暴力について――共和国の危機
ハンナ・アーレント(著)
,山田正行(訳)
/みすず書房
作品情報
ベトナム戦争、プラハの春、学生運動… 1960年代後半から70年代初頭にかけて全世界的な広がりをみせた騒然たる動向を、アーレントは亡命の地・アメリカ合衆国でどのように考えていたか。「国防総省秘密報告書」を手がかりに嘘と現実(リアリティ)との政治的なあり方を論じた「政治における嘘」、暴力と権力との相違をテーマにした「暴力について」、さらに「市民的不服従」など、本書は、情況への鋭い発言のかたちをとりながら、われわれとわれわれを取りまく世界への根本的な問いを投げかけている。「政治とは何か」をもっとも明快かつ具体的に論じた書ともいえよう。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (8件のレビュー)
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アメリカに亡命したハンナ・アーレントが、ベトナム戦争の激化、公民権運動や学生運動の高まり、プラハの春などなどの激動の時代を踏まえて、70年前後に書いた政治的なエッセイを集めたもの。いつもはアマゾンで本…を買うのだが、久しぶりに書店で本を眺めていて、面白そうだったので、読んでみた。
いつもは難解な印象のアーレントだが、個人的にも興味をもっているこの時代の具体的な事件を背景に議論を進めて行くためか、わりと読みやすい。
テーマも、政治的な嘘、市民的不服従、暴力など、個人的に関心の強い問題群である。また、核兵器によって大国間の戦争が不可能になった状態での小国や小さな集団の軍事的影響力の増大など、今日のテロリズムやならず者国家の問題に直結する問題意識だとか、未来への希望を持てない世代の話とか、まさに今日的な状況そのものの洞察がたくさん含まれていて、とても40年くらい前のエッセイとは思えないものになっている。
とはいえ、そこはアーレント、やはり一筋縄ではいかない複雑さを内包している。
それが一番如実にでてくるのが、本の一番最後にでてくるインタビュー「政治と革命についての考察」で、いかにも70年代くらいの典型的左翼インテリといったインタビュアーの質問をバサバサと切り捨てつつ、誠実に、そしてかなり分かりやすく自身の立場を解説していくところが圧巻だ。
つまり、「黒か、白か」「賛成か、反対か」など、分かりやすいポジショニングを訪ねるインタビュアーに対して、「そんな質問、意味ないでしょ。世の中そんなに単純ではない」と単純なポジショニングこそ、ファシズムに通じるものだという感じで返答しつつ、ほとんど不可能であるものの唯一の可能性としての共和制への希望をもって、話は終わる。
その辺、なんだかんだで、非決定論や暴力論を経由して、「来るべき民主主義」を志向するデリダとも通じるかな、なんて、にわかデリダ読者は思ったりする。
というふうにインタビュアーをバカにした読みが可能なのは、誰にとっても今は、ポスト共産主義、ポスト冷戦、ポスト9. 11、あるいはポスト資本主義の時代になっていることが明らかな状況であるからであって、70年くらいの左翼インテリには、やっぱり「社会主義か、資本主義か」というフレームを通してしか、物事をみれなかったわけで、それはそれで、人ごとではなく、笑えない。
これまで気になる存在でありつつ、なかなか入門できなかったアーレントだが、これを機会に少し他の著書にも手を伸ばしてみようかな。続きを読む投稿日:2017.04.30
暴力について―共和国の危機
(和書)2012年02月01日 16:15
2000 みすず書房 ハンナ アーレント, Hannah Arendt, 山田 正行
ハンナ・アーレントさんの本は良いです。…自分自身もそれに近づける様にしたいと思うことができる。そういう人の本は非常に有益だし、生きていくのに必要なものだと思います。
こんかいは『暴力について』でした。アレントさんの他の本を借りにいったら貸し出し中だったのでこの本を借りた。非常におもしろい。次は『革命について』を読んでみたい。
アレントさんの全集などでないかな?あったら買いたいけど高そうだから借りたい。きっと誰かが企画してるかもしれない。その人達に期待しています。続きを読む投稿日:2020.09.26
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