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kibitzerさんのレビュー
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  • 疫病神(新潮文庫)

    疫病神(新潮文庫)

    黒川博行

    新潮文庫

    ヘタレ探偵(建設コンサルタント)とハードボイルド相棒(ヤクザ)

    「建設コンサルタント」の二宮と、武闘派かつ頭脳派ヤクザの桑原が、儲け話をめぐって毎度大暴れするシリーズの第1弾。うだつの上がらない中年男・二宮は、肩書きは「建設コンサルタント」とは言うものの、解体工事等に絡んで地元ヤクザとゼネコンの仲介(サバキ)を生業とする、しがない個人事業主。いわば「私立探偵」の役回りであるが、呑気・怠惰・小心で常に事務所の家賃の工面にも困っており、たまに母親にも金を無心するヘタレである。サバキが縁で関わりをもったヤクザ・桑原は、ケンカっ早く(しかも超強い)男前、金儲けにも鼻が利くインテリヤクザでもある。二宮が欲を出して請け負った仕事に桑原が鼻をつっこみ、依頼人やら周囲の人間と騙し騙され、殴り殴られで話が展開していく。二宮と桑原の絶妙の掛け合いで関西ノリ(TVのお笑いとは少し違います)で事件が進んでいき、騙しあい・金の取り合いがメインで殺人等は前面に出てこないことで、「上方落語」を現代ドラマに置換えたような仕上りになっている。すっとぼけた二宮が「長い物には巻かれろ」式でひどい目に遭いつつもピンチを乗り切り、たまに父親譲りの「男気」をみせるのが毎回の山場か。相棒である桑原が男でも惚れそうなぐらい魅力的で、主人公が二人いるような感を持つのが、飽きさせない要因かもしれない。桑原を中心にヤクザの面々も出てくるが、描写にリアリティがあり、その業界の実情を垣間見たような気分にさせてくれる。個人的には第4作の「螻蛄」が一番のお気に入りだが、第1作のご祝儀も入れて星5つ。

    0
    投稿日: 2016.12.01
  • 新装版 ハゲタカ(上)

    新装版 ハゲタカ(上)

    真山仁

    講談社文庫

    ダースヴェイダー、レクター博士、鷲津

    才知に富み、日本企業をキリキリ舞させるハゲタカファンドの中心人物・鷲津が、企業買収を舞台に経済バトルを展開するストーリー。全盛期のホリエモンを彷彿させるダークサイドのヒーロー鷲津、善き企業人たらんとする芝野の攻防に引き込まれて早いペースで読み進んでしまった。本来であれば悪役の鷲津だが、日本大企業の閉鎖性、組織第一主義も相まって、本当に正しいのは誰か、を深く考えてしまう。各キャラクターも魅力的。

    3
    投稿日: 2014.11.16
  • 終末のフール

    終末のフール

    伊坂幸太郎

    集英社文庫

    伊坂的な一般人俯瞰、少しじんわりするストーリー

    世界の終末を前に人間(一般人)は何を考え、どう行動するのか、という伊坂幸太郎的に少し上から見下ろした連作。短編連作だけど、各話、各登場人物が少しずつリンクしており、一冊通して楽しめる。作者の意図どうり笑ってしまうドタバタは控えめで、少しじんわりとさせられる作品。星4つでもいいけど、伊坂幸太郎だからあえて星3つで。ハラハラドキドキの長編の箸休めに最適、といっては失礼か。

    0
    投稿日: 2014.11.16
  • Heaven?〔新装版〕(1)

    Heaven?〔新装版〕(1)

    佐々木倫子

    ビッグスピリッツ

    理不尽VS常識、少しボケ

    理不尽で自己チュー、でもどこか可愛げのあるオーナーと、常識人だが理知的過ぎてサービス業に向かない伊賀君が、思い付きでオープンしたフレンチレストランを舞台に展開するドタバタ。オーナーと伊賀君の掛け合いは、「動物のお医者さん」における漆原教授とハム輝を見るようだ。佐々木作品のスタンダードで、細部まで手を抜かない描写と一話完結の謎解きは安心して読める。個人的には佐々木作品でベスト。脇を固めるキャラの作りも秀逸。もっと続いて欲しかったなあ。

    1
    投稿日: 2014.11.16
  • 水車館の殺人〈新装改訂版〉

    水車館の殺人〈新装改訂版〉

    綾辻行人

    講談社文庫

    「新本格」ってこういうことか

    ディーヴァーだのエルロイだの今野敏だのを読む人間には、ミステリーファンのいう「新本格」って何だと思っていた。本作を読んで「そういうことか」 と腑に落ちた。執事、深窓の美少女、謎の主人とか探偵役が登場する本作は、クイーンとかルブランとか読んだことない、今さら読んでも感情移入できない人には「古典」の役割を果たすでしょう。ただし、一人とか二人とかの犠牲者の犯人を、推理で追い詰めていくというスタイルは、現代のミステリに慣れた人間には刺激が少ないと感じられるかも。作者に挑戦する、くらいのミステリファンにはたまらない、もしかしたら読者を選ぶスタイルなのかも知れない。

    0
    投稿日: 2014.11.15
  • 機動警察パトレイバー(1)

    機動警察パトレイバー(1)

    ゆうきまさみ

    少年サンデー

    しまった。面白かったのか。

    気にはなっていたけど、アニメも漫画も今まで見たことなかった。20年以上も前の作品だけど、十分楽しめる。若い頃に読んでいたら相当ハマったなあ。今読んでも面白いのは、やはりメカの細部をリアルに設定しているためか。個人的には、肩とかの可動部分をキャンバスで被っている(?)のが、実物の戦車ぽくて好き。

    0
    投稿日: 2014.11.15
  • 谷仮面 完全版 1巻

    谷仮面 完全版 1巻

    柴田ヨクサル

    ヤングアニマル

    説明しづらいシュールな笑い

    ナゼか仮面をつけていて、ナゼか人間離れした怪力を持つ、高校生・谷の引き起こすドタバタな日常。仮面・怪力にもかかわらず、自分では普通であるつもりの谷と、周囲のキャラクターとのカラミはシュールで説明しづらい笑いを生み出す。ハチワンダイバー、エアマスターのボケ部分に特化したような作風で、ハマる人はハマるが、そうでない人は何が面白いのかよく分からないかも。また、無駄に巨大な一コマの使い方は、山田芳裕を想起させる。作者のデビュー作なので、初期(完全版1~2巻)と、不良校統一バトル(完全版3~6巻)では、マンガの作りのこなれ方に結構差がある。1巻目で笑えれば、残り5巻も大いに楽しめるだろう。

    0
    投稿日: 2014.11.11
  • 天使と悪魔(上中下合本版)

    天使と悪魔(上中下合本版)

    ダン・ブラウン,越前敏弥

    角川書店単行本

    ドンデン返し具合が絶妙

    「ダ・ヴィンチ・コード」でお馴染みのラングドン教授が、引っ張り回され、災難に遭いながらもその知識と閃きで難問を解決していく本作。スピード感、アクションと知的推理の配分が個人的にハマった。安心して「ページをめくらされる」感にひたれる良いフィクションだと思う。またキリスト教や、ヨーロッパ中世についての知識が読み進むうちに深まる。私は体系的にキリスト教のおさらいをしたくなった(多分しないけど)。「ダ・ヴィンチ・コード」を読んでいても読まなくても問題なし。ドンデン返しが激し過ぎないところも、ディーバー等最近のミステリに慣れた読者には安心できるところか。

    3
    投稿日: 2014.11.10
  • 下天は夢か 一

    下天は夢か 一

    津本陽

    角川文庫

    信長の若者時代が読んでいて楽しい

    本作は織田信長の生涯(ただし幼少時除く)を、たっぷり4冊分のボリュームで楽しめる。父・信秀の死により同族相争う尾張統一の苦闘から、美濃を併呑するまでの若者時代が特に丁寧に描写されていて、嬉しい。私は本作と相性が良かったらしく(特に文章にも勢いのある1~2巻)、今でも何回も読み返してしまう。尾張弁(?)も本作にうまくハマっている。

    3
    投稿日: 2014.11.07
  • 機動戦士ガンダム THE ORIGIN(1)

    機動戦士ガンダム THE ORIGIN(1)

    安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男

    角川コミックス・エース

    ちょっと辟易気味のリアル1stガンダム世代こそ

    巷に「ガンダム」が氾濫しててなんだかな、と思うし、1st以降の世界はよく知らないし。CATVで1stの再放送見ても、「こんなもんだったかな」と思う、ピンポイントにリアルな1stガンダムファンは、これだけは押さえておいていいかも。1コマごとに当時の興奮が甦ります。噛み締めるように。

    1
    投稿日: 2014.06.28