公正的戦闘規範
藤井 太洋
ハヤカワ文庫JA
近未来SFの俊英が描く、最新短編集! お勧めっ!
電子書籍で人気を博して実際に本の出るSF作家になったという、まるでSFの中の話しのような経緯でデビューした近未来SFの俊英、藤井太洋さんの最新短編集。 5つのエピソードが載っていて、インターネットがなくなって、閉じたトゥルーネットのある世界のコンピュータに生まれた知性を描く『コラボレーション』。 量子コンピューティングをテーマに、近未来のフィリピンで展開される『常夏の夜』。 軍用ドローンがブンブン飛んで楽しいです。上海のゲーム会社を舞台に、主人公が昔持っていた中国が国策的に作っていたスマホHW7に入っていたアプリについて意外な秘密が明かされていく『公正的戦闘規範』。 今のトランプ政権下では笑うに笑えない、銃が持ててて、白人優位で、テクノロジーに肯定的でないもうひとつのアメリカが独立している未来を描く『第二内戦』。 そして、一番SFっぽい、木星系の資源採掘に携わる宇宙労働者の話『軌道の輪』。 どの話も、実現性がロジカルに考えられていて、最新のIT業界などに詳しい藤井さんならではの作品。SF好きは必読!
1投稿日: 2017.09.08竜馬がゆく(一)
司馬遼太郎
文春文庫
新撰組側からの近江屋事件と、竜馬側からの近江屋事件
私は、HNKの大河ドラマ「八重の桜」から明治維新モノに入って、浅田次郎の明治維新もの3部作や、司馬遼太郎の「萌えよ剣」と、幕府側というか、新撰組、会津側から明治維新の物語を読んでいたので(普通と逆?)、初めて薩長側からの話を読んで非常に興味深かった。 最後の巻では、まぁ、当然有名な近江屋事件で龍馬は世を去るワケですが、この物語では、そこをどう描くのか非常に気になりました。常に飄々として、諧謔に富み、剣の達人である龍馬が死ぬとは思えないストーリー運びだったからです。さて、本書で、近江屋事件はどう描かれるか、そこにどうやって至るのか……ぜひ、読んでみて下さい。
2投稿日: 2016.05.02燃えよ剣(上)
司馬遼太郎
文春文庫
土方歳三は時代のあだ花だったのか?
旧幕府のあまりにも過激な治安維持組織としてスタートし、結局のところ薩長の倒幕派と徹底的に対立し、新しい時代を立ち上げた明治政府と徹底して敵対した組織だった。 本書はその新撰組を一貫して土方歳三を中心に描いている。『信念』というものがあったわけではないのに、あまりにも戦争能力が高い戦屋としての側面と、女性に対して少年のように不器用な一面が描かれている。 本当にそういう人物だったのかは分からないが、池田屋から、鳥羽伏見、合津、箱館と戦い続ける土方歳三は、なぜ新時代樹立のための抵抗勢力であり続けたのか。そのエピソードの始めから終わりまでを追うことができる。 読み終わって思うのは、彼がいなかったら歴史はどう変わっていたのか? 新しい時代が早く来たのか? 彼がもっと聡明な志を持つ男に仕えられる位置にいたらどうなっていたか? だ。旧軍の元帥とかになっていたのだろうか?
2投稿日: 2016.03.11火花
又吉直樹
文春文庫
未来がどうなるかわからないままに、朝方のラーメン屋で先輩の説教とか聞かされたよね
たまたま、Reader Storeのポイントが期限が切れそうだったので、芥川賞受賞作品ということで読んでみた。 簡単にいうと、若い売れない芸人の『スパークスの徳永』が『あほんだらの神谷』に出会って慕い続けるっていう話。 読み始め、やたら一文が長い文体が気になったけど、それは最初の方だけだったので、ただ単に又吉さんが本当に文章を書き慣れなかっただけの話なのだろう。 『神谷』は天才芸人かも知れないって徳永は思っているけど、いわゆる偏り過ぎただけの人で、全然売れないし、評価されないし、女の人にぶらさがって生きてるし、なのに虚勢張って後輩の徳永にメシ奢ったり、借金がどんどん嵩んでいったり、どんどん後輩に追い越されていったりする。そして、次第に若干、より壊れていく。 『徳永』は、神谷より少し真っ当、少し売れたりするけど、結局お笑いでメシを食っていくほどのことはできず、現実に引き戻されていく。 酔いつぶれて神谷と吉祥寺の夜の道をを延々と歩くところとか、なんか若い人独得の閉塞感というか、未来の見えない感じとか、ダメな先輩の独善に振り回される感じとか、ああ、あるある……っていう感じ。自分の若かった頃とか、たしかに思い出した。未来がどうなるかわからないままに、朝方のラーメン屋で先輩の説教とか聞かされたよね……。 思いの外面白かった。
6投稿日: 2015.09.27赤猫異聞(新潮文庫)
浅田次郎
新潮文庫
複数人の語りで描く『解き放ち』の多面性と、衝撃の結末
相変わらず面白かったですが、浅田次郎作品の中でもこのプロットの面白さは出色の出来。長い江戸時代が終わって、開明な世の中に移る直前の、まさにどさくさ紛れのストーリー。浅田次郎ファンなら必読!
4投稿日: 2015.09.15霞町物語
浅田次郎
講談社文庫
浅田次郎さんらしい秀作
戦後、高度経済成長期東京の青春時代。 刹那に生きる若者の時代と、去りゆく頑なな、しかししっかりした時代の矜持として、写真館を営んだ祖父が描かれる。 青春がどんな時代だったかは、振り返ってこそわかるんだなぁ……と思う。
3投稿日: 2015.09.06グイン・サーガ131 パロの暗黒
五代ゆう,天狼プロダクション
ハヤカワ文庫JA
とにかく読んでみよう!
高校時代から30年に渡って読んできたグイン・サーガ。栗本薫さん逝去で、続きが読めなくなったことは誰にとっても悲しいこと。 他の人が書いた続編が読みたいかどうかは、ファンなればこそ葛藤の激しいところだと思う。正直、どんなに上手く栗本さん風に書いてあったとしても、いや似ていれば似ているほど「こんなハズはない!」という思いも涌いてくるに違いないでしょう。 続編を書く事になった五代ゆう氏と、宵野ゆめ氏にとっても、猛烈なプレッシャーと、多分ネットを通じての猛烈な罵詈雑言さえも覚悟して書き始められたに違いありません。 私も、迷いながら読み始めた「非栗本グイン」の1冊目ですが、私的結論としては「この冒険についていこう」です。 文体の違いは私的には許容範囲です。「栗本さんはこう書かない!」と思う部分はありますが、それも「慣れなきゃ」って思える範囲です。 僕だったら「最初の数冊は違和感ないように、辺境から始めて、あまり大きなストーリーの展開はなく……」と思ったと思います。だって、『栗本グイン』だって、グインの記憶喪失のあたりはかなりのんべんだらりと旅を続けてたじゃないですか(失礼)。ですが、この『五代グイン』の一冊目は、中盤からは、こっちがビビるぐらいの怒濤の展開です。 そして、それが、なかなか展開しなくてじれったかった『栗本グイン』とはまた違った爽快さも感じさせてくれます。このへんの話は、五代氏によるあとがきでも多少謎解きされるのですが、私はそれで多少納得しました。 五代グインがいい、宵野グインがいいなんていう論争も今後巻き起こるのでしょうけど、それも彼らは承知の上なのでしょう。 ともかく、ヴァレリウスやマリウス、リンダたちのいる世界に帰ってこられたことをうれしく思います。五代さん、宵野さん、がんばって下さい!
3投稿日: 2014.06.16終わらざる夏 上
浅田次郎
集英社文庫
大戦末期、『赤紙』から始まるいくつかの意外な物語
大戦末期の『赤紙』といえば、召集令状。 赤紙が届くと母は泣き崩れ、周囲は「お国のために!」と万歳三唱で送り出すというイメージだが、そんな単純なものではなかったことを本書は教えてくれる。 『動員命令』として、何万人の人の命を死地に向かわせる人の思い。それを各県、各地区に割り振る人の思い。そして、その数字を、実際の個人にふりわける人の苦痛。 そうやって届けられた召集令状を持って、戦地に赴く人々のストーリー。招集年限ギリギリ、45歳で招集を受けた英米文学の翻訳家。若き医学生。そして満州で戦って英雄となりつつも指を失い、乱暴者として故郷に居場所を失った男。 彼らは出会い、そして敗色濃厚で多くの人が死んで行った南方の戦線ではなく、意外なところに連れて行かれる……。 これもまた戦争の一面。終らざる夏は、70年近くを経た今なお続いているのかもしれない。
3投稿日: 2013.11.30flick! (2013年10月号)
エイ出版社
マイナビ出版
あなたの気になるガジェットの評価は?
(この本の編集者です) 気になる最新のガジェットを、ライバル製品と比較して評価しています。Nike Fuelbandなどのアクティビティロガーや、モバイルWi-Fiルーター、ヘッドフォンなど。デジタルデバイスと紙の手帳などの異種格闘技もあり。 BookListaのBOOKFESTA 2013 summerのレポートも掲載しています。
2投稿日: 2013.11.30flick! (2013年11月号)
エイ出版社
マイナビ出版
iPhone 5s/5cの購入を検討されている方に
(この本の編集者です) iPhone 5s/5cの購入を検討されている方に、iPhone 5s/5cの性能、使い心地のすべてのをご理解いただくために、巻頭特集を大増ページして作りました(電子雑誌なので、ページはある意味紙代関係なくいくらでも増やせます。(デザイナー、ライター、カメラマンと人件費は猛烈に増えますが))。 その他にも、進化したソニーReader Storeのご紹介、Vaio Tap 11、Leap Motion Contorollerなど、ガジェット好きの方のための新しい製品、サービスが満載です。
1投稿日: 2013.11.30