アウシュヴィッツを志願した男 ポーランド軍大尉、ヴィトルト・ピレツキは三度死ぬ

小林公二 / 講談社
(10件のレビュー)

総合評価:

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  • ジャックラビット

    ジャックラビット

    第二次大戦中、ユダヤ人ら100万人以上が殺された収容所アウシュヴィッツに、自ら捕虜となって潜入した1人の男がいた。ポーランドの軍人ビトルト・ピレツキ。彼の目的は、収容所内を調べて、秘かに外部に情報を送り、ナチスの非道を世界に知らせること。そして、収容所内で抵抗グループを組織し、内部からの収容所解体を狙うものだった。

    彼は、どうやって収容所に潜入したのか。劣悪な環境をどう生き延びたのか。その疑問に答えるように、膨大な資料をもとに日本人研究者がまとめたのが本書だ。ユダヤ人収容者とは異なる目線で内情をつづっている点が興味深い。

    彼は、収容所内で書いた報告書でこう語っている。「私は、石でも木でも無く感情を持つ人間だから、時には生じた事実に対して、思いや感情を率直に記すこともある」。家族との思い出や感情の機微が記された文章からは、彼の人間性が感じられる。

    彼は収容所を脱獄し、詳細な報告書を書いて世界を驚かせた。戦後はソ連の傀儡政権への抵抗運動にも参加。彼の歩みは戦中はナチス、戦後はソ連に翻弄されたポーランドの悲しい歴史を物語っている。
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    投稿日:2021.05.24

  • ゆみ

    ゆみ

    このレビューはネタバレを含みます

    ヴィトルド・ピレツキ。
    この本を読むまで知らなかった。
    アウシュヴィッツ強制収容所に潜入し、内部状況を外へ伝え、内部組織をつくり、脱出。
    その後、社会主義化していく祖国で罪人として処刑された。
    彼の罪が無効なものであると、名誉回復がなされたのは1990年以降のことだった。
    大国の思惑によって左右されてしまうという現実が如実に書かれていた。

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    投稿日:2016.01.27

  • 本読み@スターピーク

    本読み@スターピーク

     右であろうと左であろうと、全体主義を突き進めていくと似たようなもので、「自由を享受する」という観点から見れば、その理想とは程遠い世界となっていくのだろう。ピレツキは結果的にその両方に抗う形となり犠牲となった。
     本人の記述ではないため、客観的な書きぶりとなっていた。

     「自由を享受するという理想」については、これからも考えていきたい。
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    投稿日:2015.11.18

  • H.Sato

    H.Sato

    ピレツキの「報告」はアウシュビッツの内情に関わる従来の常識を大きく覆した。例えば、収容所内では家族からの送金も認められ、その額は月30マルクか、二度に分けて15マルクずつが収容者の手に渡っていたことや、収容所内には売店があり、タバコ、サッカリン、マスタード、ピクルスなどを買うことができたこと、また収容者家族からの小包は、衣料については当初から認められ、食糧小包も1942年のクリスマス行こうは解禁されたことなど日常生活の実際が詳細に報告されている 。続きを読む

    投稿日:2015.11.11

  • mitakatengu

    mitakatengu

    ブログに掲載しました。
    http://boketen.seesaa.net/article/424087759.html
    ファシズムとスターリニズム。20世紀の巨悪とたたかった男の伝記。
    ナチスの絶対悪の象徴ーアウシュヴィッツ収容所。
    1940年6月パリ陥落の日に設置され、1945年1月ソ連軍に解放されるまでの約4年半、ここに移送された130万人のうち110万人が殺された。
    この収容所に自分の意志で潜入し、2年7か月にわたってその非人道的な収容所の実態をレポートし、反ナチグループを組織し、同志とともに脱出したポーランド軍大尉=ヴィトルト・ビレツキ。
    脱出後「ワルシャワ蜂起」(1944年)をたたかい、ナチの捕虜となり、今度はドイツ国内の収容所に送られるも、ナチスの崩壊により釈放。
    ナチスに変わって祖国ポーランドの支配者となったスターリニストと敵対。「社会主義の敵」として逮捕・拷問・銃殺される。
    処刑から40年後の1990年、ソ連・東欧圏の崩壊によってビレツキは「社会主義の敵=祖国の敵」から一転して、ポーランドの英雄となった。
    ポーランド最高裁の名誉回復の決定には「ポーランド国軍騎兵大尉ヴィトルト・ビレツキは、あらゆる軍人が敬すべきわが国英雄の一人である。我々はドイツ人、ロシア人と同罪である。我々自身の手で、我々自身の英雄を抹殺してしまったのだから」という一文が刻まれている。
    すごい人間がいるものだなあ。
    沈黙し、合掌するしかない本です。
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    投稿日:2015.10.26

  • tockeee

    tockeee

    このレビューはネタバレを含みます

    ポーランドの英雄、ピレツキの伝記。自ら志願してアウシュビッツに入り、地下組織をつくり脱走。そこでの詳細な記録は、アウシュビッツの実態を生々しく伝えるものになる。オーケストラが優遇されていた話や、クリスマスには少し気を緩める話など、殺戮の残忍さをさらに際立たせるリアリティ。その後、ワルシャワ蜂起に参戦する。自ら祖国ポーランドを守ろうとして、結果、敵がヒトラーからスターリンになっただけ。見せしめ裁判で拷問、死刑にあい、彼の業績が声優として認められたのは、ごく最近であった。まったく知らなかった事実に触れることができる一冊でした。

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    投稿日:2015.09.07

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