己陶酔型の人間で、ストレスをもたらすナラティブに対して弱く、衝動的怒りや陰謀論に傾きやすい集団と定義する。
CAは彼らに対して、フェイスブック上の広告や記事経由でナラティブを流し、感情に火をつける。
フェイスブック上にフェイクページを作り、怒りに火をつけるようなビデオや記事を大量に見せるのだ。
続きを読む投稿日:2020.12.20
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人が、初めてネットの海を知り、その世界に漕ぎ出した時は、新しい出会いに胸を膨らませていたと思う。
たとえ、今、実際に周りにはいなくても、この広い世界には、きっと同じ思いの人がいる、、、って。
現実で…はなかなか出会えない誰かと出会えて、新しい繋がりを生み出してくれる夢のような世界、
・・・そんなふうにネットの世界に期待した人はたくさんいるんじゃないのかな?
それなのに。
今、ネットでは、個人情報を掴んで、それぞれの人を狭い枠の中にカテゴライズし、それぞれの枠のなかで心地よい情報だけを流すことで、異なるもの同士の深刻な分断を生み出している
ことを、この本は暴露している。
続きを読む投稿日:2023.02.13
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