秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの真実
竹内明(著)
/講談社文庫
作品情報
両親の借金、息子の白血病――数々の困難に打ちひしがれたエリート自衛官が、ロシア情報機関(GRU)に取り込まれた。金をばら撒き、自尊心をくすぐり、協力者の獲得工作を繰り広げるGRUと、警視庁公安部の攻防が始まる! 公安部内に実在する、「ウラ」と呼ばれる男たちの闘いを描く戦慄のノンフィクション!
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商品情報
- 著者
- 竹内明
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2011.08.12
- Reader Store発売日
- 2016.04.08
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 416ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (12件のレビュー)
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スパイ天国日本
「スパイ天国」日本、「日本のスパイハンターは、国際インテリジェンスという概念に乏しい国家を基盤として闘わねばならないという大きなハンデキャップを背負っている。与えられた権限も予算もあまりにも小さなもの…だ。しかし磨きに磨かれた技術は世界のどんなカウンターエスピオナージ機関をも凌駕し、諜報大国ロシアの機関員を恐れさせる存在となっている。
ロシアでは連邦法で「諜報活動において非公然の方法、手段を取ることができる」と定められておりエージェントは守られている。スパイの現場を押さえても在日ロシア大使館はこんなコメントを発表するのだ。「武官の行為に問題はないと考えている。本人は任期満了により帰国した」と。スパイハンター達は事件を「成功」させてもいつも突然の無力感に襲われる。捜査の打ち上げと称して美酒に酔うことはない。自慢話をすることもない。捜査が終了しても、静かに日常の活動に戻るだけなのだ。
本書では海上自衛隊員がリクルートされたボガチョンコフ事件を中心にすえながらスパイとハンターそして狙われるエージェント候補者の姿を追っていく。冒頭に紹介された事件では内閣情報調査室長である大森義夫が「内調職員は積極的に外部の人間と食事などをともにして、情報を取るべし」と指示したため1994年に中途採用で入った水谷がカウンターエスピオナージの訓練も受けることなく無謀な冒険に突入していった。キャリアを無視した組織への水谷の不満はGRU工作員にとって教科書通りのリクルート対象者となるスパイ天国を象徴するエピソードだ。
ボガチョンコフ(ボガ)と海自の森島との出会いは偶然だったのか仕組まれたものかは明らかではない。しかし二人で食事をしたところから森島は徐々に取り込まれていく。1999年9月は北方領土問題が解決に向けた兆しが見え始めていたころだ。情報畑の森島であったがボガの人柄にほだされていた。いっぽうのボガは冷徹に森島をリクルートする価値があるかを見極めていた。防衛大の修士論文のためにロシアの論文を欲しがる森島に対しお互いに資料交換を持ちかけるボガ、最初は公開資料を渡し、食事をおごってもらうだけの関係だったが、協力者としての運営は森島が意識しない間に始まっていた。この後毎月のように二人は会合を重ねた。森島の息子の死という不幸もボガにとっては森島を籠絡するための材料でしかない。森島を気遣うふりをしながら接触の頻度を上げ、論文締切の迫る森島の足元を見るように見返りの資料の要求レベルを上げ始めた。
ボガの犯したミスは些細なものだった。森島との最初の食事の日、麻布警察署のミニパトが路駐している外交官ナンバーに気づき報告していたのだ。スパイハンターはボガが日本人といるところを発見し2週間後には森島の身元が割れていた。翌2000年3月に森島の息子が亡くなった日にもスパイハンターは病院に潜入している。
6月森島はついに「秘」指定文書をボガに渡す。この頃には森島は完全にボガの支配下に置かれていた。一方でこの日の接触に使われたレストランでは客もウエイターもスパイハンターが入り込み二人の金銭のやり取りを確認していた。現場を押さえるチャンスは一度きり。森島が秘文書を渡す現場を抑えられればスパイハンターの勝ちだ。
この年スパイハンター達にとっては一つ屈辱的な事件があった。SVRロシア対外諜報庁の大物スパイスミルノフに対する強制追尾が鈴木宗男の横槍で中止させられたのだ。9月には平和条約締結と北方領土返還に向けた森ープーチン会談が予定されていた。スミルノフは過去にジャーナリストに偽装して諜報活動をしていたことがわかっていたが「PNG(好ましからざる人物)であっても日露友好のために受け入れる。これは官邸の意向でもある」との添付資料がつけてあったと事務官が述べている。さらにスミルノフは日本の情報機関と連絡を取りたいと公然たる「情報外交」を申し出てきた。しかし、残念ながら日本にはカウンターパートとなる情報機関がない。ギブアンドテイクの情報外交が成り立たない状況で過去に身分を偽った情報機関員を受け入れてしまえば日本は正真正銘の「スパイ天国」というレッテルを国際社会から貼られることになる。
9月4日北方領土の解決は事実上見送られ、このことが影響したのか次の接触がXデーと決まった。9月7日だ。ボガと二人が合流し向かった店内は14人のスパイハンターで埋め尽くされた。勝負は1度ついに茶封筒が渡された瞬間を押さえた。森島が逮捕され、残されたボガは外交官の身分証を差し出した。逮捕はされないがスパイとしては敗北以外の何者でもない。実はこの時渡されたものはボガの妻へのお土産の折り紙の折り方で、森島が自白しなければスパイハンター達もまた大きな傷を追うところだった。続きを読む投稿日:2018.05.15
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ノンフィクションとは思えないほど面白い。今のように監視カメラやスマホが普及していない時代の話なので、現代だったらどのような捜査をしているのかが気になる。
投稿日:2021.05.07
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