古典について
吉川幸次郎(著)
/講談社学術文庫
作品情報
日本書紀の時代から、この国の基盤には大陸から摂取した文明の影響がありました。営々と築き上げられてきた日本の漢学文化は、中国古典の碩学、吉川幸次郎(1904-80年)の目にどのように映じていたのでしょうか。
ふとしたことで手にした本居宣長『うひの山ぶみ』によって、宣長の「信徒」となったと告白する著者は、江戸時代に日本の漢学の全盛を見ます。伊藤仁斎や荻生徂徠を生んだ元禄・享保期の儒学と、戴震や段玉裁、王念孫ら清朝の儒学に共通性を見出して、それを「近世の覚醒」と名付け、日本における覚醒が実は100年近くも大陸に先んじていたことを指摘します。
江戸時代に頂点を極めた漢学が、明治になって文化そのものが根本から変容していくことを万葉集の偏重に象徴的に見る第1部「古典について」、古代から江戸末期にいたる日本の漢学受容という類のない通史をコンパクトに描いた第2部「受容の歴史」、そして著者が愛してやまない儒者たちを素描した第3部「江戸の学者たち」。日本思想の基層をなす漢学という視座から、この国の学問的伝統を再発見する極上の教養書です!
【目次】
1 古典について
古典について――あるいは明治について
一 明治の記憶/二 明治への距離/三 明治の得失/四 万葉と古今/五 詩における理知/六 学術の文章/七 美と真の共存/八 注釈の学/九 辞典の学/一〇 日本書紀/一一 書紀学の変遷/一二 東洋史学/一三 太平
2 受容の歴史
受容の歴史――日本漢学小史
一 日本における外国文明の受容/二 そのインドその他との対比/三 文学および文学教育における受容/四 学問一般における受容/五 外国文明受容の心情/六 外国文明受容の歴史/七 受容の歴史のはじめ/八 空海その他/九 菅原道真/一〇 受容の中だるみ/一一 中国新文明の受容/一二 五山の禅僧/一三 江戸時代における受容の教育/一四 江戸時代における外国書の輸入と覆刻/一五 家康の政策/一六 藤原惺窩/一七 林羅山/一八 朱舜水その他/一九 伊藤仁斎 その一/二○ 伊藤仁斎 その二/二一 荻生徂徠 その一/二二 荻生徂徠 その二/二三 荻生徂徠 その三/二四 荻生徂徠その四/二五 江戸末期における受容/二六 むすびと希望
3 江戸の学者たち
仁斎と徂徠――論語古義と論語徴
伊藤仁斎
古義堂文庫
仁斎と小説
古義堂
二つの伊藤仁斎論――スパアとツアトロフスキ
伊藤東涯
安積澹泊
本居宣長――世界的日本人
一冊の本――本居宣長『うひ山ふみ』
学問のかたち
中京の二学者――河村秀根と岡田挺之と
息軒先生遺文続編の序
解 説(小島 毅)
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商品情報
- シリーズ
- 古典について
- 著者
- 吉川幸次郎
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社学術文庫
- 書籍発売日
- 2021.04.15
- Reader Store発売日
- 2021.04.14
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
漢文の授業不要論がかまびすしい今日この頃であるが、本書を読むと、中国の古典、特に儒学が本当に重みを持っていた時代があったことを、改めて感じた。
古学の徂徠、国学の宣長は今でも相当に名が知られている…と思われるが、著者は伊藤仁斎を高く評価する。理を重視したドグマ的な朱子学の解釈を批判し、孔孟の原文に即した実証主義的な解釈、自然な人間性を尊重する基本的姿勢など、その学問の特色を分かりやすく解き明かしてくれる。
仁斎、その息子東涯の著作を、とても読みたくなった。
ちょうど、著者の『論語』が角川ソフィア文庫から再刊されていて読み始めたところであった。中国の論語註解に加え、仁斎、徂徠の注を参照しながら解釈を進めていくスタイルがどうしてなのかなと思いながら読んでいたのだが、本書を読んで疑問が解けた。
続きを読む投稿日:2021.04.27
伊藤仁斎、荻生徂徠、本居宣長に重点を置いて、古典研究について解説しています。
伊藤仁斎、荻生徂徠については、論語などの解説書で見かけるものの、朱子学と比べれば傍流の学派だろうと思っていました。
とは…いえ生前から有名な学者なので、何がそんなに人を惹きつけるのか不思議でしたが、本書はそれを大づかみにさせてくれます。
「全体を全体として説いたものは、むしろ糟粕」(204頁)とする彼らの立場からすれば、大づかみになどせず、論語を精読しろと言われそうですが。
宣長について、中国文学研究者の著者が取り上げたのは意外。
国学者本居宣長は漢学に結びつかないイメージがありますが、言われてみれば古事記は基本は漢文で書かれているのでした。続きを読む投稿日:2021.05.02
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