文学
檸檬
あらすじ
大正時代のこと。肺を病み借金を抱えた私は、得体の知れない不安に始終苛まれ、それまで関心を持っていた音楽や詩、「丸善」への興味を失ってしまった。そうして町をふらつき歩く日々のなか、私はいつになくひいきの果物屋で買物をした。というのはその店には珍しい檸檬(れもん)が出ていたのだ。私を不安にさせた様々な物事が、檸檬ひとつで払拭されていく。不安に押し潰されただ腐っていく中でも、自分の琴線に触れるものだけには心を開いておくことは、今も昔も変わらぬ、最後の救いなのかもしれない。それがたとえくだらないと言われたとしても。

