ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証
危険地報道を考えるジャーナリストの会(著)
,石丸次郎(著)
,川上泰徳(著)
,横田徹(著)
,玉本英子(著)
,及川仁(著)
,内藤正彦(著)
,高世仁(著)
,綿井健陽(著)
,高橋邦典(著)
,土井敏邦(著)
/集英社新書
作品情報
「イスラム国」による後藤健二氏、湯川遥菜氏の人質・殺害事件以降、「そんな危険な所へ行く必要があるのか」という世論に乗じて、政権は露骨な報道統制に踏み出し、メディアは萎縮してしまった。危機感に駆られたジャーナリストたちが、フリーランス、新聞社、通信社、テレビ局など立場や媒体を超えて本書に集結。海外取材の最前線に立ってきた体験を踏まえ、これまでの「事故」をシビアに自己検証し危険回避の具体的方策を提示するとともに、「それでも、誰かが“そこ”へ行かなければならない」と訴える。【目次】第一章 後藤健二氏の人質・殺害事件がもたらした影響 石丸次郎/第二章 ジャーナリストは「戦場」でどう行動したのか(紛争地を抱える中東の事実を見る「目」の役割 川上泰徳/“イスラム国”取材、その一部始終 横田 徹/戦場の人々を見つめるまなざし 玉本英子/通信社の記者は、最後まで残って取材を続ける 及川 仁/テレビの「危険地取材」はどう変わったか 内藤正彦/危険地取材をテレビに売り込む 高世 仁)/第三章 戦争報道を続けるために――過去の事例から学ぶべきこと 綿井健陽/第四章 米国メディアの危険地報道――日本との相違 高橋邦典/第五章 危険地報道とジャーナリスト 土井敏邦
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この作品のレビュー
平均 3.4 (5件のレビュー)
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戦場やテロ、災害地など危険な場所に自ら深くまで入り込み、最前線の実態を見続けるジャーナリスト達。日本でも稀にニュースで彼らが拘束されたり、殺害されると大きなニュースになる。一時期イスラム過激派に拘束さ…れて殺害されたジャーナリストの報道では、多額の身代金が要求され、世論は自己責任で行う行為に、何故国民の血税で彼らを救わなければならないのか、といった風潮が沸き起こった。私も心のうちでは何処かそうした想いがあった様に記憶している。本書を読んで果たして同じ気持ちのままいる事ができるだろうか。
世界各地で未だ止まない紛争や自然災害。誰もがその実態がどうなっているのか、今現場で人々がどの様な状況に陥っているか知りたがっている。大半は欧米メディアの伝える報道や、現地のテレビ、ニュースメディアの流す映像を、時には邦人カメラマンの撮った映像・写真などから想像している。それらは画像という意味では真実に限りなく近いであろうが、一緒に掲載される文章はそのまま真実として受け入れてしまって良いものだろうか。実際にイスラム世界が流す報道と欧米メディア、ロシアとウクライナでは同じ映像でも違った見方、表現で流しているのを、インターネットで繋がれた世界で同時に見ることができている。
流す側、報道する側の立場によって、映像や写真は如何様にでも変わる。真実は自分の目で見て話を聞く以外に無いのが現実だ。危険地域に飛び込むジャーナリスト達は何を目的に死の危険を伴う現場を訪れるのか。歴史的な現場を収めれば確かに巨額の金にはなる。だがそれだけで死地に飛び込むことができるのだろうか。
本書はそうした危険を犯しながらも、真実を伝えようとするジャーナリスト達の何故に迫る一冊だ。だが確かに本書すらも真実であるかはわからない。本の売れ行きにも利益がつきまとうからである。だが読み終わった瞬間に、彼らがそれぞれ様々な使命感やリアルな感情によって動かされていることを知る。表面に見えている映像だけでなく、その背景にある「構造」を知るために彼らは危険を顧みず現場にいる。そこに至るまでには国家権力との戦い、言葉の壁、現地の真の情報、ゲリラが構える武器、そして必要となる資金、様々な困難を乗り越えてようやく目にすることが出来ても、そこで命を落とす者も多い。
それでも尚追い続ける姿勢には、感動や衝撃以上の何か特別な感情を抱く。自分には無い何かが彼らを支配し突き動かしているという事実。
私にそこまでして相対する物事が、取り組む仕事があるだろうか。自分に対する疑問が湧き起こる中、いつしか彼らに対する尊敬の念すら起こっている。理由はどうあれ、彼らの生き方、考え方に触れて刺激を受ける事は無駄では無い。続きを読む投稿日:2023.09.01
非常に難しい問題。戦場へ向かうジャーナリストの主張も分かるし、それを引き止める側も理解できる。リスクを冒した報道がなければ、「世界を見る目」は失われていくだろうし、世界情勢から目を背けてはならない点は…大いに賛同。政府が必要以上に干渉や行動規制をかけることにはジャーナリズムの観点からも批判的であるべき。ただ現地での安全が十分に確保されているのかどうかも重要な点で、時に周りが止めることも必要になるとは思った。いずれにせよ、迷惑とか自己責任とかそんな簡単な言葉処理する問題ではないと認識。続きを読む
投稿日:2022.03.04
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