この作品のレビュー
平均 3.5 (4件のレビュー)
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歴史的に見てイランは絶えず外界の勢力の侵入を受けてきた
歴史的に見てイランは絶えず外界の勢力の侵入を受けてきた。アレクサンダー大王やモンゴルそして近代のイギリスなども、イラン人にとって、イランこそが世界の中心であり、アメリカなど「外界の勢力」はイランを堕落…や破滅に導くものであると考えている。イランが弱体化するのは、外部勢力に充分対抗する力を持っていなかったからであるということになる。昨年からの中東の危機の中心はイスラム国であるが、もう少し長いスパンで見ればイランとイスラエルの対立が常に中東の危機の中心でありアフマディネジャド前大統領は「イスラエルは地図から抹殺されるべき」というホメイニのイデオロギーを「ヨーロッパかアメリカに移転」として唱えた。イスラエルから見ればヒズボラやハマスなどのテロ組織にロケット弾などの武器を流すイランは安全保障上の最大の脅威だ。
テヘランでは2006年にホロコースト博物館が出来たがここに展示されるのはイスラエルのパレスチナ人へのホロコーストの風刺画ばかりで中にはナチス・ドイツ党員がユダヤ人の顔を殴り、さらにユダヤ人がパレスチナ人の顔を殴打しているものもある。レザー・シャーの時代にはイスラムよりもアーリア人種であることを強調し、ヒトラーからもお墨付きをもらっている。イランとはアーリア人の国を意味しもともとナチズムに通底するものがあったのだ。息子のパフラヴィーはアメリカよりでエジプトのナセルのアラブ・ナショナリズムに対抗しイラン=イスラエルは友好関係にありイランコントラ事件で明らかになったようにイラクに対抗するためイスラエルはイランに武器を輸出していた。その関係はホメイニ革命で終わりを告げる。それでもイラン民族の栄光を犠牲にして他のイスラム世界と連帯することは、多くのイラン人には考えられぬことだった。
イランの安全保障の基本は近隣諸国の安定と、それら諸国との友好関係の構築にある。イラクのサダム・フセインはスンニ派のバアス党、イラクは1/3がスンニ派で2/3がシーア派で現在のシーア派政権はアメリカとは良好な関係を持っている一方同じシーア派のイランの影響も受けている。タリバンはシーア派との闘争を「聖戦」と考えて以来イランとの関係は険悪。イラクのアルカイダが母体のスンニ派過激派イスラム国はこう言う経緯からするとイランとは敵対関係になる。サウジアラビアは厳格なスンニ派のワッハーブ派でありイラクのシーア派台頭は喜ばず、イスラム国が出来る前のことだがイラクのスンニ派武装集団を支援していた。
現在のロウハニ大統領はかつてウラン濃縮活動を停止し、IAEAの核査察の強化に応じることを提案したがハメネイ最高指導者に拒否されたと言う。アフマディネジャド政権下では革命防衛隊がイランの国家社会をイスラム的に改変する手段として機能し、防衛隊の教育を通じて国民にイスラム的価値が強化されていった。イラン正規軍は政治に介入する姿勢が希薄だが革命防衛隊にはアフマディネジャドも所属したクッズ(エルサレム)軍団というハメネイ直属部隊がありこれがイランのイスラム革命を輸出する。他に12才から18才の宗教心に富む地方出身の少年からなるバスィージュという民兵部隊もある。革命防衛隊やバスィージュによるエルサレムの解放というのがハメネイの理念である。
イランの核開発問題ではアメリカのダブルスタンダードも眼につく。北朝鮮の核保有に対しては無力で実力行使はせず、核兵器を保有するパキスタンとインドに対しては核爆弾を運搬できるF−16を売却した。イランの核技術がパキスタンから入手したことはよく知られている。そしてイランに対してバンカーバスターと言う戦術核兵器の使用を現実的な選択肢の一つとして検討していた。他国の核兵器の開発をやめさせるために核兵器を使用する国が核不拡散をうったえると言うのはやられる側から見れば冗談にしか見えないだろう。イスラエルも核を保有しているようだしいずれも自分が持つのは生存権の確保のためにはやむを得ないとし、相手が持つのは自らの生存権に対する脅威として捕える。いずれにせよ「イスラエルを地図上から抹殺」というアフマディネジャドの発言はアメリカやイスラエルの主張に正当性を与えイランへの経済制裁が発動しアフマディネジャド政権の経済運営に打撃を与えた。
2013年には穏健派のロウハニ大統領が誕生し対イスラム国ではハメネイとオバマが協力できると歩み寄っている。この本が書かれたのは2007年だがイランが少なくとも湾岸や中東地域で突出した大国になり、欧米や日本などと同等になることを目指すほうがはるかに重要だと思う若者は着実に増えているとある。対イスラム国への協力で経済封鎖が解かれたとしても原油価格の暴落はイランの経済運営にダメージを与えるだろう。資源確保を求める中国がさらにイランに接近というところか続きを読む投稿日:2015.01.27
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イランをめぐる国際情勢について、イランの側からの視点を加えてくれた一冊。欧米側からではないという意味で、非常に面白かった。
投稿日:2010.04.14
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