気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解
ウィリアム・ノードハウス(著)
,藤崎香里(訳)
/日経BP
作品情報
本書では、「私たちは気候カジノに足を踏み入れつつある」という比喩を使う。この表現を通じて著者が主張するのは、経済成長が気候システムと地球システムに意図せぬ危険な変化をもたらしているということ、そして経済成長と温暖化問題の対策は両立できるということだ。 私たちは気候のサイコロを投げている。その結果は数々の「サプライズ」を引き起こし、場合によっては深刻な事態を招く恐れもある。今なら向きを変え、そこから出ることができる。
今日までの軌道を修正するために必要な取り組みを、経済学のことなど何も知らない人でも理解できるようにわかりやすく、ロジカルに解説した。
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商品情報
- シリーズ
- 気候カジノ
- 著者
- ウィリアム・ノードハウス, 藤崎香里
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2015.03.20
- Reader Store発売日
- 2015.04.03
- ファイルサイズ
- 20.4MB
- ページ数
- 452ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (10件のレビュー)
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50年後の1億ドルの損失を防ぐためには今1400万ドル払えば良い
1900年と2000年を比べると、二酸化炭素排出量は20億tから300億t以上に増え、平均気温が0.8℃上昇した。大気中の二酸化炭素濃度は1960年代の310-20ppmから2010年には390ppm…に上がってきている。問題はこの調子で二酸化炭素の排出量が増え続けた場合に2100年には平均気温が何度上がり、その結果としてどんな事態が起こりえるかなのだが色々なシナリオによるとさらに1〜3℃ほど上昇するとみられている。この本では世界の気温上昇を2℃に抑えるためには どういう方法が有効かを経済学的な視点から提案している。
例えば気候変動の影響をもろに受ける農業の場合、二酸化炭素濃度の上昇と1℃程度の温度上昇は収量を増加させるとかまた高温に適した品種の栽培や館外などの適応策を講じれば2℃を超えても収量は落ちないという見通しがある。しかし、それも3℃を越えると収量は減るし、地域によって損得が別れてしまう。
また気温変化に対する応答には臨界点があり例えばグリーンランドの氷床の融解についてのシミュレーションでは5℃の上昇では20%が融けるだけだが6℃になるといきなり80%以上が融けそれから温度を5℃下げても20%しか氷床は戻ってこない。正しい答えは2℃ではなく4℃なのかもしれないが、どこかに臨界点が存在する。アルベド効果と言って白い氷は光を反射するが氷が融けると黒い大地が光を吸収しより温度が上がりやすくなる正のフィードバックも起こる。
温暖化人移設に対する懐疑論も根強い。曰く、0.8℃の上昇は二酸化炭素が原因とは言えないし直近10年では温度上昇は見られず今後も上昇はしない、地球は寒冷化に向かっている、数℃の上昇は悪いことではないなど様々だ。クライメートスキャンダルについてはこの本では触れられていないが、懐疑論を後押ししたことは間違いない。ただそれでも臨界点を超えないように安全サイドを目標にするというのは納得がいける考えだ。
排出削減の方法は経済成長の抑制、エネルギー消費の削減、炭素集約度の低下(より排出の少ないプロセスに変える)、二酸化炭素の除去などが有るがここは経済学者らしく費用と便益を比較しながら提案している。まず50年後の損害が1億ドルとした際に現在削減策にいくらかけれるかを現在価値に割り引いて計算する。投資の回収では普通の計算だが現在の費用が将来の便益(損失の回避)になるので適切な割引き率が設定できれば良く著者は4%を使い14百万ドルとはじいている。政策がある程度効率的に実施された場合気温上昇を2.5〜3℃に抑えるために必要な費用は割引き率世界総所得の1%以下でこれは楽観的に思えるがアメリカをはじめとする参加率の高さが前提となる。
著者は削減策としてはキャップアンドトレードでも、炭素税でも参加国が導入しやすいもので良く、ただ重要なのは国際的に炭素の最低価格を決めることだと言う。(試算では25ドル/t)ただ燃費規制などはコストの割に効果がなく、例えば小型車よりもSUVに甘い燃費規制を導入すると消費者に大型車に乗るインセンティブを与えてしまいかねない。
費用便益分析の結果では気温上昇の損害額は温度上昇と正比例の関係に近く、費用は上昇幅を小さくしようとすると急激に上昇するため費用と損害額を足した総費用には極小値が生まれる。参加率の高い楽観的シナリオでは割引きなしで計算すると2.3℃上昇で費用は世界総所得の1%となり、消極的な国が削減策に参加しない現実的なシナリオでは3.8℃で4%となった。ただし損失を4%で割り引いて計算すると4℃で2.5%ほどになる。効率の鍵は割引き率ではなく参加率の方となる。
「生態系の価値はお金では表せない」とか「いかなる対価を払ってでも、ホッキョクグマを救わなければならない」と言う人もいるかもしれないが、アメリカ、中国、インドが参加しないプログラムは無力なので、経済的な分析は有用だ。中国でも排出権取引は始まったしそれ以前に中国人自身が温暖化はともかくPM2.5にはうんざりしている。むしろ問題はアメリカの方かも。続きを読む投稿日:2015.05.06
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地球温暖化は確実に進んでおり、何も対策を講じなければ、地球システムにとっては危機的な結果をもたらす。
その根拠となる科学的なデータの由来は、今後の経済成長や温室効果ガスの排出量など不確実性を含んでいる…。それでもデータは地球温暖化の進行を示しており、経済学はその損害額を推定する。データに不確実性がある中で、2℃上昇を抑えるというのはまさに政治的な合意の結果。
何となくは理解した気がするが、専門的内容であるため難しい。
炭素税、キャップ・アンド・トレード続きを読む投稿日:2021.05.19
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