文学
春は馬車に乗って
あらすじ
大正後期から昭和にかけて流行した、新感覚派の代表的作家、横光利一。彼の実体験から書かれた本作は、肺病の妻とその世話をする作家の男の物語。病気から自暴自棄でわがままになった妻は、世話をする夫へあたってしまう。説得する夫だが、心のどこかでは、病気の彼女に安心もしてしまっている。「妻の健康な時に彼女から与えられた自分の嫉妬の苦しみよりも、寧ろ数段の柔らかさがあると思った。してみると彼は、妻の健康な肉体よりも、此の腐った肺臓を持ち出した彼女の病体の方が、自分にとってはより幸福を与えられている云うことに気がついた」。正直であるがゆえに傷つけ、でもそこに慰めを得ることができる病床の夫婦の愛。

