この作品のレビュー
平均 4.2 (144件のレビュー)
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現代日本人必読の名著と言われる、とんでもない労作の超大作
読む前は、論じられている時代が異なるとは言え、宮本常一の「忘れられた日本人」のようなものかなと思っていました。思い起こせば「となりのトトロ」の公開時のキャッチフレーズは、確か「忘れ物を届けに来ました…。」でしたよね。しかし、「忘れて」しまったのならば、思い出す手立てを考えればよいのですが、この本の内容は、まさに失われてしまった面影をたどるという内容となっておりました。
膨大な文献を引用して書かれている本です。その量たるや本当に半端ではありません。どうやって書いていったのでしょうか?もし私が同じような文章を書こうとするならば(書けるわけないですが)、すべての文献に独自のインデックスをつけて電子化し、数台のパソコンを並べて、検索をかけながら書いていくしかないでしょう。兎にも角にも、とんでもない労作であることは間違いありません。
さて内容は、江戸後期から明治までを中心とし、主に日本を訪れた外国人の著作を元に、その時代の面影を探っていこうというもので、全部で14章あります。
最初の数章は、だいたい想像どおりでした。不思議国ニッポン、アルカディアニッポンと訪れた外国人が感じていたのは、別の本でもよく書いてあるところです。勿論、この本には、正反対の記述も紹介してあります。そして、庶民の暮らしは、「貧しいが貧困がなく」「気楽で、欲しいものもなければ、余分なものもなく」「あっけらかんと陽気だった」ということが、章を追う毎に、様々な文献により明らかになっていきます。その時代に生きた人々自身が当たり前だと思っていたことは、なかなか文章では残らないものでしょう。だからこそ、異邦人である外国の方が書いたものが、その時代の情景をあぶり出す手がかりになるわけです。
とくに「裸体と性」「風景とコスモス」「生類とコスモス」(この場合のコスモスは、秋桜ではなく宇宙の意でしょう)等に到っては、私が歴史の教科書や古典落語、はたまた時代劇から想像していたものとは、まったく異なる江戸の世界を見せてくれました。
そして著者は、これは日本固有の文化というよりも、産業革命前の文化であり、西洋では既に滅び去ってしまっていた文化であったと結論づけます。だからこそ日本を訪れた西洋人には奇異に見えたわけです。つまり、日本が西洋列強に肩を並べるためには、必然的に滅び去らざるを得ない文化であったわけです。
となると、キリスト教的西洋文化の元、これまで発展してきた自由主義経済が行き詰まっている現代、我々が当たり前だと思っていることも、いずれは滅び去る文化なのかもしれません。
とまぁ、様々な事を考えながら少しずつ読み進んで、足掛け二ヶ月ほどかかりました。私にとっては、難しい語句や読めない漢字も多く、なかなか骨が折れましたけれど、読み終えてみれば、こんなに付箋だらけとなった一冊は、近年読んだ中では久しぶりです。読めば必ず、何か得るものがあると思います。まさに、現代日本人必読の名著でありました。続きを読む投稿日:2017.04.20
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西洋人の目から見た開国前後の日本
幕末・明治初期に日本を訪れた西洋人の観察記から近代以前の日本のすがたを探る。読み方について議論があるのもうなずけるが、渡辺は日本の話がしたいのではなく近代以前の話がしたいのである。ここに描かれる日本の…姿は「逝きし世」であり今には残っていないのだ。他の著作と十分に一貫していると思う。
いろいろ読みどころの多い本だが、興味深かった点をひとつだけ。西洋文明の衝撃に直面して、幕末思想家の何人かは東洋の精神的道徳と西洋の物質的技術の統合、すなわち和魂洋才を夢見たが、当の西洋人は日本の特長は物質的生活にあり、それに反して西洋の特長は精神のダイナミクスにあると考えていたという。
しかしベストセラーのはずなのにこれが初レビューとは続きを読む投稿日:2016.10.09
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