全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班
香月日輪,わたなべあじあ
講談社X文庫
『特別』であることの切なさと『普通』でいることの難しさ。
漫画化されたものを先に読んで面白かったから 小説版(原作)を読んでみようと思って。 漫画の良さは、視覚的に表情や状況が分かりやすいので読みやすいのですが 小説の良さは、感覚的に場面の状況を想像(若しくは創造)出来る事かなと思います。 漫画を先に読んだので、小説との小さな違いに気付かされることも面白みの一つでした。 視覚的なものとは違う感情が文字の中に見えてきたり。 見て一瞬で分かる場面が文字になるとより明確になってみたり。 「見える者」と「見えない者」がそれぞれの役割をこなしながら事件解決へと奔走する警察内の特殊な部署。 警官として2年目、所轄の生活安全課所属の青年石田智宏(通称トモくん)が、ひょんなことからその警視庁の超常現象対策部署・通称遊撃捜査班に異動になるわけですが、実はトモくん自身も、所謂『普通に見えない人』ではなかった。 人には誰でも霊感が備わっていて、それが強いと霊的なものから影響を受けやすくなるわけで、普段全くそういうものに縁がなくとも、波長が合ったりすると影響を喰らってしまうことも。 トモくんにはその霊感が『全く0』の人で、これまでそういうものに遭遇することもなければ存在すら皆無の人生を送ってきたはずなのに、ある日、自分の部屋で全裸の幽霊に遭遇。 彼は実在する神瀬京介という遊撃捜査班の一員で、何かの縁に導かれたのであろう二人は出逢います。 『見える者』と『見えない者』。 それは霊感の強い人と、そうでもない人という括りではなく、霊的な影響を色濃く受ける者と、それを全く受けない者という形で、互いの『知らない世界』を支えていくようになります。 単なる『普通』ではない、 『見える』と『見えない』の両極端にいる者同士、同じ今を生きていても、他の『普通』の人間達とは見える世界が違う。 そこには確かに共通する人としての心も想いもあるけれど、知りたくないのに知ってしまうこと、知りたくとも知りえないことの歯がゆさと苦しみがあるんだと、明るく茶化した雰囲気で流れていくストーリーの中でしっかりと語られていると思います。 それは、ごくごく普通の人々、この社会で生きている人、一人一人に言えることでもありますが、相手の気持ちや心内が分からないのは当然だとしても、分かり合おうとする歩み寄りと繋がりが、『知らない世界』の影響から身を守る力となるんだと教えてくれているように感じました。 自分は好きだな~、こういうの。
0投稿日: 2015.02.14全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班(1)
香月日輪,わたなべあじあ
ARIA
笑った!
前から読んでみたかったのですが、小説は読むのに時間が掛かるからずっと保留にしていました。 わたなべあじあ先生作画で漫画化されているって知って早速読んでみたんですが、ほんとにゲラゲラ笑いながら、時にブルッっと、時にジ~ンときながら楽しく読めました。 原作者の香月先生はお亡くなりになったので、続きを読むことは出来ませんが、ただ面白いだけじゃなく、人の心の奥にある醜さや寂しさ、悲しさ、切なさもしっかりとあって、小説版も読んでみたいと思います。
1投稿日: 2015.02.11NARUTO―ナルト― モノクロ版 72
岸本斉史
週刊少年ジャンプ
NARUTO―ナルト― モノクロ版 72
15年間という長い間の連載も、ここに完結。 本当にいろんなことがあったけれど、それでも最後の最後に相応しい終わり方だったのかなと思います。 ほんの小さな子供だったナルト。そしてサスケ。 登場人物たち一人ひとりのドラマを見つつ、二人の成長を見届けることが出来て、本当に感無量です。 この先の彼らの人生も、彼らの子供達の成長も楽しみで仕方ありません。 彼らの生き方を通して、現実の世界で生きている自分達の学べることがたくさんあったと思います。 やっぱり泣ける【NARUTO】。 泣かせてくれる【NARUTO】。 最後までそんなお話を描いてくれて、ありがとうございました。
3投稿日: 2015.02.07ぶっしのぶっしん 鎌倉半分仏師録 2巻
鎌谷悠希
ガンガンONLINE
ぶっしのぶっしん 2巻
半身仏となった想。 その身に半身の『明星菩薩』を来迎させ闘いを一段落させることが出来たが、その反動で一ヶ月も眠りについてしまう。 その間に、想を身寄りとして置き『想運』という名をくれた運慶仏師は、頼朝の命により鎌倉へ。想は南都に残った運慶の子供達と共に仏師としての仕事をすることとなった。 運慶が長子、湛慶と共に阿吽仁王像を彫ることとなったが・・・。 長子としての責務と才能に悩む湛慶と、身一つで何もないが仏師としての力と才能に底が見えない想。 二つの才能がぶつかり合った先に降りる一光は、どんな明日をもたらすのか。 仏敵として登場する平家の落人、教経のすっとぼけた軽さが好きです。 けれど、内に秘めたる源氏への恨みは相当根深いようで、時折見せる内側の表情は暗く重いもので、現世を牛耳る頼朝の偉そうで軽薄なイメージをより際立たせている感じです。 湛慶の長子としての父親に対する尊敬の心や、仏師として、一人の人間として超えるべき対象への重責や悩み、そういうものが赤裸々に語られ、彼の成長を見届けることが出来ます。 ここでも明星菩薩の仏として人を導く姿が。 3巻は夏発売予定。 待ち遠しいです。
1投稿日: 2015.01.25ぶっしのぶっしん 鎌倉半分仏師録 1巻
鎌谷悠希
ガンガンONLINE
ぶっしのぶんしん 1巻
平泉の地で地神ミズチと源頼朝率いる兵士や神仏に使える僧侶、神官が闘う最中、主人公の想は、彫った仏像に明星菩薩を召喚する。 しかし、首を落とされながらも地神の放つ圧倒的な力の前に明星菩薩は半身を喰われ、想自身もその身を喰われてしまう。 命が消えようとしている最中、想は「まだ死ねない」という思いからか、半身となった仏像と自身の半身を合わせ、一人の身体の中に「想」と「明星菩薩」、二つの魂を持つ半分仏(はんぶんぼとけ)としてその命を長らえることとなった。 仏師という職業の方は物凄い審美眼をお持ちと伺ったことがあります。 この漫画に登場する仏師達も相当な力と技術を持っていて、心身を注いだ仏像に神仏を『召喚』することができ、共に闘うことができます。 宗教というと少しカルト染みた感じを受ける人が多い現代ですが、遠い昔、人と神仏は隣り合わせに存在し、人の心と密な関係、拠りどころであったことが、漫画の中でもよく分かります。 神とは自然の力そのもの。 仏とは人としての理を説き導くもの。 人は神の力に翻弄され、従えることは出来ませんが、人と共に仏は存在し、人と共に笑い、泣き、苦しみ、そして明日へと導きます。 そんな仏をより身近なものにし、人々の心の拠りどころとして彫刻する仏師たち。 想と明星菩薩、そして彼らを取り巻く仏師たちが、時に笑い、時に泣き、悩み、苦しみながら、鎌倉時代を背景に源平因縁の戦いに巻き込まれていきます。 登場する仏像達の由来も面白おかしく紹介されていたりして、堅苦しさのない物語として楽しめます。 続きが早く読みたいです。
0投稿日: 2015.01.25