陰謀の日本中世史
呉座勇一(著者)
/角川新書
作品情報
ベストセラー『応仁の乱』の著者、構想三年の書き下ろし!本能寺の変に黒幕あり? 関ヶ原は家康の陰謀?義経は陰謀の犠牲者?俗説、一蹴!『応仁の乱』の著者が史上有名な“陰謀”をたどりつつ、“陰謀論”を徹底論破する。史実とフィクションは明瞭に違う!◆本能寺の変に黒幕あり?→いない。光秀をバカにしすぎ◆関ヶ原は家康の陰謀? →違う。家康も追い詰められていた◆義経は陰謀の犠牲者? →誤り。義経の権力は砂上の楼閣だった他、■足利尊氏=陰謀家説は疑わしい■後醍醐天皇は黒幕ではなく被害者だった!?■富子はスケープゴートにされた■騙されやすかった信長■「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説■「小山評定」は架空の会議「事実」はドラマや小説より面白い。陰謀論の誤りを最新学説で徹底論破!!トンデモ説やフェイクニュースが溢れる世の中で騙されないために。陰謀論の法則まで明らかにする、必読の歴史入門書!
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商品情報
- シリーズ
- 陰謀の日本中世史
- 著者
- 呉座勇一
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川新書
- 書籍発売日
- 2018.03.09
- Reader Store発売日
- 2018.03.09
- ファイルサイズ
- 3.3MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (50件のレビュー)
-
陰謀論で溢れかえる巷のトンデモ歴史観を、歴史学の視点からバッサバッサと痛快に斬って捨てる歴史マニア向けの心得本です。
以前より私も歴史のトンデモ話には眉をひそめていた一人ですが、何で歴史学からの批判が…無いのかなあと思っていたら、やはりアホらしくてまともに取り合ってられないということでしたね。
ですがたとえアホらしくても、学界と一般大衆をつなぐ共有観念としてこのような取り組みは必要だと思っていたのですが、氏のようにある程度名が通った学者が徹底的に斬って捨ててくれたことで、とても良かったと思いました。
日本中世の話がメインテーマなのでいまひとつ一般の人にはわからないトンデモ歴史もあったと思いますが、この時代はNHK大河ドラマでよく取り上げられる戦国時代を除き、あまり知られていない部分なだけに割と言いたい放題の分野であったとも言えます。
なので、トンデモ歴史自体が少なくて言った者勝ちのようなところがあるのですが、あと学界自身でも学説としてそういう傾向がよく見受けられるようで、『第六章 本能寺の変に黒幕はいたか』より前の時代ではむしろ研究史整理的な論述も結構あって、これはこれで割と楽しまさせてもらいました。
氏が言う陰謀論には法則があって、いちいちもっともなことだと頷けることばかりなので、歴史オタクや小説とかからのニワカファンの方はよくよく注意した方が良いでしょう。
・最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考える。
・結果から逆行して原因を引き出す。
・事件によって最大の利益を得た者が真犯人と考える。
・挙証責任を批判者側に転嫁する。
・因果関係の単純明快すぎる説明。
・論理の飛躍 などなど。
私も山岡荘八原作の小説とかドラマとかを観ていて、たいがい全てを予測した動きをとっている人がいるので、苦笑してしまったことが結構あります。まあ小説だからいいですけどね。
井沢元彦なんかはもっとひどくて(結構、氏とバトルしているようですが)、「学説」ぶって古い古い学説をこれでもかといたぶり、最新学説をさも自分が考えた説のように振る舞い、怨霊と最大受益者だけで歴史がまわっていて、細部の証明は批判者に求めるということで、歴史学者はアホらし過ぎて誰も相手にしていなかったのですが、こんな非生産的な相手にも世の中全体の情報リテラシーのレベルアップに向けてよく付き合っているなあと感心してしまいます。
あと、氏がよくやり玉に挙げていたのは、立花京子とか明智憲三郎とかですが、自分も立花京子の『信長と十字架』を読みましたが、確かにあまりにもアホらし過ぎて沈黙が支配してしまうのですが、これを誰も批判できない会心の学説だと思ってしまうところが、トンデモ歴史を唱える人たち共通の快楽なんですね。
ちなみに『信長と十字架』では信長の盛衰の背後でシナリオを描いていたのはバテレンだったという話ですが、当時私はそれならバルカン星人黒幕説を唱えようかなと思っていたのですが(笑)、氏もそれなら宇宙人黒幕説でもよいのでは?と書いてあったので、やはりこのあたりの感覚は共通だと思い少し嬉しくなりました。(笑)
今後は氏の専門外になるとは思いますが、最後に触れていた近現代史における歴史修正主義者どもの与太話もバッサバッサと斬ってみて欲しいなあ。続きを読む投稿日:2019.08.24
日本史の中世時代といえば戦国時代の信長や秀吉などにスポットが当たりがちでその他はよく知らず、それ故にあまり興味も持てない私でしたが、一昨年の大河ドラマの“鎌倉殿や個人的な調べ物から「観応の擾乱」などに…行き当たり、この時代の目まぐるしい展開に底知れぬ物を感じたのでした。
ですから、王族に貴族と武士が入り乱れ覇者を争う時代の流れにおいて、「応仁の乱」を上梓した作者には陰謀というテーマは、無視できないテーマだったようです。
作者が言うように事件の裏に陰謀論が必ずと言っていいほど渦巻いています。(最近では大谷くんの元通訳の銀行詐欺問題でも!)
かの有名な本能寺の変などでも陰謀論があり、それらに飛びつく輩も多いという状況の中、歴史学者はまともに取り上げず検証も当然なし。それ故にトンデモ説が大手を振ってまかり通っている現状に“釘を差したい”という歴史学者としての作者の矜持が見受けられます。
歴史小説や以前の歴史書から悪いイメージのある足利尊氏や日野富子などは歴史資料を読み解くと実際はどんな人物だったのか。様々な争乱はどんな背景、経緯があったのか、作者の丁寧な検証から答えが導かれます。
「結果から逆行して原因を引き出す」
「最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考えるのは陰謀論の特徴」…
各章で有名な陰謀場面を挙げ、太字で強調し陰謀論のテクニックを明かしていきます。
これを読むと、確かに私たちにはわかり易く面白い陰謀論を鵜呑みにしてしまう前に、待てよ!と胸に手を当てる賢さが求められます。続きを読む投稿日:2024.04.28
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