麹町中学校の型破り校長 非常識な教え
工藤勇一(著)
/SB新書
作品情報
東京のど真ん中に「学校の常識」をひっくり返している公立中学校長がいます。
宿題は必要ない。固定担任制も廃止。中間・期末テストも廃止。
多くの全国の中学校で行われていることを問い直し、本当に次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求しているのが、
千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長です。
大人が手を掛けすぎて、何でも他人のせいにする…。
そんな今の教育に反し、改革を断行し、話題を呼んでいます。
一部始終を表した『学校の「当たり前」をやめた。』はベストセラーに、朝日新聞、NHKなどメディア出演も昨年後半から急増。
文部科学省など視察は後を絶たない。
現役ビジネスマンであっても関心の高い、日本の教育問題。
それを根底から変える、稀代の教育者が初めて親向けに子育て論を出版!
「子どものために」が自立をはばむ――。
名門と呼ばれる麹町中学に赴任するやいなや、課題を200も挙げ、次々と改革に着手されていった工藤校長。その視点には、教育界にどっぷりつかった者や親が思考停止してしまっていて、気づかない「気づき」が多くあるのではないでしょうか。たとえば、宿題をとにかくやらせる、運動会で結束をうたって組体操をさせる…などなど、大義名分の名のもとに慣習を変えられない教育関係者は大勢いるはずです。
そこで本書は、「その教え方は本当に正しいのですか?」と投げかけることで、多くの親の教育への思考をクリアにできるのではないか、と企画いたしました。「子どものため」を思いながら、逆に自律を妨げてしまっている規制やルールや思い込み。そこから自由になることで、真に現代に合った子育てを標榜する、そのための1冊をめざします。
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商品情報
- シリーズ
- 麹町中学校の型破り校長 非常識な教え
- 著者
- 工藤勇一
- 出版社
- SBクリエイティブ
- 掲載誌・レーベル
- SB新書
- 書籍発売日
- 2019.09.05
- Reader Store発売日
- 2019.09.05
- ファイルサイズ
- 3.3MB
- ページ数
- 216ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (38件のレビュー)
-
何冊か著作を読みましたが、この本は、後半が特にビンビンと響きました!!長いけどけど引用させてもらいました。う~ん。この先生は勉強されてるな!すごいな!
p118~
「みんな仲良く」を否定した全校集…会
全校集会でアップル創業者のスティーブ・ジョブズについて、こんな話をしたことがあります。
「スティーブ・ジョブズは嫌われものだったって知ってるかな。相当嫌われてたらしいよ。じゃあ、彼はどんなことに優れていたかわかるかな?それは『目的』なんだ。彼はアップルの製品を通じて世界中の人を楽しませたいという目的を持っていた。だから、(中略)一切の妥協をせず、細部にこだわって自分の理想とするアイデアを押し通した。(中略)
ただ、ここでちょっと考えてほしいんだけど、『みんなの意見を聞いて目的を達成できないこと』と『意見を聞かずに目的を達成すること』。
どっちが大事かな?
どっちを優先したらいいかの判断はみんなの今後の人生で何度も起きることなんだ。そのときに覚えてほしいのは、みんなと仲良くすることや協調ふることは決して目的ではないということなんだよな」(中略)
協調性とはあくまでも目標を達成するためのひとつの手段であって、「目的」ではありません。(中略)
日本社会は「出る杭を打つ社会」です。
しかし、各自がより主体性を発揮していくこれからの社会は、その真逆をいきます。つまり、出る杭だらけの社会、もしくは出る杭が尊重される社会です。大人世代も含め、出る杭だらけの社会の感覚に慣れた人は多くありません。だからこそ当校では出る杭だらけの社会における身の振り方を教えるようにしています。
具体的には、こうです。
・人はみな違うと理解してもらう
・感情をコントロールする重要性を教える
・対立があったときの合意形成のはかりかたを学ぶ
そしてこれこそが子どもたちが社会に出たときに必ず役に立つ、ダイバーシティ教育の根幹だと考えています。
p128~
「協調性」は子どもへのストレスになる
協調性ばかりを子どもに教えていると、自分が周囲と馴染めないことを必要以上にストレスを感じる子どもが増えます。
たとえば日本社会でよくある悩みが、同調圧力問題。仲良し教育のもたらす典型的な弊害です。「クラスで浮いた存在になりたくない」と必要以上に不安がって、必死になってみんなと同じように振る舞おうとします。(中略)自己否定や劣等感が強い子どもが多いコミュニティほど周囲への攻撃性が増すため、同調圧力も強まる傾向にあります。
もし子どもが同調圧力に疲れているようであれば、「みんなと合わせるか・合わせないかは自分で決めればいい。全然たいした問題ではないよ」と、はっきり伝えるべきだとおもいます。
ただ、そうは言っても、子どもとしては仲良しグループとの間に微妙な空気が流れることを嫌がるでしょうし、親としても子どもがいじめの対象にならないか心配だとおもいます。そんなときは、こんな声をかけてみてはどうでしょう。
「じゃあ、みんなに嫌われないためにはどんな言い方をすればいいだろうね?
」
一緒に対策を練ってみるのです。むやみに対立を深めることなく自分の流儀を通す。これこそ多様化社会で重要になるスキルです。(中略)
多様性の感覚は一朝一夕で身につくものではありません。訓練の賜物だとつくづくおもいます。でもことあるごとに「人は違って当然。じゃあどうする?」の視点で物事を見るように仕向けていると、子どもたちは次第に他者を尊重することを覚え、「出る杭を打つ」が起きづらくなります。(中略)
「あの子がいてくれたおかげで、いろんな考え方があると知れました」
p125~
違いをみとめる姿勢は、しずかちゃんに学べ
個となる意見や立場をいったんOKと受け止めた上で、相手との対立を無駄に激化させないように言葉を選び、働きかけていく。これが多様化社会における理想的なコミュニケーションの仕方であり、合意形成を図るとき、対人関係を構築するときに使える協力な武器になります。
(中略)
では、子どもがしずかちゃんのようなアサーション(肯定的な会話の技術)を身につけるにはどうすればいいか。それは、周囲の大人がその子のやることなすことを否定せず、積極的に肯定しながら育てることです。
p128~
意見の対立からすべては始まる
多様性を受け入れる最初の1歩は、なにはともあれ違いを認識すること。
一方向から見た価値観を押し付ける教育は道徳教育としてふさわしくないと感じてきました。(中略)たとえば平和教育。平和は尊いもので戦争は愚かな行為。でも実際に戦争はなくならず、今も世界の土鼓かで起きているわけです。だから私は子どものころ学校の先生が「戦争反対」と連呼する姿を見て、強烈な不信感を抱いていました。子どもながらにしりたかったのは「なぜ戦争をしなければいけないのか?」という戦争をする人の見解だったからです。(中略)
高い次元に駆け上がって、利害関係者全員が納得できる共通の目的を模索する必要があります。そのファーストステップが、「異なる立場の人の意見に耳を傾け、対話をすること」なのです。
誰かを悪者扱いしたり、敵視するだけでは世の中の対立はいつまでも解決しない。「戦争反対」のプラカードを掲げて誰かを罵ったり、「友だちとは仲良くしなきゃだめよ」と一方的に子どもに教えることは、問題解決の糸口になっていないとおもいます。
↓
p133~
多数決に頼らない生徒に育てる
そのために、ビジネスの代表的なフレームワークである、
「ブレーンストーミング」とKJ法の活用
「どんなアイデアでもウェルカム」
「お互いが納得できる上位の目標を見つけること」→「じゃあどんな手段がベストだろう?」と議論を「落として」いけるわけです。ここに感情的が入り込むと、握手をするところまで到達できません。
交流があるロンドンの中学校の先生も、「これからの時代は多彩な意見を取り入れながら、アイデアを構築していく技術的も重要なんだ。だからこそ、折に触れブレーンストーミングをやっている」とのこと。
私自身も、自分の考えに基づいて人に働きかけ、状況を変えていくことをずっとやり続けてきました。意識的にやっているのは、反対側の意見を理解することです。(中略)
「アクションを起こせば人は反発するのが現実であると教え、そこから発想をスタートさせるほうが重要」だと私はおもいます。
「挑戦する意欲=心的安全」が生まれやすい脳とは?
1、ヤング・アメリカンの実践のように、「失敗してもOK」「人と違ってOK」の文化
2、「心的安全状態をつくりやすい脳」に変えていくために大人ができることといえば、「失敗は悪いことではない」と教え続けること
「子どもたちの工夫や試行錯誤といったプロセスを大人が言語化してあげた上で褒めてあげる」
「ネガティブなものとして捉えられている弱点を克服しようとしているポジティブな自分」がメタ認知として定着していく
子どもが失敗したときのフォローも大切です。叱ったり、次はがんばろうね、と言ったりするのも、暗に「今回はがんばらなかった」と言っているのでフォローになっていません。火とは失敗から学べると意識づけるためには、うまくいかなかった原因や、逆に良い面を伸ばすところに焦点を合わせて、課題設定や具体的な手法に目を向けさせることが大切です。こうやって子どもの「がんばり」を具体的に言語化してあげることで、試行錯誤をすることが価値づけされていくのです。
続きを読む投稿日:2023.01.07
良い心と良い行い、のところが印象に残った。「偽善」って言葉はわかるけど、みんながみんな聖人君子なわけない、偽善になるから行動しないって意味わかんないなと思っていたが、その疑問について答えを示してもらえ…た感じがする。心からそう思っていなくても、頭では正しいってわかっているし、心は簡単に変えられるものじゃない。「心と行動が一致した状態」じゃなくてもいいんだ、と思わせてもらった。
それと「言葉」についてもっと意識的にならなきゃなとも思った。自分の言動が相手にどう思われるか、客観的な視点もつことはいつまでも必要だと思う。
自分の子ども自体を振り返りながら読むと、グサッと刺さるところがたくさんある。そんな自分を受け入れながらいい大人にならなくては。そして、将来生まれてくる子どもには良い距離感で接せられるようにしたいと思う。続きを読む投稿日:2024.04.02
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