おクジラさま ふたつの正義の物語
佐々木芽生(著)
/集英社学芸単行本
作品情報
大ヒットドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の佐々木芽生監督が、同名映画の取材をもとに書き下ろしたノンフィクション。和歌山県太地町。映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、「くじらの町」として400年の歴史を持つこの漁師町は、シーシェパードを中心とした世界中の活動家たちから集中非難の的に。歴史・宗教・イデオロギー、自分と相容れない他者との共存は果たして可能なのか。小さな町に押し寄せた、クジラを巡る大きな衝突。
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商品情報
- シリーズ
- おクジラさま ふたつの正義の物語
- 著者
- 佐々木芽生
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社学芸単行本
- 書籍発売日
- 2017.08.01
- Reader Store発売日
- 2017.10.27
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (17件のレビュー)
-
クジラ問題については一度、双方の言い分をちゃんと聞いてみたいと思っていた。日本側の言い分は耳に入ってくるけれど、欧米の反対派の主張はちゃんと聞こえてこない。
「くじらは頭がいいから獲ってはいけない」だ…としたら、牛や豚はバカだから喰ってもいい、という理屈なんだろうか。
「数が少ないから獲ってはいけない」のなら、増えたならいいんだろうか。
「残酷な殺し方をするからダメ」なら、残酷な殺し方?じゃなければOKなのだろうか。
例えばくじらが養殖ができたら、牛や豚や鶏みたいに産業動物として扱ってもお咎めなし、なんだろうか? きっとそうじゃないよね。
一方、日本側の「伝統だから」という言い分にもモヤモヤする。アメリカの奴隷制度とか、日本の嫁いびりとか、体育系サークルのイッキ飲みが「伝統だから」と正当化されてはたまったもんじゃない。
人のやっていることに口を出すな、と言われても、親に虐待されている子どもを助けるには人のやっていることに口を出すしかない。
水産国である日本が、漁について外国の言うことをへいへい聞いていたら立ち行かなくなる、というのは単なる原則論だ。クジラやイルカを食わないと飢える、というわけでもあるまいに。
そういう意味で本書に期待していた。著者はアメリカ在住の日本人でこういうテーマを扱うにはもってこい。
でも途中であれれ?となった。日本寄りなのだ。「ザ・コーヴ」の公開でえらいことになった太地町に同情しており、映画の撮影隊やシー・シェパードのやり口に憤慨するのはわかるけれど、それは「クジラ獲り是か非か」という本題とは直接の関係はない。映画の一件でマスコミ嫌いになった町の取材をするために著者はお百度を踏むけれど、その過程で「自分は町の漁師の期待している映画を撮れるだろうか」と悩む。大丈夫なんだろうか?
だが読み進めるうちになんとなく腑に落ちてきた。クジラ問題は要は感情問題で、当事者以外の視座というのものはないのだ。シー・シェパードに反発しつつも、中国で犬を食うと聞くと穏やかならぬ気持ちになる人は多いのではないだろうか? ヒンズー教圏の人がアメリカに神聖な牛食うな!と抗議に行ったら、グリーンピースはどう反応するんだろう?
クジラ問題を通して、「ふたつの正義」という矛盾が見えている。ぼくらの考えている正義は、多くの場合は立場と状況で変わる相対的な正義だ。本来なら「正義」という言葉を使うべきではないのだろう。(その一方で、絶対的な正義というものもある、とぼくは思っている。例えばお腹を減らした子どもにアンパンをあげるアンパンマン)。
問題は、それを理解したところで「クジラ問題」は解決しないということだ。
ぼく自身は、ほかにも食うものはいくらもあるんだから、何もクジラ食わなくても、と思うし、水族館で芸をするイルカやアシカを見ると後ろめたい。動物園のライオンと一緒に、故郷に帰してあげたいと思う。頼まれたら署名や寄付くらいはするかもしれない。犬やネコは食わないで欲しいし、自分ちの犬が食われたら許さん。
その一方で、牛や豚や鶏や魚は美味い。ベジタリアンになれるとは思えない。釣りはやめられない。矛盾だらけだ。
感情問題を感情抜きで議論するのは無理だし、無意味だ。でも、となると解決策がないんだよな。続きを読む投稿日:2018.01.27
【動機】
・捕鯨にまつわる対立の歴史・概要を知りたくて
【感想・思ったこと】
・めちゃくちゃ面白い!!!!!
・クジラの話にとどまらない。
- 捕鯨にまつわる問題と対立の概要と本質が掴める
- …鯨を軸に見る、歴史・宗教・価値観・メディア論
- なぜ人は争うのか?考えさせられる
---
・「強き者」は「弱き者」の、声に耳を傾ける責任がある。
・「弱き者」は「強き者」に、声をあげる責任がある。
・声を上げなければ対話は不可能。特に相手が強者の場合なおさら。
・自分の意見を相手に伝える重要性と相手の意見に耳を傾ける重要性。
・情報は発信しなければ伝わらない。
・情報発信・メディアの威力。感情を煽動する。
・「クジラ・イルカは世界の海を泳ぐため日本だけのものではない」というロジックは確かにと思った。
・対立するから、対立する。
・読中に「キリスト教思想を基盤に持ち、現在国際社会で力を持つ欧米人は、自己中心的で独善的である」というステレオタイプを、深いところで実は自分も持っていると気が付かされた。本来「⚪︎⚪︎人は△△である」という一般化はできない。一人一人多様。読中、ジェイさんが登場した時にハッとした。続きを読む投稿日:2023.08.18
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