44αさんのレビュー
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41
このユーザーのレビュー
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ドリフターズ(1)
平野耕太 / ヤングキングアワーズ
最高のドリームマッチ
8
ヘルシングが登場人物の関係性にわりと重きをおいていたのに対し、このドリフターズは「軍勢対軍勢」の色がより濃い。
かといって、キャラクターの個性が薄れることもなく、ドSな那須与一や、ひょうきんな織田信長…、ボケ老人のハンニバルに、怨念まるだしのジャンヌ・ダルクなど、従来のイメージを覆す歴史人物が多々登場する。それらが入り乱れて戦いを繰り広げるさまは、歴史好きにはニヤリとくるものがある。
戦いにおいては、個々の力よりも、能力や個性をいかした戦術が重要視されている。そこもまた、戦記好きには嬉しいところだ。
リリースが遅いのが難ではあるが、続きが楽しみな漫画である。 続きを読む投稿日:2014.02.27
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クリムゾンの迷宮
貴志祐介 / 角川ホラー文庫
無駄のないホラー
6
主人公は、目をさますと見知らぬ場所に居た。冒頭からこんな調子で、とにかく無駄がなく、常にスリリングなシーンが続く。読んでいて、常にドキドキしっぱなしだった。
この作品でいちばん恐ろしいシーンは、極限状…態におかれた人間の心理について書かれた部分だろう。また、このゲームを企画した人間の意図にも、ぞっとするところがある。
オチやが少々平凡でさみしい気もするが、それを補ってあまりある勢いのある作品だった。オススメ。 続きを読む投稿日:2013.12.07
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夜市
恒川光太郎 / 角川ホラー文庫
SSっぽいが雰囲気は抜群
5
改行が多く、描写も平凡で、携帯小説か某掲示板のSSを思わせる。それでも、作品全体を貫きとおす静かに悲しい雰囲気と、ミステリ要素を多分に含んだストーリーには引きつけられるものがある。
「夜市」は「風の古…道」ともに、現実世界のすぐそばに存在し、しかし常人には触れることのできない異世界へ、ほんの偶然から迷い込んでしまった人間の運命を描いた作品。
どちらも物悲しい結末を迎えるが、「夜市」が物語の展開に対してやや冗長にすぎるのに比して、「風の古道」は無駄がなく美しい。現実世界と異世界だけでなく、生死もまた、日常生活のすぐそばに存在しているのだと強く思わされる。
個人的に、他のホラー作家にはない、薄曇りのような雰囲気がかなり好みだった。作者の他の作品も読んでみたい。 続きを読む投稿日:2014.03.07
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ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子
内藤了 / 角川ホラー文庫
ミステリでもホラーでもなくファンタジー
5
自分で自分を猟奇的に痛めつけたすえの自殺…
殺しか自死かも分からない不可解な事件を、新米刑事の藤堂比奈子が追う。
非常に衝撃的な出だしで、途中までは楽しく読めた。
が、中盤からは「これは超常的なオチ…なのではないか?」という雰囲気が漂い始める。
個人的には「やっぱりこうなるか…」というガッカリした結末だった。
ミステリ風のタイトルを冠したファンタジーとして読めばオススメできなくもない…といった作品だ。 続きを読む投稿日:2015.03.30
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アド・アストラ ―スキピオとハンニバル― 1
カガノミハチ / ウルトラジャンプ
派手さはないが面白い
3
出だしが、ハンニバルが神の子であるだとか、感情がないだとかいうファンタジーめいたエピソードだったのでガッカリしたが、子供時代の話が終わり、スキピオが登場しだしてからは、むしろ、突飛なところがなく地に足…がついたストーリー展開になっている。
登場人物がそれほど多くなく、部族についての説明や地図も適度に挿入されているので、戦記ものが苦手でも楽しめると思う。 続きを読む投稿日:2014.02.27
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家族八景(新潮文庫)
筒井康隆 / 新潮文庫
人の心のなかにこそ
2
人の心を読めるテレパス・七瀬が、家政婦としてさまざまな家庭を渡り歩く連作短編集。設定はSFだが、内容は間違いなくホラーである。
七瀬がのぞきみる人々の心はそれぞれ違った特徴を持っているが、共通している…のは、その根底に悪意や憎悪を秘めている点である。一見平凡な家庭であっても、そこに暮らす人々はたいてい憎みあっているのだ。
恐ろしいことは、家庭とそこで繰り広げられる人間関係の中にこそある。 続きを読む投稿日:2013.12.08