甲子園という病(新潮新書)
氏原英明(著)
/新潮新書
作品情報
甲子園はいつもドラマに事欠かないが、背後の「不都合な真実」に光が当たることは少ない。本来高校野球は「部活」であり「教育の一環」である。勝利至上主義の指導者が、絶対服従を要求して「考えない選手」を量産したり、肩や肘を壊してもエースに投げさせたりするシステムは根本的に間違っている。監督・選手に徹底取材。甲子園の魅力と魔力を知り尽くしたジャーナリストによる「甲子園改革」の提言。
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商品情報
- シリーズ
- 甲子園という病(新潮新書)
- 著者
- 氏原英明
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2018.08.09
- Reader Store発売日
- 2018.08.24
- ファイルサイズ
- 1.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (12件のレビュー)
-
「甲子園至上主義」の高校野球に対して,もっと高校生らしい野球,部活動,ひいては若者の育成を行うよう,警鐘を鳴らすルポ。けっして甲子園で身体を壊した悲劇のヒーローに焦点を当てるだけではなく,現代にふさ…わしい監督の指導方法とは何か,文武両立に対する高校生の取り組み方はどんなものか,著者は,複数の事例を挙げながら,提唱する。
第1章では,2013年に木更津総合高校のエースだった千葉投手を紹介。高校生のがむしゃらさを止められるだけの大人の意見や環境づくりの必要性を訴えかける。千葉投手の「異常な」投球は,ネット動画にもアップロードされているので,それを見ながら本章を読むと,問題の大きさを把握しやすい。
第2章は,いわゆる指導者のエゴを問うもの。ここにケガに泣いた選手として,岸潤一郎選手が紹介されているが,彼は2019年のドラフト会議で埼玉西武に8巡目で指名された。右肘の靱帯を損傷しながらも,プロ入りが叶った同選手には,著者も今後さらなる取材をしたかろう。
第3章では,松坂大輔と黒田博樹から考える”早熟化”がテーマとなっている。選手生命の末路として,どちらが良かったのか,横浜高校の恩師の言葉も交えて陳述している。
第4章では,メディアが潰した「スーパー1年生」として,酒田南高校のスラッガーだった美濃一平選手のエピソードを語る。地方都市においては,おらが町にヒーローが突如誕生すると,それを周囲が持ち上げてしまう傾向にあるが,やはり10代の若者に背負わせる期待はあまりにも大きい。こうした高校球児の学校生活に対して,大人の責任を投げかける。
第5章では,野球の指導方法や指導者の在り方について論説。プロ・アマを問わず,「しっかりと指導者が勉強をする,研修を受けるような機関を作って,段階を踏んで指導者になるべき」(94頁)と持論を展開させる。
第6章では,「プレイヤーズ・ファースト」の概念が,とりわけ高野連に欠如している点を追求する。高校野球の制度自体も近年タイブレークを導入するなど,変わりつつはあるが,それでも,その変革の遅さを痛烈に批判する。
第7章は,「楽しく」野球をやる原点を,福知山成美高校の事例を通じて紹介。とくに「食事トレーニング」に対しては拷問であるとして,厳しく批判する。
第8章は,沖縄県立美里工業高校の指導者を事例に,高校生に対して求められる野球以上教育的観点について言及。高校のレベルに応じて,生徒たちが野球だけでないものを高校全体で身に付ける重要性を訴える。
第9章では,安田尚憲選手(履正社→千葉ロッテ),根尾昂選手(大阪桐蔭→中日)へのインタビューをもとに,野球を身に付ける下地になったものを紹介。とくに安田選手は歴史書の多読から勉強への理解力を修得し,根尾選手はスキーで鍛えた体幹が野球にも活かされていることを謳った。
最終の第10章では,近年の高校野球が形式的なものにとらわれ過ぎて,高校生の個性やエネルギーの発動にブレーキをかけている物足りなさを批判し,本来の高校野球が「教育」の一過程に過ぎない点,そして大人の都合で彼らの可能性を狭めている点を強調している。
読書前は,現行の「甲子園」,すなわち春夏の高校野球制度自体への批判かと思っていたが,本書を読み込んでいくうちに,話題は日本の中等教育の現状と改善点への進化していく。これは,野球なり,部活動なりで収まる範疇ではなく,肝心の勉強面自体が大学受験至上主義になっていることとも重複してくるだろう。勉強も,部活も,プライベートも,楽しいと思えるような高校生を増加させる努力を,「大人」は今後さまざまな場面で考えていかなければならないだろう。続きを読む投稿日:2019.10.24
高校野球が好きで毎回各大会を楽しみにしている1人です。
東京都では、清宮君が出てきた1年生から3年生までは、東京都高野連の対応、メディアの対応は異常なほどでした。両者からは何がなんでも早実を甲子園へと…いう雰囲気が感じられました。本書で指摘しているとおり当時はメディアの力は凄いなと感じていました。
本書を読み、また違う角度から高校野球を楽しみたいと思いました。続きを読む投稿日:2023.01.01
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