異常の構造
木村敏(著)
/講談社学術文庫
作品情報
臨床の場に身を置きつづけながら、綺羅星のような著作および翻訳を遺した稀代の精神病理学者木村敏(1931-2021年)。その創造性は世界的に見ても人後に落ちない。
著者の名を世に広く知らしめるとともに、社会精神医学的な雰囲気を濃く帯びていることで、数ある著作のなかでもひときわ異彩を放つ名著に、畏友・渡辺哲夫による渾身の解説を収録。
「異常」が集団のなかでいかに生み出され、また「異常」とされた人々のうちでなにが生じているのか、社会および個人がはらむ「異常の構造」が克明に描かれる。私たちはなぜ「異常」、とりわけ「精神の異常」に対して深い関心と不安を持たざるを得ないのか。「自然は合理的である」という虚構に支配された近代社会が、多数者からの逸脱をいかに異常として感知し排除するのか。同時に患者のうちで「常識の枠組み」はどのように解体され、またそのことがなぜ「正常人」の常識的日常性を脅かさずにはおかないのか――。
「あとがき」に刻印された「正常人」でしかありえない精神科医としての著者の葛藤は、社会における「異常」の意味を、そして人間が生きることの意味を今なお私たちに問いかけ続けている。(原本:講談社現代新書、1973年)
【本書の内容】
1 現代と異常
2 異常の意味
3 常識の意味
4 常識の病理としての精神分裂病
5 ブランケンブルクの症例アンネ
6 妄想における常識の解体
7 常識的日常世界の「世界公式」
8 精神分裂病者の論理構造
9 合理性の根拠
10 異常の根源
あとがき
解 説(渡辺哲夫)
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商品情報
- シリーズ
- 異常の構造
- 著者
- 木村敏
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社学術文庫
- 書籍発売日
- 2022.08.12
- Reader Store発売日
- 2022.08.10
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 200ページ
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
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東大の入試にもなった歴史的名著
木村敏の作品にハズレなし、本著は社会的な文脈から統合失調症について論じ、そこから日常の自明性の構造をも暴露する。
オカルトや異常への差別がなぜ起こるのかを極めて徹底して現象学的に追求した著作になって…いる。
日常を成立せしめる合理性が世界公式1=1に還元可能であることが示され、この同一律の成立が他者との関係を介した自己同一性の獲得によって可能となることを示している。
コモンセンスとしての常識がコイネアイステーシスとしての共通感覚を淵源とし、それが相互了解的に規範化されたものであることを明らかにしている。
そしてこのような常識や合理性が依拠するところの現実性の実相が離人症論でお馴染みの抵抗感などによって暴露されることになる。
我々の個としての生存への欲求、精神分析でいうところのリビドー、<他者>を介した享楽の追及に差別の根源を捉えている。
全と一の弁証法として自己を捉えそのつど全へと一が帰還することを示す論理は根源の欠如を軸とするラカンなどの構造主義、精神分析とは一線を画し、その今(根源)を中心とした時間意識は、本質的にいって極めてユングに近いことに疑う余地はないと思われる。その意味で日常を越えた地点から本書は日常性の条件を取り出しているとも言える。
本書で示される差別についていえば、1=1の世界公式は換喩的な時間の連続性を意味しており、異常の公式である死としての1=0はアリエッティの古論理思考を含むとするならば、隠喩的共時性を示すものと解釈する余地があるだろう。
とするならば1=1の換喩とは1=0の隠喩なくしては成立しえない。
始点=終点、すなわち死のないところに連続性も能動性も合理的には確立しえないわけであるから、日常性とはそれ自体、異常を排除することを渇望する傍らで、異常において死すことを欲していることになると考える余地がある。
そのために異常へのアンビバレントがあるように思われる。
また本書では超能力や霊、オカルトに対する一部の科学信仰者が示す激しい批判の心理も明らかにしている。
木村の本は古くなることがなく、この時代を洞察する上では欠かすことができないと思われる。続きを読む投稿日:2023.03.19
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素晴らしいの一言。
遅読気味な自分が一気に読み終わってしまった。
古い印象を受ける部分が少なからずあるが、それを補って余りある内容でした。
常識とは何なのか。
異常か正常かは何で決まるのか。
正常者…の思う世界だけが本当の世界であるとは限らない。
著者があとがきに書いている内容は精神科のお医者さんとしての誠意を込めた素直な考えなのだと思う。
木村さんの精神病理学の世界観に触れたい方は是非読んでみて下さい。
常識を解きほぐして見たい方にもオススメ。続きを読む投稿日:2023.03.16
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