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うえぴーさんのレビュー
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  • ベルリン空輸回廊

    ベルリン空輸回廊

    ハモンド・イネス,池央耿

    グーテンベルク21

    意外なプロットの冒険小説

    昔からの収集で、何冊か所有していましたが、初めて読んでみました。訳者解説によると、著者初期の作品らしいですが、冒険小説の醍醐味がたっぷり詰まっている上に、濃厚な人物描写、先の見えない展開、戦争がもたらす悲劇と孤独、などなど読書の愉しみが満載されています。読まず嫌いはダメですね〜。

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    投稿日: 2014.06.11
  • 大きな森の小さな密室

    大きな森の小さな密室

    小林泰三

    創元推理文庫

    ミステリ好きにこそ読んで欲しい作品

    東野圭吾の『名探偵の掟』を彷彿とさせるメタミステリ短編集。著者の作品は初めて読みましたが、幅広い活躍をされているようで、何冊かあるストックを読みたくなりました。濃いキャラクタが大勢出てきて、会話劇としても楽しいし、深い造詣があるからこその、ミステリのお約束をあえて外していく展開も面白い。「更新世の殺人」は殊能将之の『黒い仏』を想起させる脱力ミステリ。一番のお気に入りです。

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    投稿日: 2014.06.11
  • 郵便配達はいつも二度ベルを鳴らす

    郵便配達はいつも二度ベルを鳴らす

    J・M・ケイン,田中小実昌

    グーテンベルク21

    タイトルからは想像できないノワール

    普段は基本的に「秩序が回復されて終わる」ミステリばかり読んでいるせいか、本書には頭を殴られたような衝撃を受けた。根無し草でアウトローな主人公の、煌めきを放ちながら滅びの道を行く姿が、みすぼらしくもカッコいいという、アンビバレンツで魅力的。薄い本だが、密度は高い。面白かった。

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    投稿日: 2014.06.11
  • ABC殺人事件

    ABC殺人事件

    アガサ・クリスティー,堀内静子

    クリスティー文庫

    ミッシングリンクものの歴史的名作

    30年ぶりの再読。小学生のときに、あかね書房の少年少女推理文学全集の「ABC怪事件」のタイトルで読んで以来。ミッシングリンクもの、という事だけ覚えていたので、今回のは再読というより初読に近いです。クリスティの黄金期に書かれただけあって、●●ネタとの複合もあり、現代日本でも十分通用するレベルの高さ。クイーンの1932年黄金期に匹敵すると思いました。っつうか俺クリスティ初心者じゃね? と猛省した次第です。先日書店で見つけた、霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』を読もうかしら。

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    投稿日: 2014.06.11
  • 体育館の殺人

    体育館の殺人

    青崎有吾

    東京創元社

    ロジカルミステリの第1作

    ロジカルでアニオタな学園ミステリ。評判は見聞きしていましたが、デビュー以降も順調に新作を出しているようなので、読んでみました。想像していたほどアニオタ度は高くなく、おっさん読者でも置いてけぼりにされることはありませんでした。肝心の内容は、なかなか堂に入ったパズラーで、「体育館を密室にする(なってしまう)」という、あまり考え付かないような難題をクリアしているだけでも嬉しくなってしまいます。設定に無理はあるけれど(語り手と刑事が××とか)、著者が大学生であることを考えると文章もこなれていて、これからが楽しみ!

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    投稿日: 2014.06.11
  • サクリファイス

    サクリファイス

    近藤史恵

    新潮社

    レースの世界を知らない人にこそオススメ!

    ミステリとしても完成度が高いけれど、スポーツ小説としても素晴らしい。タイトルの真の意味がわかるラストでは、鳥肌とともに感動が押し寄せました。 解説にもあるように、自転車競技の入門書としても優れている(と思う)ので、こんど世界のレースを観てみたいと興味が湧きました。続編が楽しみ!

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    投稿日: 2014.06.07
  • 戻り川心中

    戻り川心中

    連城三紀彦

    光文社文庫

    日本推理小説の歴史に残る逸品

    先日の著者の訃報に接して愕然とした一人です。 連城三紀彦という名前を聞いただけで陶然としてしまう、そんな作家でした。 文学と推理小説の、もっとも洗練されたハイブリッドを成し遂げたのが連城氏です。 だまされたと思って表題作だけでも読んでみてください。 格調高い美文調で語られる大正の詩人の物語を。 二度の心中未遂の果てに自害して早世した詩人の、心の襞を。 彼が狙った、本当のたくらみを。 愛した男に命を預けてしまう、悲しい女の性を。 初読時と再読時では、物語の印象が変わっているでしょう。 読書の愉しさを味わわせてくれる、極上の短編集です。

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    投稿日: 2013.10.25
  • 魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】

    魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】

    京極夏彦

    講談社文庫

    ミステリとSFと幻想小説の融合

    妖怪シリーズ2作目。 電子書籍版では関係なくなってしまいましたが、本の形態でのレイアウトにこだわった造本をしたのがこの「魍魎」から。 どんなレイアウトなのか気になる人は、紙の本も読んでみてください。 内容としては、冒頭の幻想小説がラストに至ってまったく別のものに変容してしまう様に、驚きを通り越して嘆息しました。 本作で推理作家協会賞の長編賞を受賞。 2作目にして伝説の作家となりましたね。

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    投稿日: 2013.10.15
  • 占星術殺人事件 改訂完全版

    占星術殺人事件 改訂完全版

    島田荘司

    講談社文庫

    日本ミステリの輝ける傑作!

    あるミステリ漫画で本作のトリックが使われており、一時かなりの騒動になったのも懐かしいですが、それはまた別の話。 冒頭の手記があまりに退屈で挫折する人が多いようですが、あれこそ驚愕トリックの発生源なので、がんばって乗り越えてください。 「読者への挑戦状」が2回も付されているのは、トリックへの自信の表れでもあります。 さあ、めくるめく本格ミステリの世界へ!

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    投稿日: 2013.10.15
  • キマイラの新しい城

    キマイラの新しい城

    殊能将之

    講談社文庫

    いろんな意味で面白い

    750年前の外国の幽霊が、建物に取り憑いて日本にやってきた! その幽霊が「自分は誰に殺されたのか調査してほしい」と言い出して、依頼を受けた無能な探偵・石動。 昔の外人が見た現代日本という異世界ミステリとしても楽しめるし、館ミステリの変形としても面白い。 この作品は島田荘司のパロディでしょう。 建物をめぐる推理の末に出てくるひと言が、島田作品の「あるネタ」の壮大な皮肉になっているのが面白かったです。 バイクを駆っての冒険があるのは『異邦の騎士』へのオマージュ? 殊能作品でいちばん笑いの要素の強い作品。おすすめ。

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    投稿日: 2013.10.15