数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた
ケイレブ・エヴェレット(著)
,屋代通子(訳)
/みすず書房
作品情報
“なぜ人類だけが、どこまでも数を数えられるのか。それは、ヒトが生得的に数の感覚を持っているからだ”――数は、私たちの思考に深く根付いている。だからこの説明は、一見するともっともらしい。しかし、アマゾンには数を持たない人々が暮らしている。幼少期、宣教師の父とともにこのピダハン族と暮らし、人類学者となった著者によれば、数は車輪や電球と同じ「発明品」であるという。「数の感覚」がまったく存在しないというわけではない。ピダハン族や乳児の調査によれば、彼らは数についてごく限られた感覚を持つ。人類は長い間、この曖昧な感覚だけで生きてきたのだ。そして私たちも、幼い頃は数のない世界を見ていた。今、数がわかるのは、かつて発明された数体系を受け継いだからこそである。各地の言語には、身体やさまざまな物を足がかりに発明が起きた跡が残されている。そしてピダハン族のように、発明が起こらなかった例も存在する。「わかったのは、ピダハンについてではなく、人類すべてに関することだ」。考古学、言語学、認知科学、生物学、神経科学に散らばる手がかりを横断し、数の発明の経緯を探り、その影響を展望する書。
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商品情報
- 著者
- ケイレブ・エヴェレット, 屋代通子
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- みすず書房
- 書籍発売日
- 2021.05.06
- Reader Store発売日
- 2021.05.14
- ファイルサイズ
- 8.2MB
- ページ数
- 336ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
私たちの生活において、「数」は非常に重要だ。
今日は何日? あなたはいくつ? この品物はいくら? これは何グラム?
多くのものが「数」によって描写され、規定される。数がない暮らしはちょっと想像しにくい…ほどだ。
だが、世界には、実際に「数」を理解しない文化がある。身長はどのくらい? お給料はいくら? そんな質問がまったく意味をなさない人々がいるのである。
本書の著者は人類学・言語学を専門とする研究者。彼は、「数」は自明のものではなく、一種の発明品であると主張する。本書で繰り広げられる、数を巡る旅は、世界の諸言語の研究から始まり、認知心理学、考古学、大脳生理学、動物行動学にまでわたる。目くるめく「数」の世界へいざ。
ものの量を「数」という抽象的なものに置き換えるのは、実はそう簡単ではない。
目の前に1つのリンゴがあるとして、それを「1」という数値で捉えるのは自然なわけではないのだ。
実際、「2」より大きな量を正確に表す単語を持たない民族がいる。さらには、「1」を表す言葉すらない民族もある。
こうした人々では、1、2、3といった数までは認識しても、4より大きなものは1対1対応で捉えられない傾向がある。但し、4と8とか、6と12とかを比べてどちらが多いかを認識することは可能である。本書では、1、2、3がはっきり区別可能であることを「数のきっかり感」、4より大きい数の大小をおおまかに認識する能力を「数のざっくり感」と呼ぶ。こうした感覚は人間だけでなく、動物でも持つものはいるようだ。
世界の多くの民族で、10をひと塊とする10進法が使用されるが、著者は、これは手指の数によるところが大きいとしている。ごく小さい赤ん坊がまず身近なものとして眺めるのが手指。物の数を数えるときに小さい子は指を折って数えるが、そんなところからも人の間で10進法が発展してきたのはごく自然なことのように思える。
とはいえ、すべての文化が10進法を取るわけではなく、3進法、4進法、6進法、8進法、9進法なども存在する。現代でも時間に関しては60進法(1時間が60分、1分が60秒)が使われている。これは古代シュメール人、バビロニア人が60進法を採用していた名残であるという。
著者の専門とする言語から見ていくと、単数形・複数形を区別する言語はかなり多く見られる。英語の場合は、単数形の名詞の語尾にsを付けて複数形を表す単語が大半である(tooth/teeth、mouse/miceなど例外はある)。中には、話題に上っている量が「きっかり2つ」であるときに用いられる「両数」という区分法もある。英語でもeitherやbothはその名残りである。
変化するものの多くは名詞だが、それに合わせて動詞が変化する言語も多い(英語ならis/areなど)。ほかの品詞が変化する場合もあり、定冠詞や指示詞が変わることもある。語学学習者を悩ませるわけだが、それだけ1つかそれ以外か(ときには1つか2つかそれ以外か)が、その言語を使用する人々には重要なことだったということだろう。
ところで、人文書を愛読される方には、この著者の名に「おや?」と思われる人もいるかもしれない。著者、ケイレブ・エヴェレットは、『ピダハン』の著者、ダニエル・エヴェレットの息子である。
『ピダハン』は、「言語本能論」を揺るがせた著作である。ピダハン族は「右と左」、数の概念、色の名前を持たない。神も、創世神話もない。キリスト教伝道師であり言語学者でもあるダニエルは、当初、「未開」の人々に布教をするために現地に入る。だが研究を進めるにつれ、逆にその独特の世界に魅かれ、ついには無神論者になってしまう。
幼いケイレブはダニエルの伝道・研究に、母や兄弟たちとともに同道し、ピダハン族と過ごしている。その当時の思い出も綴られる。
ケイレブにとっては幼少時の記憶は好意的なものであったようである。それが本書に記されるような、人類学者としての研究に結実したのであれば、ある意味、父の研究を幸福な形で継いだともいえるだろう。
「数」の概念の発展についてはまだ不明の点も多い。
さまざまな観点から「数」を俯瞰し、知的好奇心を刺激する好著。続きを読む投稿日:2021.11.16
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