小説
わたしのおとうさんのりゅう
あらすじ
私は、『エルマーのぼうけん』を日本で初めて読んだ子どもです。父はやくざでした。母は芸者でした。 高度経済成長期に入りかけた頃の東京の板橋区の裏町の裏通りをさらに入ったところで、「私」は夢中で本を読み、父と母は過去を隠して暮らしていた。『少年少女世界名作文学全集』、『風にのってきたメアリー・ポピンズ 帰ってきたメアリー・ポピンズ』、『シートン動物記』、そして父に読み聞かせてもらった『エルマーのぼうけん』と『ドリトル先生アフリカゆき』・・・・・・「私」の一生を貫き、その言葉をつくりあげてきた児童文学を追ううちに、読み聞かせてくれた父の声から引き寄せられたのは「私」の幼いころの記憶、「私」の知らなかったこと、思い出せない父の背中の刺青。父と母はなぜあのように暮らしたのか。記憶の海に溺れながら、児童文学と翻訳と、「私」につならる人々をめぐる道行き。

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