つぶあんさんのレビュー
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82
このユーザーのレビュー
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邂逅(かいこう)の森
熊谷達也 / 文藝春秋
動物と人間との闘い、プラスα
6
マタギの話ですが、主人公にいろいろと起きる出来事やクマとの駆け引き、たまりません!
まるで映像のように次々と浮かび上がるシーンが郷愁を誘います。また、最後のクマとの壮絶な闘いは手に汗握ります。人間ド…ラマでもあり、明治以降、近代日本の世俗、風俗、庶民(というより貧しい暮らしを強いられた人たち)の生活を垣間見れます。しかしながら、マタギたちは誇りに満ちていて、クマ以外にも自然を敬い、生き生きと描かれています。
動物と人間との格闘を描く小説(←これが私としては好きなジャンルで・・・)はかなりありますが、久々に「オススメ!」と言える一冊です。是非読んでみてください!私は3部作でもある本作品以外の2作品(「氷結の森」、「相剋の森」)を読もうと思っています。 続きを読む投稿日:2015.04.10
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土漠の花
月村了衛 / 幻冬舎文庫
今だからこそ読んでほしい
5
集団的自衛権やら国会で審議されている最中、これを読みました。今も継続中ですが。どうなるのでしょうね。
これ読むと、(もちろん小説ですが)こんなことも自衛隊派遣において、起こりうるかもしれないと考えさ…せられる話です。
銃撃戦の緊迫感、土漠の暑さ、自然の驚異など、まるでハリウッドの戦争映画を観ているようです。一気に読めます。今だからこそ読んでほしい一冊です。 続きを読む投稿日:2015.09.08
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わたしを離さないで Never Let Me Go
カズオ・イシグロ, 土屋政雄 / ハヤカワepi文庫
こんなことがもしもあったら
5
実は映画、観ちゃいました。映画もすごく良かったので、小説も是非読みたくなって。
さすがカズオ・イシグロです。「日の名残り」然り、なんともいえない情緒があります。イギリスならではのどんよりとした空、荒…涼とした田園風景、石造りの建物、寂しげな海岸、などなど。読み進んでいくうちにどんどん頭の中でフィルムが回っていくよう。
重要なストーリーですが、こんなことがあったら今の若者は自殺してしまうんじゃないか?と思えるようなあり得ない話です。少しSFチックで、現実的に言えば、臓器提供の倫理感の話でもあり。。。将来、生きていく目的も見いだせない若者が、それでももがき苦しみながら人間らしく生きようとする姿に心打たれます。普通に成長して、恋して結婚して、子どもを産み育み・・・と少しでも幸せな人生を送ろうとする。とても切ない話です。
映画がかなり良かったので、両方おススメです。どちらが先か・・・うーん、小説でしょう。 続きを読む投稿日:2013.09.25
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とんび
重松清 / 角川文庫
泣いたー!
4
不器用でマジメで頑固で照れ屋で・・・。いそうでいない一本気な父親。素直で思いやりがあって明るく賢い息子。
父親と息子二人の成長のお話です。息子がまだ幼いころに事故で妻を失い、でも悲しみに暮れているば…かりではなく子育てに精をだす父と、その気持ちに呼応するようにみんなに愛され、スクスク育っていく息子。2人だけの貧しくも朗らかな家庭。息子の幼少から思春期、巣立ち、そして結婚とそれぞれの過程で、ケンカもしながら葛藤しつつもお互いを理解し合い敬う姿が印象的。また二人を見守る周囲の家族のようなあったかーい愛情がまた涙を誘う。スナックの年上ママ、近くの寺の住職とその息子である幼馴染の住職跡取りとその妻、父親の会社の同僚、上司などなど。恐らくこの息子ほどイイ子ってなかなかいないだろうなぁ(そこだけが今一つ人間臭くないのでので星4つ。ま、小説なので構わないけど)。
しかし、読むたびに泣いた泣いた。寝る前に読み、何度となく枕を濡らした。ドラマは観ていないけど、純粋に小説で泣けた。世の父親、母親問わず、じーんと感動したい人、子育てに悩んでる人、ただ本が好きな人、誰かに叱ってもらいたいとか愛情に飢えてる人、誰でも読めるお話。 続きを読む投稿日:2014.04.03
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隣人 新装版
永井するみ / 双葉文庫
女性向け、かなり辛口スパイスの効いた短編集
4
表題作もほかの短編も「え?」って意表をつく結末。もしかしたら私たちの日常に潜んでいるかもしれない、人間のダークサイドを炙り出している。
「隣人」なるほど!そうきたか!一見、子供はいないが幸せそうな夫…婦。だが、実は心の奥深いところでは・・・。世間のダンナ様方、お気をつけて・・・。
「伴走者」これもよかった。この結末も「え?!」って意表をつく。男と女、一体相手は何を考えてるのかわからなくなる。
あまりまともなレビューになってなくてすみません。ネタバレしちゃうと困るので。男性よりも女性にオススメです。ムフフっ!サラッと読めちゃいます。 続きを読む投稿日:2016.11.08
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ちょんまげぷりん 2
荒木源 / 小学館文庫
今度は友也が・・・
4
今度は安兵衛でなく、中学生に成長した友也が江戸時代へ。
現代ではチャラくて悪事ばかり働いていた友也。素直だった子供時代から反抗期まっただ中の中学生が、江戸時代にタイムスリップし、安兵衛を探しながら歌…舞伎の世界の女形になったり、英語の教科書を持っていたことに因り囚われ拷問直前までの身になったり。偶然囚われられていた安兵衛との再会もつかの間、島流しとなってしまう・・・。
友也が苦労を一つ乗り越えるたびに段々と逞しく成長していく姿がいい。ストーリーとしては「1」のほうが新鮮味もあり面白かったが、「2」も読みごたえあり。是非「1」から読むことをおススメします。
続きを読む投稿日:2014.04.15