パイドン-魂の不死について
プラトン(著)
,岩田靖夫(訳)
/岩波文庫
作品情報
人間のうちにあってわれわれを支配し,イデアを把握する力を持つ魂は,永遠不滅のイデアの世界と同族のものである.死は魂の消滅ではなく,人間のうちにある神的な霊魂の肉体の牢獄からの解放である-ソクラテスの最期のときという設定で行われた「魂の不死」についての対話.『国家』へと続くプラトン中期の代表作.
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- パイドン-魂の不死について
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波文庫
- 書籍発売日
- 1998.02.16
- Reader Store発売日
- 2018.11.15
- ファイルサイズ
- 1.9MB
- ページ数
- 222ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.1 (36件のレビュー)
-
ソクラテスがその死の直前に語ったとして展開される魂の不死・不滅についての議論。
彼の最期の場面に相応しく劇的な雰囲気で述べられるこの議論は、緊張感もあり議論も割とわかりやすいので、『プラトン』の中では…読みやすい方なのではないだろうか。
ソクラテスがいよいよ毒をあおり刑死するその当日、皆が最後の別れにと参集する。数えてみると何とその数20人ばかり!。牢獄の中はさぞや熱気でむんむんしていたことだろう。(笑)
遺言を訊かれたソクラテスはそこで問題発言をする。同じ哲学者(?)であるエウエノスにも早く自分の後を追うようにと伝えよと。ここに、仰天し見事に喰いついてきたシミアス&ケベスとソクラテスとの対話が始まる。(今回も書名と対話相手とは不一致なのね・・・!?)
ソクラテスは述べる。死とは神的な魂と快楽を追求してきた肉体との分離であり、肉体は消滅するが、魂は純粋なものとして死者の国ハデスへと赴き、そして、再び別の肉体へ転生する、肉体と魂が一体の時は五感を通じてしか把握できなかったことも、魂だけになったならば純粋な思惟が可能となり、本当の真理と知恵を獲得することができる、真理を知りたいのなら魂だけになるこれこそが哲学者が本当に求める道であるだろう、と。
納得しないケベスは肉体と魂の分離はそうであったとしても、魂も一緒に消えてしまう可能性はないのかと反問する。ここでソクラテスは人間は学問をして新たに知識を得るのではなく、魂だけの時期に既にイデア(物事の真の姿)を見ているのであり、人間の時期の学習は単にそれを想起しているだけであり、そうであるがため魂は消滅していないと論証するのである。
ここで語られているのは想起説により導かれた有名なイデア論である。「徳」とは何かなどの問いに対し、真理へ辿りつけないのはイデアを忘れているからであり、肉体を通じて見ているものはイデアと似ているものに過ぎないという論であるが、解説によれば、『プラトン』の中で初めて明確に記されたのがこの『パイドン』とのことである。
そして、さらにシミアスとケベスは余命いくばくもないソクラテスを追及する。(笑)魂と肉体は調和して存在しているとしたら、やはり、肉体と分離された後、魂も消滅するのではないか?あるいは何度か輪廻転生している間に魂も衰弱して滅んでしまうことがあるのではないか?と。
ここでソクラテスはお家芸の詭弁気味な議論(笑)にて相手を黙らせてしまうのである。いわく、想起説が正しいので魂が肉体を支配しているとみなすべきで、決して調和ではない、イデア論が正しいので魂は決して死なないし滅びもしない、と。そして、肉体が滅んだ後の魂がどのような場所に行くかの神話を語って聞かせるのである・・・。
現代人からみると、ソクラテスの説明は証明しようとする結論を証明の前提にしていることが多くあり、議論としては詭弁としか思えないのだが(笑)、『プラトン』ではよくありがちなので、昔のギリシア人ってこういうので納得していたのかと思うとこれはこれで興味深い!(笑)また、この証明の過程でソクラテスが「自然学」(現在でいうところの「理系」か)に失望し、真実=イデアの探求→「哲学」を探求していることが述べられており、例えば、なぜ会話ができるのかという問いに対し、音声→空気の伝播→聴覚という説明が気に食わなかったようで、真の原因は別のところにあるとしていて、現代ならば新興宗教家と話しているような気分になったかもしれない。(笑)
また、自分には、イデアの近似の説明のところはいまだに「???」なのであるが、そういえば小学生の時に、1+1はなぜ2であるかの説明を聞いた時にこのような話をされたような気もしてきた。あれば数学の話ではなく哲学の話だったのね。(笑)
ソクラテスの死に際して述べられる「魂の不死」という議論がため(ということは死に行く者に対して魂は滅びるのでは?と議論を吹っ掛けていたことに・・・)、イデア論の登場も劇的であり、演出効果も抜群の一書であった。
ラストは、ソクラテスの最期の場面も生々しく描写される。続きを読む投稿日:2016.05.08
プラトンと言えばイデア論、と倫理で学んできた。
なのでいつプラトンの論述が出てくるのか気になっていたが、終始ソクラテスが他者と対話していくストーリーであり、またソクラテスがイデア論の話を出していたこと…から、イデア論を提唱したのはソクラテスだったのか、と思った。
しかしあとがきを読んで分かったのは、そもそもプラトンは基本的にソクラテスの思想を受け継ぐこと、そしてやがてそれを理論化するのを目的としていたことだった。
あとがきにの、『『パイドン』はプラトンとなった最初のソクラテスの声なのである』の通り、プラトンはソクラテスの口を借りて、追憶と(おそらくの)創作の混じった書物を残したのであり、現代まで残され受け継がれてきた各種の記録、そしてその中の論理的な整合性から、どこまでがソクラテスの思想でどこからがプラトンの思想であるかを見分けなければいけない。
ただ、一読者としては、正直なところ2人のどちらが何を言ったかと区別するのはそこまで重要ではない。むしろ、何を語り、そこから何を学べるかだと思う。
本書内容をざっくりといえば、ソクラテスが死ぬことを悲しむ弟子たちに対し、死ぬことは悪いことでも悲しむことでもなく、むしろ哲学者は早く死ぬことを目的とする方が正しい、ということを納得してもらうために、ソクラテスが対話を進めていく、というストーリーだ。
人が死んだら魂がどうなるのかを論理的に導き出す工程は、現代に生きる私としても当然自分事として気になる。
ただ、率直な感想としては、ソクラテスの弟子たちのように納得はいかなかった。
あまりにも二元論で物を見すぎている点と、ある二元論を別の二元論に無条件に演繹してしまっている点、それに信仰と科学が入り混じってしまっていて論拠が弱い点が気になってしまう。
一体最終章の神話の章をソクラテスやプラトンはどこまで現実として受け取っていたのだろうか。
少なくとも、生きている間にこの世で見聞きする情報はイデアの影であり、思索の積み重ねで得られる結論こそが純粋であるという視点では、現実世界における事実、科学とを軽視し、むしろ想像や伝承のような神話、信仰、下手すれば妄想の方を重要視してしまう。
この切り分けを経ないことには、より納得のいく結論には達せないように思う。
現代に生きる我々は既にソクラテス・プラトン以降の長い年月における大勢の哲学者、科学者、数学者、宗教家のような人々の思想を既に前提として受け取っているため、上記の矛盾や違和感が残るのだろう。
西洋哲学は、過去の哲学者の思想を新しい事実と類推で以て批判・否定し、新しい思想を提唱することの積み重ねであったという。
このプラトンの著作で受ける違和感が、今後私が続けて学んでいく後世の人物らによってどのように覆され、整えられ、現代の常識に繋がっていくか、その経緯を辿ることを楽しみに思う。
最後に、創作、ストーリーとして読むのであれば、最後にソクラテスが毒配を飲んで死後の旅へとでる表現は充分に感動的であった。
読んで良かったと思う。続きを読む投稿日:2023.11.17
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。