文学
武蔵野
あらすじ
いくつもの筆名をもつ独歩が国木田独歩になったとき、彼は渋谷区渋谷村に住んだ。「枯野のなかの此ひとつ家/家のうしろのひとつ松/わが友とては此松のみ/枯野のなかの一もと松/をとづるものは風ばかり/友とし言へば此われのみ」。ここには風流も数寄もない。社会から廃絶された男が厳しい自然と向き合っているだけであり、理想とした武蔵野とはかけ離れている。そして独歩の人生も、愛する人との壮絶な離縁があり、荒廃したものとなっていた。自らの人生と、風景を掛け合わせていく独歩。自然とただひたすら向き合う独歩の愚徹の精神がここにある。

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