アウシュヴィッツを志願した男 ポーランド軍大尉、ヴィトルト・ピレツキは三度死ぬ
小林公二(著)
/講談社
作品情報
ポーランド軍人、ヴィトルト・ピレツキは1940年9月、自ら志願してアウシュヴィッツへ潜入し、収容所に反ナチ組織を築いたが、発覚寸前の948日目に脱走する。その後も抵抗を続けドイツ敗戦の45年、ピレツキは英雄として祖国に迎えられるはずだった。しかし、ナチスに変わりポーランドを支配したのはソ連であり、彼は次なる敵に対峙するためワルシャワに潜伏する。47年に逮捕。拷問、裁判ののち、48年死刑執行された。
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商品情報
- 著者
- 小林公二
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2015.05.26
- Reader Store発売日
- 2015.06.26
- ファイルサイズ
- 5.4MB
- ページ数
- 274ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (12件のレビュー)
-
ヴィトルト・ピレツキ。ポーランド軍の大尉である。
日本ではあまり知られていない人物だが、実のところ、本国・ポーランドでも死後、長く、その生涯が正しく知られることはなかった。
国を愛した彼が、1948年…に剥奪された名誉を回復されたのは、その42年後、1990年のことだった。名誉とともに命を奪われた彼自身はそのことを知る術もなかった。
本書は、ポーランドをよく知る法学博士・平和研究者が、ピレツキの数奇な生涯を、その遺児らの証言を交えつつ、日本向けに紹介するものである。
今では祖国の英雄として知られ、学校や通りに彼の名がつくほど顕彰されているピレツキとはどんな人物だったのか。その波乱と困難に満ちた足取りは、ポーランドのたどった苦難の道のりと重なる。
ヴィトルト・ピレツキは1901年、ロシア領で生を受ける。ピレツキ家はポーランド小地主階級の家柄だったが、ヴィトルトの祖父がロシアに対する武装蜂起に連座して不動産を没収され、ロシア内地へと移住していたのである。当時、ポーランドはロシア・プロイセン・オーストリアの三大国により分割され、独立国家としての地位を失っていた。
後、ヴィトルトは幼時のうちに母に連れられ、再びポーランドへと移住する。
愛国的な非合法組織であったボーイスカウトで野営キャンプや軍事訓練を受けた彼は、長じて軍人となる。1939年、独ソの侵攻に伴い、ポーランド国家は消滅し、パリ(後にロンドン)に亡命政府が生まれる。ピレツキは武装地下組織の創設に奔走し、レジスタンス活動に身を投じる。ピレツキらの組織は、亡命政府に与するものであった。
アウシュヴィッツを初めとする収容所は、初期の頃は主に政治犯が送られる場所であり、ユダヤ人はさほど多くはなかった。仲間が送られたアウシュヴィッツの実態を知るべきだという議論が高まり、ピレツキは、任務として、アウシュヴィッツへの潜入を志願する。偽名を用いてわざと逮捕され、中の状況を探るというきわめて危険な任務である。
潜伏すること実に948日。危険をくぐり抜け、内情を探り、収容所内で地下運動に参加する仲間まで得た後、ピレツキは2人の仲間と、アウシュヴィッツからの脱出に成功する。
1943年のことだった。
何とかワルシャワに戻った彼は、国内軍(AK)に合流し、戦闘に参加する。1944年のワルシャワ蜂起で、圧倒的に戦力に差があるドイツ軍と戦い、AKとワルシャワ市民は敗れる。高見の見物をしていた形のソ連軍は、ことが片付くのを待ってワルシャワを占領する。
ワルシャワ蜂起を指導した亡命政府は、ソ連とはカティンの森事件に関する疑惑(ソ連の捕虜となったポーランド将校が行方不明となり、後、死亡が判明した事件)もあり、折り合いが悪かった。
亡命政府は帰国が叶わず、ピレツキは、ワルシャワ蜂起が失敗した後、今度は反社会主義運動に携わることになる。ポーランドに成立したのは、ソ連の息が掛かった臨時政権。亡命政権の立ち位置がぐらつく中、ピレツキ自身も何と戦っているのか大きな不安を感じていたようだ。
そして遂に捉えられ、名ばかりの裁判を受け、処刑が決まる。
47年の生涯だった。
ピレツキが軍人として優秀であったばかりではなく、妻や子供たちを思い、数少ないふれあいの時を愛情深く過ごした姿も描かれる。
直接ピレツキに関係するわけではないが、背景知識として、コルベ神父や杉原千畝についての記述もある。当時のユダヤ人の置かれた状況を理解する一助となるだろう。
1つ、苦言を呈するとすれば、著者が手がけるノンフィクションとしては初めてのものであることによるのだろうが、ピレツキの視点・著者の視点・第三者的な視点・遺児らの視点の整理がやや甘く、わかりづらい箇所がある。それだけ、この人物を紹介したいという意図が強いということなのだろうが、もう少し読み手への配慮があってもよかったように思う。
なお、ピレツキがアウシュヴィッツに潜入して書いた「報告」について、本文中でも何度も触れられ、引用箇所もあるが、邦訳は出ていないようである。ポーランド語や英訳に関しては、ウェブ上で公開されているようだ。
何が痛ましいといって、「アウシュヴィッツで受けた抑圧は、(臨時政権に)逮捕されてからなされた拷問に比べたら子供の遊びだ」と本人が妻に漏らしていたことだ。そして、アウシュヴィッツは彼の命を奪わなかったが、スターリンの息が掛かった政権は彼を処刑する。国家の敵であり、スパイ行為を行ったとして。
変節を続けた祖国を、なおも愛し、尽くし続けた男。
最後に脳裏をよぎったのはどんな思いだったのだろうか。続きを読む投稿日:2015.08.04
かっこいい男がいたもんだ。
久々に、惚れた。
かっこいい人だわ。
今ウクライナがロシアに侵略されてますが、
ポーランドも他人ごとではないのです。
ポーランドよりもマイノリティなウクライナ、
実を言う…とポーランド人はウクライナ人が嫌いで、
ウクライナ人もポーランド人が嫌い、
それより嫌いなのがユダヤ人。
16世紀ポーランドの国王は、税収増を見込んでユダヤ人を優遇、その結果ポーランド周辺にはユダヤ人が多い。
1930年代、ポーランドは、西の全体主義国家ドイツと、東の全体主義国家ソビエト、
どちらも追い払えるほどの国力はない。
独ソ不可侵条約により、ドイツはポーランドの西側、ソビエトはポーランドの東側を占領。
その時東側にいたポーランド軍将校、政府関係者をスモレンスク近郊のカチンの森で処刑した。
当時、ポーランドの諜報能力の高さは有名だった。
リトアニア領事で、ユダヤ人6000人にビザを発給した杉原千畝氏の諜報能力も際立っており、ドイツがどれくらいソビエトと戦えるか、ヨーロッパの戦線が終われば日本にソビエトは総力をあげてくる。アメリカが参戦するかをポーランド軍将校相手に諜報活動をされていた。
ドイツがポーランドを消滅させ、ドイツが敗退後、確実にソビエト赤軍がポーランドを赤化し、ソビエトの属国にする、
ピレツキの分析能力の高さ、軍人としての能力の高さ、人間力の高さには、惚れ惚れするくらい感服する。
ドイツがポーランドのオシフィエンチムにドイツ語でアウシュヴィッツ強制収容所を開設、ハインリヒヒムラーが視察に来て、沼地のオシフィエンチムは強制収容所を開設するにはぴったりの土地だと、ハンスフランクに開設を急がせた。
ソビエト軍捕虜を使い強制収容所は開設されたが、
当時、アウシュヴィッツではなにが行われているか、分からないが噂では虐殺が行われているという噂がポーランド国民軍の耳にも入ってきた。
多くのポーランド人が逮捕され連行されている。
ポーランド国民軍は、ポーランド国民を守るため、アウシュヴィッツに潜入することを決め、ヴィトルトピレツキは、潜入することにした。
ドイツは、ソビエトとの不可侵条約を破り不意打ちでソビエトに侵攻し、思わぬ大量にソビエト軍捕虜を受け入れなくてはならなくなり、その処遇に困り、やむを得ず、「絶滅」させることになった。
その時初めてチクロンBを使うことになった。
それからあの恐ろしいガス殺が始まり、
ガス室から焼却炉に移すのが面倒だから、ガス室と併行に焼却炉を完備するビルケナウ絶滅収容所をアウシュヴィッツの30キロ先に作る。
アウシュヴィッツは、一つと思われるし、また絶滅収容所と思われているが、アウシュヴィッツは、あくまで労働収容所、
Arbeit macht frei
働けば自由になる、
アウシュヴィッツ第一収容所。
Tod macht frei
死ねば自由になる、
アウシュヴィッツ第二収容所ビルケナウ。
ピレツキは、自分の身を偽り潜入し、約2年アウシュヴィッツで過ごしたが、自分の身に危険が迫りアウシュヴィッツを脱走。
ようやく終戦、ポーランドを解放したソビエト赤軍は、最初は解放者として歓迎されたが、1年もしないうちに暴政が分かり、ポーランド人は落胆していく。
ポーランドは、共産化したのだ。
共産国になるポーランドを認めないピレツキは、共産党政権のポーランド、祖国に見せしめとして処刑された。
今どきこの様な完璧な人はいるだろうか?
ソビエト、ロシアには中途半端に妥協して和平交渉してはいけないのだ、
虫の居所により簡単に他国を裏切る。
簡単に戦死者以上に人を殺すのだ。続きを読む投稿日:2022.04.04
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