チョンキンマンションのボスは知っている
小川さやか(著)
/春秋社
作品情報
香港のタンザニア人ビジネスマンの生活は、日本の常識から見れば「まさか!」の連続。交易人、難民、裏稼業に勤しむ者をも巻きこんだ互助組合、SNSによる独自のシェア経済・・・。既存の制度にみじんも期待しない人々が見出した、合理的で可能性に満ちた有り様とは。閉塞した日本の状況を打破するヒントに満ちた一冊。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (70件のレビュー)
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大事なのは、「ついで」にいかに便乗するか
一般向けのエッセイとはいえ、同僚から呆れられるのではと心配になる赤裸々さ。
「ペーパー・ワイフには年齢も見た目も関係ないぜ」(失礼な!)、
「彼女はもうすっからかんだ」(今度はこっちがねだるから!…)、
「ボスの第2夫人だよね?」(よく誤解されます)。
香港のタンザニア人たちのインフォーマル経済は、誰も信用していないんだけど、コミュニティの中でお互いがそれぞれの「ついで」にできることをしあう緩やかな互酬性を基盤としている。
他者の多様性が生みだす偶発的な応答の可能性に賭けているため、外部の評価システムには依存しない。
香港のアフリカ人たちがどのようなビジネスをして稼いでいるかも興味深いが、彼らが参加するTRUSTの送金システムが面白い。
海外ビジネスでは当たり前なのかもしれないが、手数料を極力少なく換金なしに香港とタンザニア間で金銭を動かすカラクリは、読んでいて一番唸ったところ。
ただ、最新の「シェアリング経済」と重ねあわせたり、日本社会を対比に出して分析したところはちょっと我田引水が過ぎる気がした。
むしろ著者にはそんな小難しい分析よりも、現在の混沌する香港情勢を受け、彼らのビジネスの変容ぶりを追った続編を期待したい。続きを読む投稿日:2020.01.19
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ずっと読みたかった本。ちょうどこの頃(2017年)観光の途中、一人チョンキンマンションに入って奥まで行こうとしたが、わりと早目に引き返してしまった。そのチョンキンマンションの話、読みたい読みたい。
タ…ンザニアの零細商人の商慣行などを研究する女性って、また、そんなマイナーな。なんかすごいなぁと思ったが、読み進めていくと、「役に立つ研究」とか「役に立たない研究」とか区別したくないけど(正直に言うと最初、そんな研究、何のため?と一瞬思った)すごく私にとって「役に立つ」というか、目が開かされる本だった。新しい考え方をもらえた気がする。
なかなか日本人の私には遠い商売のやり方であるが、カラマを中心とするタンザニアの人々のしたたかさ、たくましさ、そして何よりも、いい加減さがとても魅力的だった。
「人を信じるな」と言いつつ、ピンチにある同胞の面倒を見続けたりする。
「他人の人生は他人のもの」と言いつつ、組合を結成し、お金を出し合う。お金を出せない人、活動に貢献しない者も支援する。困っている人がいれば、貢献度や「原因」を問わず、陥った状況だけに応答し、支援する。そこが素晴らしいと思う。日本ではなかなか難しい。「原因」を問い、「そんなの自業自得でしょ」と冷たい反応をしがちだ。また細かな規則や規範をできるだけ作らない。「いろいろな事情があるのだから、細かいことをいうのはやめようぜ」と。
こうした態度にはいくつかの背景があるらしい。本文によると
1.他人のビジネスや行為に踏み込まない。そのため、その人間の事情は知り得ない。自己責任なのかどうか判断できないと考える。
2.個々の実践・行為の帰結を人物評価に結びつけない。「誰も信用しない」というのは、誰しも置かれた状況に応じて良い方向にも悪い方向にも豹変する可能性があるという理解に基づいているのではないか。「いま」の状況に限定した形でしか評価しない。責任を帰す一貫した自己などないと認識しているように見える。
3.メンバーは流動的に国の間を移動するので、厳密な互酬性を考慮、計算できない。
考え方に惚れ惚れする。日本人、聞いてるか?と思う。
いろいろ書き出したいところが多いのだが、最終章で著者がきちんとまとめてくださっている。その結論は勉強になるし、日本人ももっと見習った方がいいのではないかとか、これからの経済はある部分はこっちの方に向かうのが良いのではないかとか、最後に改めて考えさせてくれる。
でも本書の魅力はその研究の果実の部分だけではなく、「チョンキンマンションのボス」カラマの愛すべき人間性、著者との親密な交流、それ以外のタンザニアの人々の姿も生き生きと明るく楽しく描かれていて、自分もそこにいてみたいと思わせる臨場感があり、エッセイを読むことの喜びを読んでいる間中、感じさせてくれるところだ。続きを読む投稿日:2024.04.13
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