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三森雪さんのレビュー
いいね!された数893
  • 娚の一生(1)

    娚の一生(1)

    西炯子

    月刊flowers

    かたい殻に守られた、柔らかな部分を暴くよう。

    恋愛という成分をアルコールランプの火にあてて、世間体や生き甲斐や「女の幸せ」を蒸発させたら残ったもの、なような、そうでもないような。 元来したたかな女の不器用さ、が繊細にゆるやかに描かれてます。かたい殻に守られた、柔らかな部分を暴くようで、見てはいけないものを見ちゃった気分。 超エリートなのに女としての不器用感満載なつぐみさんは、中二病的なこじらせ女子だよなぁ。自意識とプライドのせめぎ合いというか。あ、これは「つぐみさんの才色兼備と慎ましやかさって、女子力高めな愛されOLさんから全力で嫌われそう!」と穿って見ちゃう、その他女子的ひがみです。 そして海江田教授の存在は、ファンタジー過ぎて逆にリアルな女を浮き彫りにする空想上の生き物っぽい。男から見た、一角獣の乙女的な。

    5
    投稿日: 2014.07.27
  • 銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream

    銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream

    海原零

    集英社スーパーダッシュ文庫

    女子にだって恋愛より大事なものがある、のですよ男子諸君。

    佐々原史緒先生の「暴風ガールズファイト」もですが、"少女が恋愛以上にのめり込むものがある"シチュエーションが、真っ当に青春で好き。絵のポップな可愛さと、ジェットコースター系熱血スポ根具合の温度差が甚だしいです。あと、読んだ人には定番の表現ですが「フィギュアスケートを文字で魅せる小説としては最高峰」に私も完全同意。 強気と弱さを兼ね備えたタズサと、完全なるフォロー力を携えた幽霊ピートの掛け合いも絶好調に楽しかったり。日常とスケート本番直前での入れ替わる攻守とか強弱とか、何度萌えさすつもりなの、と再読のたびおののく。 タズサの毒舌高飛車っぷりと、結構シビアな環境が心臓に悪くて、導入は「あ、地雷?」感のある小説ですが、正直それはギミックなのでそのまま読み進めるがよろし。間違いないスポ根系鉄板の感動が待っています。でも☆5でないのは、単に2巻が至上だからです。

    3
    投稿日: 2014.07.25
  • 雨無村役場産業課兼観光係(1)

    雨無村役場産業課兼観光係(1)

    岩本ナオ

    月刊flowers

    「県庁おもてなし課」が売れるなら、これも再注目されて良い。

    地元の村役場にUターン就職することにした青年の、仕事と恋と郷土愛。 個人的にこの三角関係は新感覚過ぎる。2007年連載開始なので、むしろレトロ的懐古主義。普通の青年、ボンボンでイケメンなニート、世話焼きでとても良い子なぽっちゃり女子、の間にどうベクトルが向くのか、ぜひその目で確かめてほしいです。 Uターン就職して村役場に勤める、普通の青年な銀ちゃんが、郷土愛あふれるほんと良い子なんですよねー。東京の元カノのことをぐじぐじ悩みつつ恨みはしないし、飲んだくれおじさんたちを「何気にこの人たちは凄い」と認めたり。リアル銀ちゃん落ちてませんか、全力で拾いにいくのに!なレベル。 村を再愛したその瞬間がとても絵的に奇麗に描かれていて、私もこんな原風景を持ちたかったな、持ちたいな、と思ったり。田舎再生プロジェクト系マンガとして、絶対外せない1冊。

    4
    投稿日: 2014.07.25
  • Dear Emily...~da capo~ 1

    Dear Emily...~da capo~ 1

    瑚澄遊智

    電撃コミックジャパン

    古いフィルム映画のような、柔らかな絵と文字綴り。

    ヨーロッパのとある国、見知らぬ大都会でメイドとして働くことになった孤児院育ちの少女が出会う、街と人々。 無声の古いフィルム映画を見ているような錯覚にとらわれる絵と文字綴り。表紙の水彩画な雰囲気がそのまま、本編にも同じ風合いを残していて、物語を追わなくても人や建物の絵にうっとりします。そしてとにかく、女の子の髪型や衣装が可愛い。ほんとに可愛い。ゆるく波打つメイド服のフリルなんて、女の子の憧れそのままです。 あらすじと絵から想像する通りの優しい物語。純粋な少女が真っすぐに周囲を引っ掻き回して、街にとけ込んで愛されていく。斯くも美しき予定調和。この柔らかな世界観に、ネガティブなものなんていらないんです。 図書館で好きな画家の画集を繰るような、贅沢で心逸る体験です。

    8
    投稿日: 2014.07.23
  • おしゃべりは、朝ごはんのあとで。(1)

    おしゃべりは、朝ごはんのあとで。(1)

    秀良子

    やわらかスピリッツ

    絶対美味しい、旅ごはんde朝ごはん。

    びんぼう漫画家さんが自腹で挑む、 絶品朝ごはんをめぐる旅エッセイ。 ホテルモーニングも良いけど、ちょっと早起きして近くのカフェ飯とか、ベーカリーでパンを買って公園ブランチとか。それをあえて旅先でやるんです。パリとか京都とか名古屋とかハワイとかで。絶対おいしいに決まってる。 例えば京都の料亭で食べるお米味のおかゆ。もっちりとして程よい粒粒感、それだけでもお米本来の味わいが良いのに、一番だしにお醤油で味付けした葛あんを、とろっとかけて食べるんです。何それ絶対たべたい! 朝ごはんエッセイなのに旅心がついて、旅行サイトをのぞいちゃうファンタジー。

    8
    投稿日: 2014.07.22
  • [カラー改訂版]頭がよくなる「図解思考」の技術

    [カラー改訂版]頭がよくなる「図解思考」の技術

    永田豊志

    中経出版

    右脳(図)の記憶能力は左脳(テキスト)の約100万倍以上。

    コンサルタントの説くのビジネスモデルやフレームワークに憧れつつも挫折した人にそっと差し入れたい図解思考の本。 シンプルな「四角形と矢印」の基本の形をベースに、パターンと使用場面を増やしていく構成。理論→基本→応用→実践と段階を踏んでいて、図も豊富なので取っ付きやすい。 「複雑なことを複雑にしか伝えられないのは本質を理解していない証拠」と言い切る通り、図解だけでなく説明の文章もシンプルでスルッと読めます。 右脳(非言語)の記憶能力は左脳(言語)の約100万倍以上、なんて情報もあるので、図解思考・フレームワークに興味がある、以外でも、記憶術に興味がある人に一読の価値あり。

    12
    投稿日: 2014.07.21
  • Real Clothes 1

    Real Clothes 1

    槇村さとる

    YOU

    辛いけど、やっぱり仕事が好きな、レディたちへ。

    働くって楽しい。おしゃれするって楽しい。女でいるって最高に楽しい。 映像化されて何となく倦厭していた当時の自分は見る目がない。百貨店のふとん売り場でから花形婦人服売り場に異動となった販売員が、働くこと、着ること、女でいることを、悩んで進んで壁にぶつかって乗り越え、走り抜けていく話。百貨店を巡るお仕事漫画でもあります。 仕事って辛いから楽しいんだ、とか、流行でなく似合う服を探してるんだ、とか、初めて何かを「売った」時の喜びってこんなだった、とか。近すぎて忘れていたことに気づいて目が覚めたみたいな、そんな気持ちになります。

    1
    投稿日: 2014.07.21
  • Love,Hate,Love.

    Love,Hate,Love.

    ヤマシタトモコ

    FEEL YOUNG

    この恋を文字で表現するには、私の経験が足りなすぎる。

    バレエの夢を断念した28歳処女と52歳大学教授の恋。年の差ラブ!なんて叫びが許されない無菌空間的ピュアラブストーリーに、床ゴロゴロしたい。何これ。 無音字幕のモノクロ映画のような、静かで詩的ででもモダンな恋物語。ちょ、月曜職場に行ったら50代部長を男性としてみてしまいそうなくらい、知的でオトナな教授がカッコいい。ほんと何これ。 耳の奥で、バッハの無伴奏チェロが勝手BGM化するくらい、ゆるやかなベランダ越しの2人が、初々しくて可愛くてきゅん!てくる。恋の仕方を知らない女と、恋の仕方を忘れてた男の、探り探りの恋の始まり。ほんとにほんとに何これ。 好きすぎる。あとは嫌いになるしか残ってない。

    6
    投稿日: 2014.07.19
  • そこをなんとか 1巻

    そこをなんとか 1巻

    麻生みこと

    メロディ

    どこかほんわか、血みどろ遺産相続弁護。

    貧乏でキャバクラのバイトで稼ぎつつ、司法試験に受かった苦学生のらっこさん。ただしその年の司法試験では大量合格者が・・・というわけで、就職先が決まらず、キャバクラのお客さんだった所長さんの零細事務所の門を叩く、からの、らっこさん新米弁護士奮闘記。 底辺からの成り上がりぶりに反して、全くすれてないあっけらかんさが可愛いらっこさんの頑張りとちゃっかりに、ほわわんと和みます。そんならっこさんが出くわす事件もどこかのどかでほんわか。結婚詐欺や子供の親権争い、血みどろ遺産相続なんですが。

    3
    投稿日: 2014.07.19
  • HER

    HER

    ヤマシタトモコ

    FEEL COMICS

    この世で一番、可憐で獰猛なけものたち。

    ジャンプ的「友情・努力・勝利」とは対偶の、女の本音と不安と救い。女ならすべてでないけど必ずどこか刺さるところのある、不思議な6編オムニバス。 この「悲劇のヒロイン的な不幸を私は負っているけれど、あの子よりは幸せよね」感が可憐で獰猛なけもの的女子の生態を現していて、好きだなぁ。それでいてどろっとしすぎずレモンの清涼感があるから、読了後胃がもたれない。 職場で可愛いと評判のあの子を、若手女子社員が嫌い、キャリアな総合職女子が持て余し、ベテラン女性幹部が苦笑いする、あの空気感が楽しめます。や、これは是非に男性諸氏に読んでもらいたい系。

    4
    投稿日: 2014.07.19
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