この作品のレビュー
平均 2.6 (5件のレビュー)
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ビジネスVS福祉という問題ではないと思うのだが。題名につられて購入
2013年に「ブラック企業」が流行語となり代表して受賞したのがブラック企業対策プロジェクトの今野氏で、若者の格差・労働問題に取り組んでいるNPO「POSSE」の代表も務めている。
被災地のあらゆる問…題や、被災地を巡る特別な状況は日本社会が抱えて来た諸問題の「延長上」にあるということ」「ブラック企業とほとんど同じ様な構図が、被災地には横たわっている」「今やブラック企業の様に、日本社会全体が、明らかに「無理な構図」を押しつける様な社会になっている様に見える。そして、その構図を美辞麗句で覆い隠し、それについてこない者は攻撃の対象とする。そんなことが繰り返されている。」
ここに挙げられた事例は「福祉を必要としている人々が制度にたどりつけないという構図と制度にたどりついてもその制度と運用そのものが人々を利用から遠ざけてしまう事態」であり、まあ他にも色々あるのだろう。列挙すると以下の様なことが起こっている。
生活保護需給世帯に対して受け取った義援金を取得認定して保護を打ち切るという事例が相次いだ。
何らかの理由で避難所を利用できない被災者は各種の支援・仮設住宅の情報から取り残された。
家屋の損壊判定はずさんであり当初は一部損壊や半壊と認定され、後に大規模半壊や全壊と覆るケースは多い。
仮説への入居が決まっても水道光熱費などの費用が払えず入居を辞退した世帯もあった。
民間の住宅を借り上げたみなし仮設住宅で家主の都合で退去しなければならなくなった場合、厚生労働省は仮設住宅に入居した時点で「救助」が済んだと判断するため家賃補助が継続されなくなる。
被災三県では事実上の医療無償化が実施されていたが2012年10月から国の全額負担から地方自治体が2割負担することになったため宮城県だけが財政難を理由にこの措置をとりやめた。
被災者は義援金などの金を、生活保護者の「収入」とみなす方針を打ち出し実際に保護を打ち切るケースが多発した。厚労省は2011年5月に生活保護上の取り扱いについて義援金等が自立更生のために当てられる額を収入と認定しないと通知し、例えば生活用品や資格の取得、引っ越し費用や教育費などがこれにあたる。ある女性は自立更生計画書に自転車と書いたところそれはだめだと赤ペンで修正されてしまい仙台市から保護を打ち切られてしまった。窓口の担当者はこれはあなたには関係ないですねと技能習得費や転居費用などは説明をしなかった様だが誰に相談すれば良いのかがわからなかった様だ。
復興予算の使い方にも色々問題がある。
全国防災対策費として2012年に36億が官庁舎の耐震改修費用として使われたが被災地で使われたのは石巻市の4.5億だけだ。被災地以外の道路建設費は351億が計上され国土交通省の担当者は「道路がないところに道路が出来れば、防災に役立つことでしょう」と語っている。資源権益確保関連として海外のレアアース鉱山の買収費用やシーシェパードの捕鯨妨害対策費、エコポイントそして第三次補正予算9.2兆の内約2兆円は円高対策費に関連づけられている。広い意味では復興予算に入ると言うのはわからなくもないが、おそらく問題はその一方で優先順位の高い仮設住宅の建設がおそかったり復興公営住宅の準備が今でも進んでいないことだろう。
防潮堤の建設工事が始まり総延長390kmは被災三県の海岸線総延長の23%にあたる。だが中には人が住んでいない無人島や高台移転が決まった地域も含まれていて県と住民の間でその「高さ」が合意出来ず建設は進んでいない。例えば幅60m、高さ10mの壁が海を見えなくすると市街地が圧迫され過疎化が進む可能性は充分にある。数十年に一度の津波対策のために、その前に住む人がいなくなるというのが住民たちの心配だ。
建設業の雇用は増えたが労働環境は悪化し労災が増加している。人の手配に暴力団がからんでいたり、多重の下請けで中抜きが横行した結果末端の受注企業は充分な人件費をかけられないケースもある。また雇用助成金の不正需給も多く2012年度の事業所ベースで23%、金額ベースで4.5%が不正需給だった。
地方財政が効率化するために市町村が統合され、自治体職員の雇用が縮小されたことや開発主義の日本の低福祉構造を糾弾しているのだがこのPOSSEというNPO自体も政府の金を必要としている様に財政が破綻してはいずれにせよ充分な福祉は出来ないことだろう。ビジネスが介在した被災者救援事業にきめ細かな対応は出来ないという点についてもおそらくその通りで、一番助けが必要なものが取り残されているというのがこのタイトルの断絶の一つなのだがそれでもやらないよりはベターだと思う。「絆」という美辞麗句がいろんな問題を覆い隠しているというのもどうだか。続きを読む投稿日:2014.12.19
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労働問題を中心に取り組むNPO法人POSSE。そのメンバーたちの手によって書かれたのが本書です。被災地での活動を通じて見えてきたのは、ブラック企業問題と驚くほど似たものでした。そして、それは被災地だけ…での問題ではなく、日本全体で起きている問題でもあったのです。被災地仙台を通して見えてくる日本の問題点とその突破口を若い知性(著者のほとんどが30歳以下)が、考えていきます。被災地の実情を知りたい人、福祉問題に関心のある人、労働問題を考えたい人に一読をおすすめします。続きを読む
投稿日:2014.09.10
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