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ゆういちさんのレビュー
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  • 「汚い」日本語講座(新潮新書)

    「汚い」日本語講座(新潮新書)

    金田一秀穂

    新潮新書

    「汚い」を考え、人類や生物の歴史に行き着く

    「汚い」は文化的で、人の使ったものを汚く思うことについて、日本人は、箸には潔癖で洗われていても人の箸を使う気にはならない、その代わり、他人の入った風呂の浴槽に平気で入れる。同じ食器でも、マイ箸はあっても、マイスプーンはない。言語的には「汚い」に近い「ばっちい」はとても古い。その考察は、20万年前に出現したホモ・サピエンスが5万年前に言語を使うようになり、地球を征服するに至ったという文化人類学にも行き着く。分かっているようで分かっていないこと、よく考えると不思議なことの話がたくさん。

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    投稿日: 2017.07.17
  • 一九八四年

    一九八四年

    ジョージ・オーウェル,新庄哲夫

    グーテンベルク21

    1984年はまだ大丈夫だったが…

    2016年トランプ政権誕生の現代は、ここに書かれた世界と多くが重なる。 真実は2つある、つまり自分の都合の良いように真実を作ってしまう「二重思考」など訳が分からないと思った概念も、読み進むうちに、トランプの言うalternative truthと同じだと分かる。 政治不信、無関心の後に、扇動政治があり、その先にはこんな世界が待っているかと思うと怖い。

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    投稿日: 2017.04.02
  • 沈黙

    沈黙

    遠藤周作

    新潮社

    キチジローをどう見るか

    キチジローは、キリシタンでありながら、何度でも踏み絵を踏み、それでも信仰を捨てず、司祭についていく。 ズルいとか、弱いとか、そう見るのは簡単だが、作者はそうは見ていないのだと思う。 司祭は言う「あのキチジローと私とにどれだけの違いがあると言うのでしょう。」 人間は、誰もがそれぞれの人生を、悩みながら苦しみながら、少しでも良かれと思って生きている、そのことを作者は大きな愛で包んでいる。 暖かい本である。

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    投稿日: 2017.02.24
  • 世界一ありふれた答え

    世界一ありふれた答え

    谷川直子

    河出書房新社

    ありふれた答え

    …みんな無表情で何かに耐えている。それを突然実感する。自分ひとりが世界一不幸だと思い込んで何も見ようとしていなかった… 著者自身の体験を元にしたストーリーのはずですが、こんなふうに鬱から抜けることもあるのでしょうか。自分の中に迷い込んでいるときは見えて来なかったが、その末に得た答えは世界一ありふれたものだった。

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    投稿日: 2017.02.18
  • 金田一家、日本語百年のひみつ

    金田一家、日本語百年のひみつ

    金田一秀穂

    朝日新書

    日本人だから知らない日本語のこと

    意中の彼に告白されて「超うれしいかも~」。 すでに告白されておきながら、その気分を味わっておきながら、うれしかったかどうかの判断が不確定であるということは、ふつう考えられない。意識障害が疑われる。 この解釈はいろいろに可能である。今まで知らなかった自分の意外な一面を発見できた喜びを表しているのだ。...本文より ユーモアや愛情、かつ、学者としての冷静な考察にあふれている。 日本人だから身体で自然に覚えてしまった日本語の、問われてみると不思議ないろいろを知ることができた。

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    投稿日: 2016.02.11