ほんとうの「哲学」の話をしよう 哲学者と広告マンの対話
岡本裕一朗(著)
,深谷信介(著)
/中央公論新社
作品情報
世界の謎を解くSF小説を読むかのような、スリリングな哲学体験
――生命・情報テクノロジーが急速に進化し、広告化する現代において、いかに考え、いかに伝えるか。
「人生とは何ぞや?」と暗い顔して問うてみたり、学説を列記したりする。「そんな哲学、そろそろやめませんか?」というのが、本書の基本的なメッセージです。テクノロジーの飛躍的な発展によって、いま人間を取り巻く環境が大きく変化しています。常識や従来の考え方が有効性を失い、ビジネスをめぐる急速な変化に対し、最近企業では、根本的かつ普遍的な価値を問う「哲学的アプローチ」が注目、模索されています。
哲学と広告といえば、今まで重なることのない無縁の領域と見なされてきました。本書では、「コンセプトを創造する」という、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの言葉に着目して、広告と哲学の新たな可能性をとらえ直すことにしました。偉大な哲学者たちは魅力的なコンセプトを発明し、多くの読者(客)を獲得する卓越した広告マンでもあったのです。
若き俊英マルクス・ガブリエルが提唱する新実在論などの哲学の新しい潮流、ビッグデータを蓄積して人間の心と脳に接近する広告の趨勢、人類の未来予想も、本書のなかで探求しました。
さあ、ページをめくって、ほんとうの「哲学」をめぐる物語の旅へ出発しよう。
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この作品のレビュー
平均 3.3 (8件のレビュー)
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― 広告と哲学の共通性。偉大な哲学者たちは卓越した広告マンでもあった。プラトンはイデアというコンセプトを着想し、2000年以上にもわたって人々に広まった。デカルトはコギトというコンセプト。「我思う」と…いう有名な言葉。これら哲学の重要な概念は、広告におけるコンセプトに似ている。そしてこの魅力的なコンセプトは多くの読者を獲得した。哲学の仕事とは、コンセプト(概念)を創造することだ。
「おしりだって、洗ってほしい」
「亭主元気で留守がいい」
さて。心に残る、あるいは皆の心の声の象徴のように響く。これは確かに哲学と類似性があるのかもしれない。哲学とはその程度だと言えるかもしれないし、寧ろ、広告とはそうした崇高な大衆心理の抽象化作業という方が正しいだろうか。
多くの人たちが、他人の考えをお互いに予想しながら、自分たちの考えを形成する。この考え方を間主観性、相互主観性、あるいは共同主観性とも呼び、ケインズは美人コンテストを例示した。結局のところ、我々の認知も相対的に形成されるものであり、自己確認も他社との比較や距離感で測る事が多い。その時代の人類の真理を抽出したり、誘導するのが広告ならば、いつの時代にも通用する真理を抽出し掲揚するのが哲学か。
ー 記憶は、パーソナルアイデンティティーの構築において、重大な役割を果たす。多くの記憶を蓄積し、外部化するほど、パーソナルアイデンティティーの構築と発達に対するナラティブが、より多くの制約を受けることになる。記憶の増加はさらに、我々自身を最低する自由度を低下させる。
…記憶が選択肢の増加に役立つならば、記憶の増加が自由度を低下させるというのは本当にそうかなと思うが、掲揚され、誘導される場合のキャッチコピーには、大勢がチラつくという意味で、もしかすると自由度低下は当てはまるのかも知れない。そんな問いを投げかける本だ。続きを読む投稿日:2024.03.07
2021.10.03 かなり刺激的な本であった。特に最後の章は刺激的。AIに牛耳られてしまうなか!
投稿日:2021.10.03
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