ウクライナ戦争
小泉悠(著者)
/ちくま新書
作品情報
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、第二次世界大戦以降最大規模の戦争が始まった。国際世論の非難を浴びながらも、かたくなに「特別軍事作戦」を続けるプーチン、国内にとどまりNATO諸国の支援を受けて徹底抗戦を続けるゼレンシキー。そもそもこの戦争はなぜ始まり、戦場では一体何が起きているのか? 数多くのメディアに出演し、抜群の人気と信頼を誇る軍事研究者が、世界を一変させた歴史的事件の全貌を伝える待望の書き下ろし。
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商品情報
- シリーズ
- ウクライナ戦争
- 著者
- 小泉悠
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2022.12.08
- Reader Store発売日
- 2022.12.08
- ファイルサイズ
- 11.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (61件のレビュー)
-
2021年1月から本書上梓時点の2022年9月まで、ロシア、ウクライナの開戦前夜の軍事的状況、プーチンの論文や思想の変化、実際の戦況も前半と後半に分け、時系列にまとめる。
新聞やニュースなどで日々耳…にしても、そう簡単には状況を理解できないでいたところ、きっちり文章にまとめてあり、また根拠となる情報源が文中に示されるのでなるほどと信憑性を感じる。文体はテレビでの語りとおなじく論理的でわかりやすい。
最後に主体的な議論の必要性を説く。
ウクライナの状況は、日本が戦争に巻き込まれた場合に(あるいは周辺で戦争が発生した場合)そのまま跳ね返ってきかねない問題であり、日本はこの戦争を我が事としてとらえ、大国の侵略が成功したという事例を残さないように努力すべきではないか。とるべき行動の選択肢を真剣に検討しておく必要がある。
この戦争は「どっちもどっち」と片付けられるものではない。ゼレンスキーとて完全無欠のリーダーではないし、バイデン政権もロシアを止めるためにあらゆる手段を尽くしたとは言えない。が、それでもこの戦争の第一義的な責任はロシアにある。その動機は大国間のパワーバランスに対する懸念、プーチンの民族主義的な野望であったのかもしれない。が、一方的な暴力の行使に及んだ側はロシアである。開戦後の多くの虐殺、拷問などの点を明確に踏まえ、ただ戦闘が停止されればそれで「解決」になるという態度は否定されねばならない。
メモ
本書の問い
〇これだけの戦争が何故起きてしまったのか、
・・侵攻の狙いは、ゼレンスキー以下を電撃的に排除して政府を瓦解させる「斬首作戦」
・・プーチンが範としていたのは、ソ連やロシアが行ってきた周辺諸国への介入作戦ではなかったか。
・・2021.7月の論文、2022.224のビデオ演説は、ウクライナは依然ロシア・ソ連の一部なのだという認識。独立してはいるが西側の思想に毒されている。
・・ネオナチ思想~ウクライナ内のロシア系住民を弾圧している
〇それは本質的にどのような戦争であったのか、
・・極めて古典的な様相を呈する「古い戦争」である。無人飛行機などハイテク機械などが使用され効果も上がっているが、戦争全体の趨勢により大きな影響を及ぼしたのは、侵攻に対するウクライナ国民の抗戦意識、兵力の動員能力、火力の多寡といったより古典的な要素だった。
〇戦場では何が起きており、日本を含めた今後の世界にどのような影響を及ぼすのか。
・・性質が古典的であるとすると、そこで決定的な影響を及ぼすのは、歴史上多くの戦争の勝敗を分けてきた、暴力闘争の場になるのではないか。
・・テクノロジーや非軍事的闘争手段による「新しい戦争」に備える重要性は低下しないとしても、「古い戦争」への備えを無視してよいことにはならない。この点は我が国の抑止力をめぐる議論において重要な論点となろう。
・・ウクライナへ各国が直接介入しないのはロシアの核戦力に対する恐怖の存在である。仮に台湾有事が発生した場合、日本の役割はポーランドのそれに類似したもの~核侵略国に対して軍事援助を提供するための兵站ハブや、情報支援を行うアセットの発信基地になる可能性が高い。~これは日本が核兵器を持つ侵略国(中国)の核恫喝を受けることを意味しており、この点の国民的議論が必要だが、それはなされていない。このままでは将来の軍事的脅威に明確な国民的合意なしにずるずると巻きこまれることになるのではないか。
・情報による攪乱は民主国家同士で効果を発する。ロシアは情報統制国家であるので、情報攪乱は効果があまりなかった。
・プーチンの世界観:大衆が自分の考えで政治的意見を持ったり、ましてや街頭での抗議運動に繰り出すことはありえず、そういう事態は必ず首謀者と金で動く組織が背後にある。
2022.12.10第1刷 2022.12.25第3刷 購入続きを読む投稿日:2023.01.27
刊行のタイミングから、全容が分かる!というわけにはいかないが、軍事的な目線が特徴的であり、この戦争のきっかけ、意味するものの一端を感じられる。
投稿日:2024.03.21
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