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epagoemnosさんのレビュー
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  • ドリフターズ(5)

    ドリフターズ(5)

    平野耕太

    ヤングキングアワーズ

    人を見捨てた「救世主」と「人間」の闘いが始まる

    初っ端から陥落し「廃棄物が統べる化け物の世界」となった北壁が描かれるのが中々ショックです。人間を喰らう「化物」が人間と同じ文明を持ち、そこでは「人間」は「家畜」に堕とされる。使えなくなったら殺して喰われるモノに堕とされる。そして、それを推し進めるのがかつての「救世主」であった「黒王」。「人間」に絶望した「彼」と陰陽師「安倍晴明」とのやりとりで見えるのは「世界」すらも滅ぼす人の「有り様と業」故に人を見捨て「化物」を救おうとする彼と、人の世を守る事を選び、生業とした「人間」を見捨てずに闘う「陰陽師」の姿が見えます。まあ、考えようによっては「祟り神」と化した「救世主」と彼が率いる「廃棄物」から、今も変わらず「人の世を守る魔法使い」たる「陰陽師」であるだけと当人は言いそうですけど。  一方、菅野とスキピオはブッチ達が持ってきた「山口多聞」からの書状で彼の事をしり「飛龍」で合流する。多聞提督と出会いスイッチが入ったスキピオが頼もしいです。が、事態は黒王の大侵攻で急変する。次々と国々が陥落し、難民をオルテへ追いやっていく。逃げ遅れたら皆殺され、亡骸は無駄なく資源として使われる。押し寄せた難民達は救いを求めます。が、そんなもんは無視して豊久がぶちかますのは「薩摩劇場覚悟編! 」でした。「逃げるならいずれ追いつかれ殺され、亡骸はただのモノとして使われるだけ。が、立って闘う者がいるなら自分も死ぬまで共に闘う! 泣きながら死ぬか! 立って闘って死ぬか! 」と。誰もが持つ「人間」としての意地から立って闘う兵へと変わる避難民達。兵に変わった彼らを如何に勝てるように差配するかを信長が頭を絞り、そして決戦へとという所で終わる。アニメ化するそうなんですが「Hellsing TV版」の悪夢を覚えている身としてはすっげぇ不安ですな。敵味方の役者達が「槍衾」の前で相対する流れに至ります。  「人間」を見捨てた「救世主」と死してなお怨嗟と絶望を引き摺る身体を持った死者である「廃棄物」達に率いられる「化物」と、異世界から渡ってきた「人間」たる「漂流者」と自分たちの明日をえる為に闘う事を決めた「この世界の人間達」の決戦への助走がまるまる入ってます。単行本おまけは見開き一ページのみですが・・・(..;)。内容は見れば分かります。ええ・・・。イヤって程に。

    1
    投稿日: 2016.06.07
  • ドリフターズ(4)

    ドリフターズ(4)

    平野耕太

    ヤングキングアワーズ

    異世界で再び「人間」と「化物」の戦いが始まる。

    豊達の前に現れた今一人の「漂流者」は帝国創建に関わった「サン・ジェルミ伯爵」だった。まあ、色々伝説があってその中には不老不死ってのがあるからなぁ。いてもおかしくはないけどなんでカマになってるんだろう? 彼の手を借りて「帝国」を奪う為に首都ヴェルリナに現れる豊久一行。だけど、既にそこには「人類廃滅」を掲げる黒王の手が延びていた。ずいぶんと男前になって何故か眼鏡もかけている怪僧ラスプーチン。今一人であった「サン・ジェルミ(サン・ジェルマンの女性形)」は知っていたみたいだけど。が、彼の策は見事に「豊の空気読まずにかます」のでぶっ飛ばされる。で、遂に先鋒として偵察中に出くわしたのではない「廃棄物との戦」が始まる。ドワーフ製の火縄銃とサン・ジェルミ伯領の「ガチホモ部隊」で即席に鉄砲衆をつくりあげて、この世界最初の銃火で戦果を上げる信長。だが、今回対しているのは「壬生狼」の「鬼副長」であった「土方歳三」。鬼を怖れて滅すことを選んだ「人」が晴明達ならば、「鬼の如く生きて、闘い己を貫き通す人間」がサムライであり、いくさ人でもある。まあ、こんなの相手にすればあのロシアでも勝てんわな。そして、廃棄物は「死して身体を持つ鬼となった者達」でありすなわち「化物」。化物になった「幕軍の義勇兵集団」であり「侍」である事に拘って死んだ「鬼副長」と「鬼島津」きってのいくさ人の闘いが熱い。で、舞台が代わり菅野さんの元でこき使われているスキピオさん。ブッチ達の「日本人ってあんなんばっかか」という発言には抗議したいが、連中が見たのってどいつもこいつも「いくさ人」で唯一の例外である晴明も「ホント人間ですか?」なのだしなぁ。菅野もきっちり「いくさ人」だし。コレが文学少年だったってのは、お豊が古今集の伝授受けた文化人でもあるってのと同じくらい信じられないわ。そのせいで、ブッチ達の誤解に「違う!」と言っても説得力が皆無だ。スキピオさんが菅野当番に勝手に決まって抗議する中でフェードアウトし、もう一人である多聞提督と彼が身を寄せている「グ=ビンネン」も登場する。そして、廃棄物も今一人が加わる。桔梗紋をつけた戦国武将「明智日向守惟任光秀」が。謎を孕みつつ「違う世界」で「人間」と「化物」が再び矛を交える。次巻が待ち遠しいというか、連載を追わずにいられなくなります。

    0
    投稿日: 2016.03.26
  • 【合本版】ストレイト・ジャケット+フラグメント 全14巻

    【合本版】ストレイト・ジャケット+フラグメント 全14巻

    榊一郎,藤城陽

    富士見ファンタジア文庫

    榊節の一つの到達点と言える作品です。まとめ買いがお得だと思います。

    榊一郎の作風をみると「この作品完結以前」と「完結以降」で変わっている。私はそう思っています。魔法という奇蹟の様な力が「恐ろしい代償」を伴うことを思い知らせた災厄。でも、災厄があったからこそそこから復興する為に魔法という「奇蹟の様な、だが恐ろしい代償が伴う力」に頼らざるを得ない。そんな世界で「奇蹟の代償」で「人間」である事を侵され失った「成れの果て」を狩るのが主人公です。そして、魔法も「本来の目的」はというのが絡んでくる。結局どうしようも無い位「人間」である者達しか出てこないと言える物語です。「魔法使い」も「人間」も「魔族」もどうしようもなく「人間」である事が見える。そんな物語です。

    0
    投稿日: 2015.11.03
  • 【合本版】円環少女 全13巻

    【合本版】円環少女 全13巻

    長谷敏司,深遊

    角川スニーカー文庫

    「魔法使い=変態」な世界観のせいで人を選ぶ…。だが! 読んで下さい。

    我々の世界が「魔法無き地獄」とされ、他の「魔法がある世界」からやってくる異世界人達と我々の世界側の対応機関「魔導師公館」との関わりと世界を巡る物語です。が、絶対メジャーになってもアニメ化できないという大問題がある。何せ、魔法がある世界は我々の世界に比べると物理法則とかなんか違っていてそこをついて魔法が使えると云うシステム。だからそういう法則性の隙に適応した魔法使い達はそろって我々の世界基準だと「変態」か「アレな人」になるという。例えば「錬金体系」という魔法世界はその世界法則故に「全裸が常識」となる。我々の世界では単なる露出狂扱いですな。基本やたらと濃い人ばかりというか、こちら側の人間も「類友」で濃くなっていく。主人公とダブルヒロインでしかも、一人は小学生ですがドSで、もう一人は巨乳女子高生で家事も得意ですが「アホの子」です。でも、彼らの物語は世界を巻き込んで進む。読む価値ありです。変態多いのにたまにめげそうになりますけど。

    1
    投稿日: 2015.11.03
  • 夜を歩けば2 - ガテラルデイズ

    夜を歩けば2 - ガテラルデイズ

    あやめゆう

    C★NOVELS

    一人で生まれて一人で死ぬ。だけど一人ではいられない。

    一野の部屋に花梨がやってきて受験勉強をして帰るという生活が始まってから初めての事件。地元出身の人気バンドの周辺で起きる「異能」絡みの事件。異能が生活を形成する一部となってしまった者は、もう「普通の世間」には戻れない。でも、一人でいる事はやはりつらい。だから「異能者」達は「異能」を使って叫びを上げ、それが事件となる。叫べば狩人がやってきて狩られる様な叫びでも。一野が諦めて壊れていく事でバランスを保っていた様に、花梨は一野と出会った事で「世間」にはいられないけど「ひとり」ではなくなれることを示す。で、おっかなびっくり一野もそちらに歩み寄っていく。「世間」にはいられなくても「ひとり」ではなくなれる。まあ、大江山にならないならうまくいくんでしょうけど。咲耶も加わってしまえばと思いますね。何というか一野って拗ねてる割には面倒見の良い「ひとでなし」ですから。龍空なんかは「一人でいっからテメエら面倒かけるんだよ。とっとと寝るなり何なりして固まってテメエらの世間をつくっておとなしくしてやがれ。そうすりゃ俺らが楽なんだよ。おめえらもだけどな」とか最後に言ったりしそうだな。次巻でどうまとまるのか?

    0
    投稿日: 2014.07.27
  • 夜を歩けば1 - ザクロビジョン

    夜を歩けば1 - ザクロビジョン

    あやめゆう

    C★NOVELS

    人なるが故に「ひとでなし」になる。されど「ヒト」でしかいられない。

    現代の社会で、自ら望んだわけでは無いけどヒトの範疇を「逸脱」する「力」を手にしてしまった者達。彼らを異能者と呼ぶ。そんな「ひとでなし」の一人であった宮村一野と、彼と関わってしまったが故にやはり「ひとでなし」の世界に迷い込んでしまった少女。鬼を狩れるのは鬼だけと言わんばかりに異能者は同じ異能者を狩る。人間が持てる容量に限りがあるとしたら、限られた容量を「異能」に使えばなにがしかの問題も起きる。「世間」の外側に身を置いても「ヒト」なるが故に「世間」から隔絶する事も出来ない。人間だけが人間以外になる夢をみて、願う。でも、人の範疇に無い力を得ても、やはり「人」でしかいられないのに「世間」の外側に寄り添う様にしかいられない。もはや、「世間」にはいられないから。そんな彼らの物語の始まり。

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    投稿日: 2014.07.17
  • ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論

    ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論

    高橋昌一郎

    講談社現代新書

    ゲーデルについての手軽でバランスが良い入門書。

    二十世紀の哲学ではゲーデルによって知性が到達し得る限界が示された事が重大なエポックだったりする。一方の神学においてはボンヘッファーを欧州の知的精神史において外す事が出来ない。彼の哲学への解りやすい入門書であると同時にゲーデルという人間についても解りやすく書かれている点が良い。どちらも、ナチスに翻弄された人生を経た人であるという点でも興味深いと言える。哲学において十九世紀から受け継がれてきた「知性への過大すぎる信頼」を、知性の精華たる哲学によって打ち砕いたという点で彼の業績はとても大きい。同じ著者の「限界」シリーズもおすすめする。

    0
    投稿日: 2013.12.11
  • 華国神記 奪われた真名

    華国神記 奪われた真名

    九条菜月

    C★NOVELSファンタジア

    ツンとボケが同居しているヒロインというのは初めて見た。

    まず、最初は年齢差について突っ込んだが時代的にはそうおかしくは無い。中華風ではあるが、良い意味で中華風はどうもという人でも読める作品。主人公春蘭は肉体年齢12歳、精神年齢は神をやっていたから300を超えるというのに妙に世間知らずでずれまくって、ある意味ボケをかましている。まあ、彼女だけが悪いのではなく時の流れ故のものが色々あるのだけれど。神であった少女がかつての人としての諸々を少しずつ思い出し、おっかなびっくり歩いているかと思うと不意にかなり深い懐がある所を見せるギャップが中々良いです。しいていうならツンデレではなく、地からくるツンと子供からいきなり神をやっていたが故のギャップからでるボケでツンボケな春蘭と、若いのに黄昏れていた仲望がおっかなびっくり、それぞれがある意味止まっていた時間を動かし始める所が良いです。

    0
    投稿日: 2013.12.01
  • SHI-NO -シノ- 黒き魂の少女

    SHI-NO -シノ- 黒き魂の少女

    上月雨音,東条さかな

    富士見ファンタジア文庫

    闇を抱えた少女は日なたのの青年に寄り添い、物語は始まる。

    今は無き「富士見ミステリー文庫」のラインナップで私自身が気に入っている作品です。自分の中に怪物がいる者は、その怪物とともに歩むしか無い。だけど、その側に日なたにいる人間がいてくれたのなら、怪物を抱えながらもその人がいる側にとどまろうとする。どちらかというとミステリーとしては弱いけれど、ヒロインである支倉志乃と語り手である「僕」の関係の方がミステリーな物語。内にいる「怪物」ゆえに闇をのぞき込んでから「僕」の所に戻ってご飯を食べたりしている所が萌えます。まあ、人を選ぶ萌えかもしれませんが。

    0
    投稿日: 2013.11.23
  • ジョークで読む国際政治(新潮新書)

    ジョークで読む国際政治(新潮新書)

    名越健郎

    新潮新書

    政治ジョークの入門に。

    適度な分量で、政治ジョークの入門には最適です。ジョークを楽しむための本である事はもちろん。ジョークを楽しめる健康な知性と感性が自分の中に保たれているかを計るにも役立ちます。「PSYCO-PASS」の槙島聖護ではありませんが、紙の本が自分の状態を確認し、チューニングするツールであるとするなら、ジョークは自己の客観視と健全な知性と感性を有した状態でいるかを確認するツールです。一つ駄目なら全否定という、政治関係のネット上での論議でありがちな愚かさに陥る事を防ぐ自己チェックにも役立ちます。笑いは楽しみであると同時に武器である事を知る手始めとして適してます。お値段も手頃ですしね。

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    投稿日: 2013.11.23