文学
行人
あらすじ
『彼岸過迄』、『こころ』と合わせて、漱石の後期三部作と呼ばれている本作。学者である兄の一郎は、妻の自分への気持ちを信じきることができない。そこで弟の二郎に二人きりで旅行をし、貞節を試してみてほしいと依頼する。嫌がりながらも結果一泊した次郎は、兄に始終を話すことはしなかった。兄と仲違いし家を出た二郎は、兄と一緒に旅行してくれと頼んだ友人Hから兄が、「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」と話したと聞く。肥大するエゴや強い自意識を描いた三部作。嘘や欺瞞が許せないがゆえに、尊大にふるまってしまう兄に、悲しさを感じないではいられない。

