のらねこぐんだん9号さんのレビュー
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動機
横山秀夫 / 文春文庫
ぐうの音も出ない
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D県警シリーズ「陰の季節」で警察小説の面白さにはまったが,そうは言いながら警察小説なんて所詮中身は同じような話の繰り返しだろう,と高をくくっていた。しかし時間が経ってやはり「陰の季節」で味わったどきど…き感をもう一度味わいたくて「県警モノ」の本作に手を出してみた。内容は警察ものではなく警察をとりまく噺4題であったが,4者4様,それぞれまったく異なる設定,展開,オチで読者を飽きさせないし,つい時間も忘れてページを繰ってしまった。それでいていずれの話も普遍性を備えており,仕事中の居眠りとか同業者からの引き抜きといったビジネスマンならどこかで見聞きしてきたような事項が話の横糸を貫く。こんな小説を読むと自分は決して作家にはなれないと思う。ぐうの音も出ない。まさしくプロ中のプロの仕事と感服している。 続きを読む
投稿日:2015.07.05
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陰の季節
横山秀夫 / 文春文庫
はじめての横山秀夫体験
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映画「半落ち」や「クライマーズハイ」の原作者とは露知らず,ただNHKでドラマ化された64(ロクヨン)が評判のようで,それがD県警シリーズというシリーズ物だということを知ったのをきっかけにそれならいっそ…D県警シリーズを最初から読んでみようと思って購入してみた。短編集だが,共通する登場人物が交錯する作りはこの作品群に群像劇としての厚みを持たせている。ぽっかり空いた時間ではなかなか大作は読めないが,本書はちびりちびりと楽しめて,それでいてそこに壮大な警察世界を感じることができてとても楽しめた。てっきり作者は元警察官なのかなと思うほど(実際は元新聞記者とのこと),警察官の機微をうがっており,リアリティが感じられた。警察官の実生活がこんなものなのかはまた別の話だが,例えそうでなくてもこれは小説なのだから,十分である。 続きを読む
投稿日:2015.06.12