
第3のギデオン(1)
乃木坂太郎
ビッグスペリオール
めっちゃ面白い(どストレート)
乃木坂太郎は医龍の頃からファンだが、その次の作品はちょい性に合わず、残念に思っていた。 そこに本作、『第3のギデオン』が。めっちゃ面白い。くどくなっていた絵柄が先祖返り(?)したかのように、良い意味で洗練さが出てて良いね! 歴史作品も、善悪の概念を扱う作品も大好きなところに乃木坂太郎のコレですよ。ハマらないわけがない。 ってわけで全力で応援。騙されたと思って読んでみぃ。ちっちゃい子にはお勧めできんが、大人は必読だろこれは。
0投稿日: 2016.11.16
外天楼
石黒正数
文芸第三
サスペンス、ミステリ、SF、ホラー? いや、シュールギャグ?
面白い。奇想天外な発想に舌を巻く。ショートショートかと思いきや… アホな展開かと思いきや… 裏切ってくれる。 この方の作品、実は初めて読ませて頂いたが、ほかの作品(ネムルバカ・響子の父など)と比べ、全然雰囲気が違うところが凄い。 というか、タイトルのように、いくつものテイストを調和させてるのが凄い。凄いしか言ってない凄い。引き出しが凄い。 ということで、ちょっと不思議な漫画にご興味あれば、ぜひ。
1投稿日: 2016.11.04
クローズド・ノート
雫井脩介
角川文庫
ブワッとなる。ブワッと。
このストーリーのラストで、Walkmanから流れてきたシャッフルBGMが「愛をこめて花束を」。あまりにもマッチしすぎて泣きそうに…笑 雫井さんのキャラクタはいずれも良くユーモラスで愛らしい。魅力的だと思います。 タイトルからしてメインテーマは綴ること、綴られる記憶であり、万年筆もキーアイテムですね。これもまた味わい深い小道具として登場するのが心憎い! それにしても、作品全体を包む優しい雰囲気にはホッコリしますなぁ。やっぱり起伏の関係上、ムムッとなる展開もありますが、それでも根底に流れるのは優しい何かだと感じました。 主人公も天然天然と言われていても、しっかり物事考えようと足掻いて頑張ってますし… 成長物語としても捉えられ、面白かった! 部分的にポエミーに過ぎる表現かなぁと思う場面もありましたが、気持ちも昂ればそうなるか、と納得して読みました。 ではほかの雫井作品にももっと手を伸ばしてみましょう。今は秋ですが、春先に近い3月くらいにこれを読むと良いかもしれませんね。
0投稿日: 2016.10.18
落日燃ゆ
城山三郎
新潮社
その生き様、どの言葉にも代えがたく。
政治家というのは、全く、このような人ばかりであれば、多少は世界もマシになるものを。 さて、吉田茂の同期にして、極東国際軍事裁判において唯一文官での刑死者となった男である。 歴史の巨大な転換点で外相となり、その平和的・協調的信念を基に世情の形成に努めた彼は、5・15から2・26に至るまでの、時代そのものの圧力たる軍事政争に巻き込まれる。 中国・ロシア・英米と対立を避け、粘り強く交渉し勝ち得た諸外国からの信頼も、自らの仲間たる関東軍らに踏みつけられ忘れられていく。何と悲劇的な外相・宰相であろうか。 軍事裁判でも全く証言をせず、黙々と責任を受け入れるその姿勢は、読んでいて苛立ちを覚えるほどであったが、 それほどの意識を持って職責を果たせる人間が何人いるのだろうか? 物來順応とは、まさに境地の至りであったに違いない。 世間的にはもしかしたら、軍部に逆らえぬ外相・宰相という言葉があるかもしれないが、 むしろ5・15から2・26が平然と起きた時代を考えれば、十分すぎるほどに妥協と論争を繰り広げていたと私は思う。 暴力に対するその姿勢を非難することは、実際問題、誰でも出来ることなので、その「逆らえぬ」批判事態、無意味ではなかろうか。 近衛から声が掛からず、あのまま鵠沼の地で一生を終えられたのならばと考えるが、それでも彼は人から乞われるままに政界へと戻っていたに違いない。 勝海舟が書いた、西南戦争に担ぎ出され敗れた西郷隆盛に向けた歌を思い出す生き様に感じる。 「濡れぎぬを ほさんともせず子どもらの なすがまにまに果てし君かな」。覚悟をもって生きるとは、難しいものである。
0投稿日: 2016.08.07
七王国の玉座〔改訂新版〕(上)
ジョージ・R・R・マーティン,岡部宏之
早川書房
大傑作(断言)
氷と炎の歌シリーズの伝説的第一巻。登場人物はモブ込みでシリーズ総勢200人超くらい? 圧巻に次ぐ圧巻のストーリー、玉座を巡る人々が交錯するシナリオは読み始めたら止められないッ!! 中世をモチーフにした演出なので、残酷な描写が出たりするが、だからこそ手に汗握るリアリティがあるというもの。全ての登場人物に容赦なく試練が降りかかる様から著者の意気込みが伝わってくるよう。 権謀術数、暗躍に次ぐ暗躍、裏切りと結託…… そんな世界だけどもちろん、希望も散りばめられている。ある意味、この社会そのものかもしれない人間の恐ろしさも感じられる大傑作。 しかしまぁドラマの脚本書いてないで早く原作を書き進めておくれよ著者…… 次のレビューは最終巻で書きたいものだ。マジでこの本読むのがライフワークになりそう。 シリーズ未読なら、本当に読んで欲しい。心の底からそう思う小説だ。
1投稿日: 2016.05.05
世界一周デート 怒濤のアジア・アフリカ編
吉田友和,松岡絵里
幻冬舎文庫
これが原点の原典?
G.W.に友人二組の結婚式2連続に出席し嬉しながらも疲弊した、こどもの日。あまりにも良い天気の中、あぁどっか行きたいなぁとぼやく男は閃いた。 これは… 吉田さんだなと。吉田さんの著作で”旅行”しようと。そういやソニーさんからG.W.限定ポイントも貰ってたなぁなどと思い、吉田さん旅行記を検索。 ヨーロッパと台湾は読んだから今度は他の地域かなーなどと思いつつ見つけた「世界一周デート」の文字。なんと前後編となる壮大な記録とのことで、期待に胸を膨らませながらポチる。 おや? 奥様も著述家とのことで、その情感溢れる文体は旦那さんのそれよりもやや辛口かつ哲学的な雰囲気。夫婦で同一イベントを描く手法は中々興味深い。 どの地域の内容も体感した感想を素直に書かれているようだが、若い頃合いのものだからか、表現もセンシティブで一期一会を感じさせるものが多かったように感じる。 しかし何故だろう、もっと食を、食の描写を! と思ってしまう。いや、結構食べてるんですけどね。カレーとか、カレーとか。爆笑しましたココらへんの下り。 5時間ぶっ通しの読書感想文は以上。後編に続く。
0投稿日: 2016.05.05
週末台北のち台湾一周、ときどき小籠包
吉田友和
幻冬舎文庫
飯、飯、鉄道、飯、時々ヤーマン。
ヤーマンをご存じない? そんなアナタはまず、同著者の著作『ヨーロッパ鉄道旅(略)』から読まれることをお勧めする。 台湾である。私の両親は著者同様の台湾フリークで、毎年必ず行っては大量の烏龍茶の茶葉を買って帰ってくるという、 まぁ個人的にはそんな理由があったりして台湾には馴染み深い。悲しいかな、我が身にとっては未だ未踏の地であるが。 この方の文章を読むのは二作目になるわけだが、うん、やはり食いしん坊であられる。平均3ページに1つ以上の料理名が出てくる感じ(主観)。 それがまた美味しそうに書かれている訳だ。移動途中で読む機会が多い私にとっては、昼飯時に読むと必ず中華を探すほどの興味深さ。 手に汗握るのではなく、口内にヨダレたぎる、である。汚い表現だがいたし方ありますまい、どの料理も美味そうなんですもの。 そしてそんな料理と同じくらい魅力的なのが、台湾の風土だ。国民性しかり、自然しかり、なんとも人を和ませ、魅了するものばかり。 特に良く言及されるのは、台湾人の方々の清々しいまでの優しさ(人懐っこさとも言える)だ。う~ん、日本人としては、見習わなければとも思うレベルのかいがいしさ。 どの文を読んでも、何か頬が緩んでくるような、なんか爽やかな気分が詰め込まれている一冊なのです。よく分からない? どうぞお読みください。 是非とも今年は、この本と旅行案内を持って彼の地に参りたいものだ。出不精を乗り切り、いざパスポート申請だっ!!
1投稿日: 2016.03.13
ヨーロッパ鉄道旅ってクセになる! 国境を陸路で越えて10ヵ国
吉田友和
幻冬舎文庫
西へ
なんと旅情を感じさせる一冊だろう。文章から香る著者の旅行愛は相当である。 書籍説明はものすごく簡素な書かれ方をしているが、ページをめくれば異国情緒のオンパレードで、 次へ次へと読ませる軽快な文体と相まって、さながら旅行に同道している気分になってくる良作。 特にワタクシのような、欧州への旅を夢見るだけのサラリーマンにとってすれば、中々にグッと来る内容だ。 旅行気分とはいえ、幸不幸もあるもの。旅先で感じた喜怒哀楽を余すことなく表現していることは特筆に値する。 旅慣れているからこそ、その時々の感情を冷静に書けるのかな、とも思った。 平たく言えば、旅先でありがちな「いやなこと」もしっかり描かれていることは、単なる「旅行オススメ!さぁ皆さんもどうぞ!」的な本ではない…… と思う。 なので、尚更著者の行動に一喜一憂(?)しながら読むのを止めることが出来なくなるのであった。 面白かったです。旅したいわ……
0投稿日: 2016.02.25
吉田茂-尊皇の政治家
原彬久
岩波新書
歴史の岐路に立った宰相
一国の宰相に求められる決断は、他の何よりも重い責務があるものと思う。 世界史上、類を見ない大戦争の終焉を迎えた、敗戦国の宰相となった男は何を考え行動していたのか興味があった。 吉田茂その人は日本史上、欠かさざるべき逸材であったことは本書を読まなくとも解りきっていることだが、 その思想背景を知れば知るほど、なるほど歴史により育てられた人物であったことが良く解った。 帝国主義瓦解の時代から米ソ冷戦に至るまでの間に外交官・政治家として生き抜いた男が持つ考えは、 一重に日本という国を守るという意志から生まれでたものばかりと感じる。ひとりの国民として感服する思いがあった。 国家存亡の際にあって、このような(国際)政治的バランス感覚を持った人間がトップに立ったことは、日本にとって幸運だったと言える。 ★四つにしたのは、最後がやや駆け足だったからだ。反吉田体制における吉田の記述が乏しく、希薄な印象を受けたからである。とはいえ、本当は4.5くらいの気持ちなのだが…… 余談だが、鳩山一郎の(主に九条に関する改憲を標榜した)憲法調査会の下りと、吉田自身、九条はあくまで敗戦国としてその武力放棄を一時的に定義したのみという解釈は面白かった。 半世紀以上前の政治家たちの考えと、現政権の目指すべきところと合致しているところがまた興味深い。やはり歴史は繋がっているということだ。 極東国際軍事裁判にも国際政治学的に興味がある為、今後はそれら関連書籍にも手を伸ばしていきたい。とまれ、本書は万人に良く読まれることを勧められる教材だと思った次第。
0投稿日: 2016.02.10
舟を編む
三浦しをん
光文社文庫
情熱は才能か?
辞書作りに邁進する人々の物語。情熱をもって仕事をこなせるなんて、羨まし過ぎる人々の話でもある。 とはいえ、皆が皆、才気あふれるキャラクタな訳ではない。しかしそんなキャラクタたちさえも、ただ事ではない情熱に触発され、変わっていく。 もし何か自分の人生がつまらないなぁと思うのであれば、一度この一冊をお読みすることをお勧めしたい。 情熱とは人を動かす原動力だ。情熱は才能ではなく、自らの欲求の根源なのだと思う。何かをやり遂げたい、何かを始めたいと思わせてくれる。 確かに読んだだけで自らの人生がばら色に変わるものとは思えないが、情熱をもって何かに臨む面白さを思い起こさせてくれるだけでも、読む価値はあるだろう。 とはいえ、某カップルのくっつき方があまりにもテキトーなので、その点は減点させて頂いた。まぁ恋愛小説ではないから良いとは思ったが、これはちょっと…笑
0投稿日: 2015.06.20
