草壁さんのレビュー
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マズ飯エルフと遊牧暮らし(1)
大間九郎, ワタナベタカシ / 少年マガジンエッジ
作画の方が気の毒
6
原作未読。現代人の主人公が異世界に転生、料理の概念が殆ど存在しない世界で、料理を武器に世渡りするお話。
最初に言っておくけど絵はとても良い。とても好み。
しかしストーリーの中に深刻に首をひねる…点がいくつも見受けられてついていけない。
ちなみにそれらはオリジナル展開になってない限り、漫画(作画)の問題ではなくて、原作のクオリティの問題。
割と肉感的なヒロインエルフちゃん可愛いから全部許す派の人は気にしなくていいよ!
問題1.歪なレシピ
エルフの里のレシピはクソ不味い煮込み一種類のみ。レシピの数がどれほどあるのか判らないけど、エルフの里以外の料理も不味いらしいので、世界的メシマズ状態なのはほぼ間違いない。
食材を無駄にすると死罪という禁忌はあるけど、いくらなんでも食べるのが苦痛レベルの食事を摂り続ける理由としては弱い。みんな美味しいものが食べたいのに、ちょっといい匂いがしたときに食べてみるとか(肉の欠片が火に落ちることぐらいたまにはあるだろう)、組み合わせ方を変えてみるとか(少なくとも野菜スープは禁忌に触れずに作れる)、そういう原始レベルの気付きすらないもんかね?
あとこの禁忌、一話目以降ほぼ空気。それもあって尚更説得力も存在感もない。
問題2.パン
この世界、何故か小麦粉を使って作られたパンだけは存在する。ただし「自分で作らなくていい(≒作れない)食べ物で嗜好品」という扱い。
主人公が美味しい飯を作ったらすぐ金にしようとする商人すらいるのに、誰も流通元や製造方法を気にする様子が全くない(ほのめかしすらない)のは違和感しかない。禁忌に触れる食い物かどうかすら気にしないの? だったら製造方法非公開で作った料理はふつーに美味しくいただけるんじゃない? 禁忌とか気にしないで食堂存在できるわコレ。
問題3.小麦粉
問題1に出てくるレシピでは小麦粉が使われている。汁に粉をそのままぶち込むだけだけど。
野菜を細切れにするのすら禁忌に触れることを危惧される文化なのに、何故小麦だけは挽いてしまうのか? その理由は一切語られない。特別小麦粉でならなきゃならない理由がないのに、麦をそのまま入れて麦粥にしない理由ってある?
そして小麦粉があればあったでパンを作る発想を誰も持たないのが変。雨で濡れた小麦粉を、ペーストのまま火で炙って乾かすだけで原始的パンになるんだよ?
問題4.商人のあたまがおかしい
流通は需要と供給のバランスで成り立っている。みんな社会科や政治経済で習ったね。
チーズを流通させた商人は、生産量すら確かめずにチーズを売る約束をしまくっている。しかも発注数から考えると、商人は需要がめちゃめちゃある(=販売する数を絞って値を釣り上げるべき)チーズを、世間の皆さまが買えるお値打ち価格で売ろうとしたようだ。
お前、ヒツジ的な生き物は供給が多過ぎるから安くしか買えないって言ってた以上は需要と供給の話判ってるんだよね?
細かいツッコミどころは山盛りあるけど、大きいのはこのあたり。
美味しさの感覚はあるのに原始的な料理法すら思いつかない人々。
料理絡みの内容に限り流通などの関連事項について完全に思考停止する人々。
美味しいご飯や食材は超レアな宝のはずなのに、なぜか現実の現代人感覚の価値としてしか扱えない人々。
これらの描写から、主人公を活躍させる舞台を作るという目的だけのために、現実程度には常識的な異世界キャラから、料理についてだけハイパー無能化させるという雑な方法で、無理矢理世界から料理を切り取ったことが見えてしまう。
普通はその切り口を説得力ある理由で埋めるものだろう。そんなストーリー作りであたりまえのことができないってのは、いくらなんでも原作者の底が浅い。
2巻は買わないなあコレ。作画はとても好きなんだけど、ストーリーがアレ過ぎて差し引きマイナス状態です。
え、お前なんでコレ買ったのかって?
表紙買いだよ! 続きを読む投稿日:2018.05.02
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女王陛下の異世界戦略 1
第616特別情報大隊, 巖本英利 / レジェンドノベルス
割と基本がなってない
2
このレーベル、割と文章の構成がきっちりしてたり、ストーリーの破綻が少なかったりする。ので、安心して2巻までまとめて買って、一応読み切った上で言うけどなかなか酷い。他がしっかりしているせいで余計酷く感じ…る。
主人公は、「女王以外は(あるいは女王も)個としての意思や感情を持たず、他の種族は全て餌として消費し、群れ全体の勢力拡大を目指す」アラクネアという種族の女王に収まる。が、この基本設定がいきなり破綻する。
序盤から登場する、女王を護る女騎士的な立ち位置のアラクネア、めちゃめちゃ感情豊かである。主人公に褒められると顔を赤くして喜び、主人公がちょっと他のキャラと仲良くすると涙目で拗ね、主人公が死にかけるとボロ泣きするのである。
主人公が訳あり異世界転生している(というか、魂が悪魔的な存在に囚われてアラクネアの女王にされている?)ようなので、その絡みで感情豊かになった理由があるのかも知れないが、今のところその結びつきを匂わせたりしていない(少なくとも私は読み取れなかった)ため、多分設定が破綻してるだけである。
また、ストーリーは主人公の一人称視点で語られるが、これも飛躍が多々あり、読者の心理との乖離が大きい。
例えば主人公が最初に訪れた人里を滅ぼされ、「この村は気に入っていたのに」と怒りを顕にするのだが、作中描写からはそんなに気に入っていたように見えない。文中からの印象では、精々収入源+人間らしい食事ができる場所、便利なところくらいの認識では?
あるいは2巻で、ある町でギルドに所属する話になった際、主人公が「こういうのは面倒なだけ」と胸中で語った直後、ギルドに入ってしまう。これ、比喩ではなくて本当に直後。面倒だけど入らざるを得ないという心情描写が全く無いので、なんで面倒なだけなのに入りましたのん…?となる。
上記の要素がストーリーへの没入感を強烈に妨げる上に、普通に文章力が足りてなかったりするので、特徴的なターム(「泣いて、泣いて、泣いた」みたいな表現がちょこちょこ出てくる)や、格好良い言い回しがものすごく上滑りしている。
あと、主人公はリアルタイム戦略ゲームでかなり強く、その戦略を活かしているらしいのだけど、基本敵が無能だったり弱かったりするだけで、へー、と思うような戦術は全然無い。アラクネアが種として強いので、それをぶん回すパワーゲームばっかりしてるように見える。
編集さん、ちゃんと仕事してる? この価格でこのクオリティは結構ヤバイよ?
表紙の絵はめちゃめちゃ良いんだけどね…絵師の無駄遣いもいいところである。 続きを読む投稿日:2019.07.30
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ダンジョン飯 12巻
九井諒子 / HARTA COMIX
欲望がだだ漏れ
0
11巻時点で、次で終わりか…?と思ったものの、まだもう少し続くみたい。
カナリアに対し、今までライオスと関わった人々がライオスのことを語るシーンで、みんな料理の話になってしまうのは、まあうんはい…そ…れはそうですよね…。
そして本巻締めの台詞は、1巻でみたあの台詞。いや、それ限度があるだろ!? という気持ちと、いや、でもこの台詞しかない! という気持ちと、いや、この場面でそれをいうか!?という面白さで、思わず笑ってしてしまう。
終着点は見えつつあるけど、最後まで楽しい旅を続けてほしい。 続きを読む投稿日:2022.08.12