出星前夜
飯嶋和一(著)
/小学館
作品情報
キノベス1位&大佛次郎賞受賞作!
大佛次郎賞+キノベス第1位の2冠に輝いた、歴史超大作!
寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。
結局は幕藩体制そのものに抗うことになる海民・土豪らの絶望的な戦いがここから始まる。向かう先は破滅にほかならなかったが、それでも彼らが戦うことを選んだのはなぜだったのか?
原稿枚数1200枚! 大部ながら一気に読ませる本作もやはり「飯嶋和一にハズレなし!」である。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (47件のレビュー)
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教科書ではわずか数行。この長編こそが真実を語る!
タイトルにひかれ、書籍説明にひかれて手に取りました。この作者の作品を読んだのは「始祖鳥記」が最初でしたが、タイトルの付け方が上手いですね。
さて、この小説は、誰もが知っている島原の乱が題材となって…ます。手元に残してある40年近く前の私の高校の日本史の教科書を見ると、わずか6行の記述になっています。(昭和51年発行山川出版社詳説日本史)そこには、島原城主や天草の領主の圧政が原因となって発生したこと、領民の中にキリスト教徒が多かったこと、牢人が指導者となっていたこと、天草四郎時貞が総大将だったこと、武器や食料がつきて敗北したこと等が書かれており、その結果、ポルトガル船の来港を禁じて鎖国が完成したとされています。
単なる歴史上の事実としてはそうなのでしょうが、当然、その時代を生きた人には、それぞれドラマがあったわけです。それをこのような長編小説に仕立て上げる作者の力量は、流石と言うほかありません。
全体は大きく1部、2部と分かれ、一カ所だけ過去に遡ってますが、細かく時系列に並んでいて、その時代を生きた人々の生き様を順番にたどっていくことが出来ます。正直言うと、第1部の方は、少々もどかしい展開や表現がくどいなと感じるところもありました。これに対し第2部は、一転して戦中心のダイナミックな展開を見せてくれます。そしてその描写は、次第に作者自身の体制に対する反骨心というか、為政者に対する抑えきれない怒りというか、感情を爆発させて書いていることが、ヒシヒシと感じられる筆使いになっていきます。「討伐軍の下郎ども」などという表現にもそれは表れていますし、当然、読んでいるこちらも、立てこもる人々に肩入れをしていきます。
その一方で、戦争そのものに対する嫌悪感、違和感も強くて、「古来より戦というものは、一人歩きを始め、当初の意義などどこかへ消え失せて、結局は自国の民を大量に殺すだけのこと。」と言う様な記述などは、現在の戦争にも当てはまる作者の思いです。
島原の乱が題材ですが、カリスマ天草四郎は、あまり登場しません。というか、物語上もさほど重要な位置を占めていません。逆にコレが、作品にリアル感を与えている様な気がします。主人公は別にいるわけですが、どなたかがレビューで指摘なさっている様に、もっと彼に力点を置いても良かったかもしれません。何しろ、もの凄く多くの登場人物が出てきますので、その人物を追っていくのも結構大変でした。 それにしても、この乱のそもそもの原因は、結局は貧困です。立て籠もる人々の願いが「人としてふさわしい死を迎えることにあった。」との表現は胸を打ちます。考えてみれば、シリアの内戦も、異常気象からの干ばつによる食糧不足と聞いていますし、世界中で起こっている紛争の大部分のきっかけは、貧困でしょう。本作品を過去の話とは単純に片付けられないものがありますね。
さて、物語としては、大団円の後、主人公は大阪にて開業するワケなのですが、なぜ大阪に出てきたのかは記述がありませんでした。そこは読者が考えてみようという事なのでしょうか?そこだけが少々気がかりではありますが、読みごたえたっぷりの、ずっしりとした作品でありました。続きを読む投稿日:2015.08.12
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長大な作品
同じ作者の「雷電本紀」の流れをくむ 政治・社会への怒り 絶望感を主題として打ち出した長大な作品である。一部と二部とでかなり雰囲気や緊迫感が異なるが、やはり激しい戦いの描写が凄まじい迫力を伝えてくる第二…部のほうが読み応えがあるかな。宗教そのものが持つ一種のいかがわしさもいくらか感じることができる。続きを読む
投稿日:2022.07.24
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