ザ・サークル
デイヴエガーズ(著)
,吉田恭子(訳)
/早川書房
作品情報
世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員(サークラー)たちが生み出す新技術――そこにないものはない。どんなことも可能だ。 故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるソーシャルメディアでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき…… 人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
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この作品のレビュー
平均 4.1 (22件のレビュー)
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気鋭の作家が描くプライバシーが悪だとされる完璧な民主主義社会の姿
巨大インターネット企業「サークル」を舞台にした近未来小説。というより小説仕立ての予測シミュレーションと言った方が適切かも。きっかけはこれまで未整理で複雑だったユーザー情報を一つに統一したトゥルーユーの…誕生と、お互いにシェアしあえば世界中の何百万のライブ映像にアクセスできる安価な個人用ライブカメラの登場にあるのだが、やがて社のトップは「秘密がなくなれば、人類は善になる」とか、「人類が経験しうるすべての経験への平等なアクセスは、基本的人権である」と宣言するまで至る。その過程に、なんら不自然な突飛さはない。
ただし同じような発想が日本でも生まれるだろうか?という問いは興味が尽きない。これはアメリカ、いやシリコンバレーという地でしか育まれない特有の思考形式だと思う。秘密は、「常軌を逸脱した行動様式の一部であり、反社会的で、非道徳的で、破壊的な行為を助長する」からなくすべきだし、すべての人のあらゆる経験にアクセスできることは必須で、自分の経験をオンライン上でシェアできないようにすることは、「知識の独占」で「わがまま」だという考えは、アジア人の間にも生まれまい。
透明性とオープンアクセスを信奉する会社で生き残るために、主人公のメイはキャンパス内で必死に努力する。 なにせこの会社は、ソーシャルであること、オンライン上のあらゆるアカウントで絶えず存在感を示しつづけることが、仕事の欠かすことのできない一部であるとする会社なのだ。一定レベル以上のコミュニティ参加が求められる職場というのは、まさに一昔前の社内運動会が盛んだった日本企業そのもののような気もするが。
ソーシャルネットワークとジャンクフードの類似性を指摘する箇所が面白い。社交的でないとなじられたマーサーが、問題は不自然に極端な社会的欲求を生み出す彼女の会社のツールにあると指摘し、他社との極度なコンタクトなんて誰も求めていないのになしで済ませられなくなるのは、科学的に塩分と油分が配合されたジャンクフードみたいなもので、「やめられない空疎なカロリーのソーシャルネットワーク版」だと言い返す。
マーサーはこの他にも、ソーシャルネットワークの進んだ状態を「誰にも強制されること」なく「自ら進んで自分を鎖に繋いで」しまう「社会的な自閉状態」と呼び、なるほど思わせる。
今年発売されるApple Watchがただのオモチャにしか思えないほどの究極なウェアラブル・デバイスが登場する。手首のモニターとつながるセンサーをドリンクと一緒に飲むことによって得られるデータは次の通り。心拍、血圧、コレステロール、体温の変化、摂取カロリー、睡眠時間、睡眠の質、消化効率、ストレス値、汗のPH値、血中酸素濃度、赤血球数、歩数、姿勢などなど。
しかし、自分についてのデータ収集が、やがてそれだけでは済まなくなり、他の人のデータまでも欲しくなり、それなしには足りないと感じてしまうような世界が、サークルが目指す完全化の達成した倒錯した世界なのだ。
何も持たず旅に出るなんてわがままで、非ソーシャルは自尊心の低さの現れだと主人公が詰られるシーンがあるが、新興宗教施設内での折檻や連合赤軍の総括を連想させ、なかなか恐ろしい。自分の趣味や興味を周りの人に知らせることは、自分の役割を果たすことにつながり、コミュニティの一部であることの不可欠な要素であるとする指摘は、一見まっとうに思えてなかなかに罪深い。
透明化したメイが自分は以前よりはるかに改善されたと感じる場面はなかなか興味深い。ついつい甘いものに手が伸びるダイエット志望の人にも、ついもう一杯と杯を重ねるアルコール依存症患者も、カメラによって常に見られて窮屈だという思いよりも、メイのようにカメラによって自分の振る舞いが矯正されたという感謝に変わるのだろうか? 続きを読む投稿日:2015.03.07
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限りなくノンフィクションに近いフィクション
GoogleとFacebookが合体したような架空の会社サークル。
そこに入社した主人公の仕事やブライベートを通して現実を風刺している作品です。
IT関連の仕事をしている人やSNS好きには「分かる分…かる」という内容がたくさん出てきます。
“透明化”が本当に実現したらどうなるのか、見てみたいような見たくないような続きを読む投稿日:2017.04.09
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