社会保障亡国論
作品情報
消費税が増税されると本当に社会保障は充実するのか。現在わが国の社会保障給付費は、GDPの約4分の1にあたる110兆円を超える規模に達しており、年間3~4兆円というペースで急増している。消費税率の引き上げの効果は3~4年で消失する計算となる。年金・医療・介護・子育て支援など、「少子高齢化」日本を暮らす人々の不安は拡がる一方だ。社会保障財源の現状を具体的に改善する議論と給付の抑制・効率化策も提言する。(講談社現代新書)
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 社会保障亡国論
- 著者
- 鈴木亘
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2014.03.20
- Reader Store発売日
- 2014.04.25
- ファイルサイズ
- 3.2MB
- ページ数
- 296ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.9 (12件のレビュー)
-
改革提案の部分は手薄だが、日本の社会保障の現状を手っ取り早く知るには良書。巷でよく言われている「社会保障費は年間1兆円の増加ペース」は氷山の一角であり、真実はもっと深刻である。なぜならばマスコミの言う…「社会保障費」は正確に言えば「社会保障関係費」のことであり、「国が」「税金で」負担している分しか考慮に入れていないからである。実際には地方財源分が1割、保険料で負担されている分が6割を占めており、総額ベースでは実に年間3~4兆円もの負担増が進行している。現行の社会保障制度を維持するのであれば、国民負担率は際限なく上がり続ける(2035年度には56.4%、2050年度には71.6%!)し、しかも現時点ですでに1,500兆円の累積純債務が発生している(恐ろしいことに、これは政府債務とは別建てで会計処理されている)賦課方式(現役世代の保険料を老年世代に給付する方式)を核とする我が国の社会保障制度が完全に破たんしていることは明らかであり、「100年安心プラン」など虚構である。世代間不均衡の問題も深刻で、確かに若い世代は「経済発展の恩恵を受けている」というプラスの面があるものの、1940年生まれの人の社会保障収支が△4,930万円なのに対し、2010年生まれの人の社会保障収支は▲3,650万円でその差は8,580万円もある。
保険料や年金の支給開始年齢引き上げが必要なことはもちろんだが、それだけでは根本的な解決にはならない。なぜなら世代間格差の問題が解消されないからだ。少子高齢化の進展にあわせて、「賦課方式」というシステムそのものを早急に「積み立て方式」(現役時代に自分が払った分を老年期に受け取る)へ作り替えることが急務である。しかし単純に移行すると、賦課方式から積立方式への移行世代は社会保障費用を二重払いしなければならなくなる。紙幅の制約からか、本書の中では移行期の施策について詳述されていないが、筆者の描くシナリオはこうである:まず、国鉄がJRに移行した際のように「清算事業団」を作り、債務を今ある制度から切り離して税金で処理する。そして制度そのものは賦課方式から積立方式へと移行させ、将来を見越して最初は黒字になるように料率を設定し、高齢化がもっと深刻になった時にその黒字を取り崩して対応できるようにする。そして累積債務については、「年金目的の新型相続税」と「年金目的の追加所得税」を創設して財源に充てる。2012年時点での筆者の研究によると、10%の新型相続税を35年間続け、追加所得税率を100年間1.93%に設定すれば債務処理は終わり、例えば1990年生まれの厚生年金加入者の「支払い損」は、2,200万円から550万円まで減少させることができるという(2012/7/19 日経新聞朝刊 22面)
その他には、認可保育所に大量の公費投入しているわりに実質的に高所得者が優遇されてしまう現状の待機児童対策を止めて、保育所の料金を完全自由化したうえで一律バウチャーによる補助を行うことが合理的と説く第7章「消費増税不要の待機児童対策」、現行の生活保護制度は「働けない人」の救済に特化しているため働いて収入を得るとかえって損をする仕組みになっており、「頑張れば働ける人」に対しては別種のサポートシステムが必要とする第8章『「貧困の罠」を防ぐ生活保護改革』も、論点整理と解決策の提示がクリアーに行われており、初心者が読むのにも最適な構成となっている。第9章はありきたりな官僚批判や「情報公開が大事だ」という論調になってしまっており若干惜しまれるが、「強烈な意志と個性を持ったリーダーがいなくても改革が進むような仕組みづくりが必要」と説く筆者の主張に異論はない。公的保険や年金はとかく政争の具にされやすい分野なので、「〇〇が●●%になったら自動的に支出を削減します」といったプログラム法を整備することこそが肝要である。続きを読む投稿日:2014.08.05
本書を読む人は、年金制度の不公平さが、自分の身に一番応えることとして印象に残るかもしれないが、問題はそれにとどまらない。
このままいけば社会保障制度が崩壊する。
社会保障制度の崩壊というのは、社会基…盤の崩壊である。
そのときどうなるかというと、高齢者だけ限ってみても、病気になっても病院にかかれない、施設に入ろうとしても施設がない、いわゆる漂流老人が大発生する。
経済は行き詰まり、破綻することは目に見えているが、残念なことに、誰も手をつけられずに、最後まで突っ走っていかざるをえないだろう。
人口構造が将来どうなるかということは、もう数十年前から分かっていたことだ。人口シミュレーションは、そう難しいものではないし、そんなことをやらなくても、高齢者が多くなり支える層が少なくなれば、社会制度を維持できなくなることは誰でも分かることだ。わかっていたのに、誰もどうにもできないでいる。
であれば、これからも、どうしようもないだろう。
それは原発問題と似ている。
原発がヤバイというのは、二十年前三十年前からいろいろなところで語られ、書かれ、訴えられてきた。
危機は叫ばれていたけれども、当面の利害関係のために、物事は動かない。
結局事故は起こってしまった。
起こってしまったあとでも、事態の最終的な責任は誰にあるのか問われないまま、また再開されようとしている。
社会保障の問題も、このまま進むだろう。
このまま進んで、どこかの段階で、社会保障問題の「フクシマ」が訪れるだろう。
それはおそらく、15年後の2030年あたりではないか。
いま65歳の団塊の世代が80歳になり、介護が必要な人や、死者が急激に増え始めるが、病院や施設がなく、かといって住める家もなく、孤立死や野垂れ死が多発するだろう。
あるいはその前に、日本経済が社会保障費の負担に耐えかねて破綻しているだろう。
いずれにしても、破綻は早いほうが痛手は少なくてすむ。回復も早い。
残念ながら、そこまでいかないと、抜本的な見直しはできない。
そんな事態が本当にくるのかと思う人がいるかもしれないが、間違いなくそうなる。
著者の危機感に、私は完全に同意する。
ただ、破綻を回避するための努力について、著者は厚生労働省のサボタージュを疑っているが、私の意見は異なる。
厚生労働省がシャカリキになって進めている介護医療の一体改革法案や地域包括ケアシステムは、そのためのものであることは明らかだ。
ただ、その程度でいいのか、それのみが正しい方向なのか。著者から見れば、たぶん不十分かつ遅すぎるとしか映らないだろうが、それは、厚生労働省の怠慢というよりも、破綻回避の手を打とうという勢力と、現状維持勢力のせめぎあいの結果と見るべきだと思う。役人の中で改革を志す者がいたとしても、現実の政策としては、妥協の産物としてしか出てきようがないからだ。
著者によると、社会保障問題を経済学者が扱うことに対して、抵抗感が強い介護や福祉の関係者がいるらしい。
だが、この分野の問題はもはやそういった狭い世界の問題ではなく、国家財政を直接左右する話である。
それがギリギリの状況にあるということなのだ。続きを読む投稿日:2020.05.12
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・今なら優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。