hogemonさんのレビュー
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バビロニア・ウェーブ
堀晃 / 東京創元社
不思議と読み進めてしまう一冊
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恥ずかしい話、初めて読みました。日本人SF作家の作品。
近未来。太陽系近傍に発見された謎のレーザー光束を事実上無尽蔵のエネルギ源として利用している人類。そのエネルギ伝送基地へ向かう連絡船のパイロット…が主人公です。ハードSFかといえば、まあ、そうなのかも知れませんが、決してひどくハードではないと思います。ほどほど、というところでしょうか。一方、人物描写は希薄でおよそ人間ドラマとはかけ離れています。お話としてはSFの中でもミステリーに近いんじゃないかな。主人公と一緒に謎解きをしている感覚で、謎のレーザーが次々と引き起こす(?)事件にいつの間にか引きこまれてしまいます。落ち着いて考えると全然納得できないネタもたくさんあるのですが、読んでいる間はそんなこと気にならずに読めます。
SFとして見ると、距離感の描写がうまいと思います。レーザー光束までの3光日やレーザーの直径1200万kmなどなど、どれもきちんと数字を感じさせる表現・演出がされており、その辺りは特に秀逸なハードSFですね。
エンディングは爽やか…というか美しくて良いです。こういう銀河観もいいなぁ。
以上いろいろ書きましたが基本的にお勧めです。 続きを読む投稿日:2013.11.08
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遺跡の声
堀晃 / 東京創元社
もう一声
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作者の「バビロニア・ウェーブ」がわりと面白かったので読んでみました。
時は近未来。銀河系の中で主流に乗れずに滅んだ無数の文明の残した遺跡を調査する下級調査員(とその相棒の異星生命体)が主人公で、…さまざまな死んだ文明とのファースト(兼ラスト)コンタクトを描いた短篇集です。わざわざ「下級調査員」という設定になっていますが、実際本流…とうか華形の職業は生きた文明とのコンタクトの時代が舞台のようです(が、その辺にほとんど言及がないのが背景描写としていかにも物足りないところです)。
内容としては短篇集ということもあるのかもしれませんが、正直なところSFのSとしての「深み」に欠けると思いました。短編ですから基本的に科学・工学系の一発ネタになるのはいいのですが、それが表層的な表現、あくまでも「ネタ」レベルで終わっているのが残念です。いわゆるハードSFと評されるものであれば、もう少し真実味を持たせるようなマニアックさがあると思うのですが、本作品の場合はそれがあまりありません。嘘っぽさ、フィクションぽさが最後まで残り、没入不能でした。例外は第一話の「太陽風交点」かな。全部このくらいのストーリィだったら良かったのに、と思います。
個人的な印象としては孤独版「スタートレック」です。毎回奇妙な惑星を訪れて不思議な冒険をする繰り返し。科学的なネタはあるけれど決してそれが主役ではなく、ちょっと哲学的な思索を経て次週(次作)へ続く、みたいな雰囲気です。そう、Science Fictionではなくて、藤子・F・不二雄の Sukoshi Fushigi だと思います。良くも悪くも。
あと、作品の大半は70年代のもので、各所に古さ(≒あり得なさ・嘘っぽさ)が感じられます。特に情報通信関連分野の描写は、地球側にしても遺跡側にしても、20世紀的・アナログ的な懐かしさが多く見られます。
以上、個人的には★2つと辛口に評価しましたが、独特の雰囲気・世界観はあり、ツボにハマる方は間違いなくいらっしゃると思いますので、試しに読んでみるのも悪くないと思います。 続きを読む投稿日:2013.12.26