この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
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富か誇りか
著者の西氏はフーヴァー研究所の研究員でアメリカの日本占領期間の公文書や一次文書を発掘し書き上げた論文「unconditional democracy (無条件民主主義とでも訳すのか)」を元に再構成した…のが本書で、マッカーサーのアイデアから出た日本国憲法と第9条、「民主主義」を拡げるために最重要視した教育の改革そしてサンフランシスコ平和条約を取り巻く環境と言う3部構成になっている。
日本は「富」を追求する代わりに最も大切にしていた「大和魂」を失った。「誇り」を、アメリカは敗戦直後の虚脱状態にあった日本国民の心の中から、永久平和と民主主義という甘い言葉で誘い出し、アジア・太平洋の「征夷大将軍」マッカーサー元帥の密室で扼殺した。
その死体が憲法第九条。
憲法第九条は「愛国心」の墓。
我々の「誇り」は第九条の中に埋葬されている。
西氏の政治姿勢はこれでわかるだろう。この本に対する評価も人によって180度違うだろう。内容はともかく読みにくい、わかりにくい日本語だとだけ言っておこう。
1945/5/11すでにナチス・ドイツは敗れ日本へ休戦と和平を模索していた。しかし天皇につき曖昧にしておけば日本は受け入れやすいと言うのがポツダム宣言におけるアメリカの狙いだったが裏目に出、トルーマンに原爆を使う口実を与えることになった。そして無条件降伏した日本にマッカーサーが降り立った。アメリカ史上でも最大の絶対的な権力を持って。連合国はワシントンに極東委員会を置いたがマッカーサーは自分より強力な権限を持つ極東委員会を事実上無視した。そのため日本にもたらされた民主主義はマッカーサー個人のアイデアによるところが大きい。
マッカーサーの言う民主主義は「アメリカの政治、社会文化及び経済体制」であり、日本の敗北を軍事だけでなく「信仰の崩壊」と見、この空白の中に民主主義を注ぎ込んだ。この背景にはキリスト教の信仰がある。
一方で天皇の地位を守ったのもマッカーサーと言える。ソ連、イギリス、中国、オーストラリアに加えアメリカ国内でも天皇を戦犯として裁けと言う意見が強くなっていたが、「天皇を葬れば日本国家は分解する」「憎悪と復讐」が連鎖するのを恐れマッカーサーは陸軍省に極秘電報を打ち天皇の命を救うことになる。この電報を発掘したのは西氏の功績だろう。これは付録に載っている。とは言えマッカーサーが天皇に敬意を払っていた様子は見られない、あくまで自分の理想に日本の社会を作り変えるためだ。
マッカーサーが全体主義を破壊し、民主主義を植え付けようとした副作用の一部はマッカーサーにも向った。共産主義者は合法化されたが以前国民には嫌われていた。憲法改正において保守主義者は出来るだけ明治憲法を守ろうとした。この時GHQ案に最も近いのは「主権は人民にある」とした共産党案だった。しかしスターリンとつながる共産党案を褒めることはできない。政府案はこうだ。「天皇は至尊にして侵すべからず」どうせ後から修正されるので出来るだけ明治憲法から変えないほうが良いと言う政府案はマッカーサーを怒らせ、マッカーサーの直筆のノートを元に民政局は憲法草案を6日間で書き上げた。そして2週間後これを元に政府草案が提出された。
1946/6/28衆議院の憲法草案審議の際、スターリンのスパイ共産党の野坂参三と吉田茂は戦争放棄について議論した。この時自衛のための戦争を良しとしたのは野坂であり、正当防衛が戦争を誘発するとしたのが吉田だった。戦争放棄を訴えマッカーサーと吉田はその後朝鮮戦争の勃発とともに自衛隊を創設し、レッドパージにより共産主義者を公職から追放するようになる。
教育改革もうまくいったとは言えない。マッカーサーから見ると天皇制と切り離せないのが教育勅語であり、民主主義と平和教育は教育勅語の廃止とセットになっている。まず軍国主義に賛成したものを追放し、教育委員会の選挙を行ったが例えば大阪では立候補したのは闇市のボスと共産主義者ばかりだった。まともな候補者は彼らと争うのを嫌がったからだ。予算不足から教員の給与は安く抑えられ食うや食わずだった。昇給を求める教員たちが育てたのが日教組だ。食料や予算の不足はアメリカの責任ではないのだが。結局いろんな問題を朝鮮戦争での好景気が覆い隠したことになるが、それすらも著者にとっては富と誇りの交換として捉えられている。続きを読む投稿日:2016.06.20
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アメリカの機密文書が公開期日をむかえ、それを読むことでわかった終戦前後の日米の事情。
アメリカ占領当時の、事実が細かく明るみに。投稿日:2019.01.02
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