この作品のレビュー
平均 3.6 (35件のレビュー)
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”資生堂名誉会長 福原義春さんがこれまで出会った本を綴った一冊。紹介される書名の数に圧倒される。人はこんなにも本を読めるんだ!
<キーフレーズ>
・読書は人の生存にとっての必需品ではないが、人生の必…需品なのだ。(p2)
・いわゆる「書友」をたくさん持つことは人生にとっての財産になるのだ。(p3)
★自分の体質に合った本を見つけて、そこに書かれた思想や出来事を少しでも吸収しておけば、やがてそれが自分自身になって、ひとりでに発信できるように鳴るわけだ。
そう考えると私という人間は今まで読んだ本を編集してでき上がっているのかもしれない。(p41)
・情報は、情報が集積しただけでは、「雑学」の域を超えることはない。評論家で神戸女学院大学教授の内田樹先生はこうお書きになっている。
「(略)しかし教養は、『まだ知らないことにフライングする能力である』。」(『知に働けば蔵が建つ』文藝春秋)(p53)
・人間は案外にもろく、何回も愚かなことを繰り返してしまう生き物だからこそ、相も変わらぬ過ちを犯し続けている。だからこそ人間の歴史を描いた司馬遷『史記』などを頭の隅に入れておく必要があると思う。(p53)
・1992年、資生堂が創業百二十年の年を迎えるにあたって(中略)ジャン・ジオノの『木を植えた人』(こぐま社)を全社員に配ることになったのである。(p78)
★そういわれた本の話を聞き捨てにしないことが大切なのである。いわれたら必ず買う。(中略)それでも自分の手元に取り寄せるのである。(p91)
#書友がもたらす読書の広がり=それぞれの世界で活躍している人から、その人が面白く読んだ本をちょっと聞き出すことに意味がある
・詩人の高橋順子さんが小学館から『風の名前』、『雨の名前』という本を出している。それによると、日本での風の名前は「そよかぜ」「はやて」のように2145もの名がつけられているのだ。(p159)
★「ラ・ロシュフコーの箴言は人間の真理です。ドラッカーは会社の真理です。ファインマンは人生の真理です。三冊は根底で共通なのです。」(p178)
#福原さんがブックフェア「三冊屋」でセット販売した本。買って読んでみよう
・ラ・ロシュフコー『ラ・ロシュフコー箴言集』
・ドラッカー『企業とはなにか』
・ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』”続きを読む投稿日:2019.08.15
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福原 義春
資生堂名誉会長
1931年東京生まれ。1953年慶應義塾大学経済学部卒業。同年株式会社資生堂に入社。1987年同社代表取締役社長、1997年代表取締役会長を歴任。2001年より…名誉会長。資生堂のグローバル展開を導くと同時に、文化芸術の振興にも積極的に取り組み、財界きっての読書家としても知られる。現在、東京都写真美術館名誉館長、企業メセナ協議会名誉会長、文字・活字文化推進機構会長など多くの公職に従事しつつ、幅広い分野で執筆活動も行っている。著書に、『道しるべをさがして』(朝日新聞出版)、『美』(PHP研究所)、『本よむ幸せ』(求龍堂)などがある。
私は、仕事で行き詰まり、どうしても結論を出せなくて考えあぐねて いた時に、ふと趣味の世界の考え方を当てはめてみたら、霧が晴れるように 答えを見出せたりしたことがあった。それも一度や二度ではなかったのであ 不思議な気もするが、物事を突き詰めようとしていくと、たとえジャンル は違っても同じ本質に行きつくということなのかもしれない。さまざまな入 り口から考えていける、その力は予想以上に大きいものだと思う。本の食わ ず嫌いをするな、といいたいのは若い企業人に対してだけではない。年齢を 重ねるにつれて、人は、自分が好むもの、共感するもの、理解できるものへ と偏っていくものだ。あたらしい考え方が次第に入らなくなっていくと、判 断る仕事の内容も柔軟さに欠けてくることは間違いない。 それを救ってくれるのが、あたらしい刺激をくれる本であると思う。
「図書館は宇宙に例えられますよね。本は散らばった星ですよ。図書館での 読書体験は、この星と星とをつないで星座を作ることだと思う。ある少年が 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読んだとしましょう。感動して、もっと何か を追求したくなる。ガモフの宇宙物理の本を読んでみる。賢治の伝記を読み、 前年樺太に行ったことを知ったら、そこに樺太鉄道のイメージが重なってい ることを想像して樺太の歴史を調べるかもしれない。あるいは古生物学や鉱物の棚に行ってみるのもいい。ある人はオリオンを描き、別の人は カシオペアを描く。それを最低限支えてくれる空間であってもらいたい」(『朝日新聞』 2009年6月20日)続きを読む投稿日:2023.07.18
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