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このユーザーのレビュー
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狭小邸宅
新庄耕 / 集英社文庫
妙にリアル
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この本に出てくるような、都会の狭小地に立つペンシルハウスである「狭小邸宅」に住んでいる自分。作者は何かのインタビューで、「奇妙な形のペンシルハウスには、人間の欲望や滑稽さ、むなしさが象徴されているよう…に思える」と答えていたけど、そのように指摘されると、そう自覚せざるを得ない。
その“象徴”が意味するところは、買う側だけでなく、売る側にも当てはまる。「狭小邸宅」にかかわる人を通じて、人間の「欲望や滑稽さ、むなしさ」を描いている。そんな感じの本。
不動産販売の実態と顧客との駆け引きも見所で、多少の誇張はあるにせよ、リアリティを感じる。だけど、よりリアリティを感じるのは、仕事を通じて変わってく主人公の心情。そして、成長していくかに思えた主人公は、最後に…。
スッキリする終わり方ではないけど、妙にリアル。多くのサラリーマンが、こういう感じを飲み込んで、ヨレヨレになりながらも生きている、と思う。だから、「あー、あるある、そういうこと」って、なんだか共感してしまった。スカッとする、痛快な本も好きだけど、こういう本も好き。 続きを読む投稿日:2014.01.18
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神の雫(1)
亜樹直, オキモト・シュウ / モーニング
“大人の『リンかけ』”
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ワインって、興味あるけど、何を飲んだら良いかよくわからん。ワインって、興味あるけど、酸っぱくてボトル1本飲めない。そんなこんなで、アルコールを飲み始めて20年間、ワインを敬遠していた自分。そんな自分を…ワインの世界に引き込むきっかけとなった本。
ワインっていうと、色々なうんちくとか、聞きなれない表現とかが鼻につくのも、ちょっと近寄りがたくなる理由のひとつだと思うけど、そこはマンガの良いところ。大げさな表現でも、マンガ世界の中では、すんなり受け入れられるから不思議。
ワインを飲んで、マンガのような気持ちになるのか、マンガで描かれている画が見えてくるのか、現実の世界で試したくなる。そして、飲んでみると、意外と酸っぱくなく、美味しかったりするから、いろいろなワインを飲んでみたくなる。
昔、『リングにかけろ』を読んで、パワーリストを買っちゃったとか、“ブーメランフック“とか“ローリングサンダー”とかの練習をしたというのと同じような気がする。自分にとって、この本は、“大人の『リンかけ』”ですな。
結局、この本の魅力って、ワインの魅力なんだろうけど、それを自分みたいな素人にも、上手く伝えることができているのだろうと思う。昔、マンガを読んで、ヒーローの技を試してみたことのある人は是非。ただし、未成年は、マンガは読んでもワインを試しちゃダメよ。 続きを読む投稿日:2014.01.02
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死ぬことと見つけたり(下)
隆慶一郎 / 新潮社
<死ぬことと見つけた>ことで学んだこと
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「死ぬ気になれば何でもできる」とは人生において、何度か聞かれさた言葉ではあるけれども、「死ぬ気になる」なんてことに現実味はない。しかし、過去、武士という人の中には、「死ぬ気になる」ことができた人がいた…らしい。
<所詮失うもののある方が負けなのである。失うべき何物も持たない死人の方には負けはないのだ。彼等は勝つことさえ望んではいない。勝っても負けても、やるべきことはやる。それだけのことだった。>
この物語で学んだことは、死ぬ気になれる人は最強であるということ、そして、何か事を為そうとする人は、死ぬ気にならなければならないということ。
後の部分は、筆者が亡くなったことによって、描き切られなかったような気がするけど、編集部が記した「結末の行方」でなんとなく知ることができる。<(略)わが身を投げて藩を救った。武士道とは、死ぬことと見つけたり--。> 最後まで描ききってもらいたかったけど、未完でも真髄は十分に伝わる、ような気がする。
死ぬ覚悟の重要性はわかった。後は、何のために、死ぬ覚悟を持って生きるかだけど、これがなかなかわからない、武士ではない、残念な自分を再確認。 続きを読む投稿日:2014.01.02
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ロズウェルなんか知らない
篠田節子 / 講談社文庫
読む価値大
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UFOで村おこしする物語。よそ者が来てひょんなことから村おこしが始まり、ある程度まで盛り上がったところで問題が発生。大きな挫折を経て、希望を感じさせるエンディング。定番とも言える流れだけど、ディテール…がしっかりしていることもあり、読みごたえがある。そして、「人間が生きるって、こういうことなのだろうなあ」と考えさせてくれる。自分にとっては、読む価値が大きかったエンタテインメント小説。 続きを読む
投稿日:2014.05.17
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黒い家
貴志祐介 / KADOKAWA
本当に怖いのは自分かも
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保険金殺人がテーマ。怖かった。面白かった。妖怪の類は出てこないけど、妖怪のような人間に主人公が襲われる後半は読むのが止まらなくなる。そしてなぜ怖いのか、を考えさせられた。妖怪の怖さの根本的な要因は自分…に理解できないものに対する不安だと思うけど、妖怪はありえないと思っているから、本当は怖くない。しかし、妖怪のような人間ならいるかもしれない。そして、自分の無意識の中には、妖怪になってしまうような要素があるのだ、と気付かされてしまう。あー、怖い。 続きを読む
投稿日:2014.05.23