闇の中をどこまで高く
セコイア・ナガマツ(著)
,金子浩(訳)
/海外文学セレクション
作品情報
【アーシュラ・K・ル=グイン賞特別賞受賞作】未知のパンデミックに襲われ、人々の絆や社会が崩壊しかけた近未来。余命わずかな子供たちを安楽死させる遊園地で働くコメディアンの青年、亡くなった人との短い別れを演出するホテルの従業員、地球を離れて新天地をめざす宇宙移民船……消えない喪失を抱えながらも懸命に生きる人々の姿を描く、新鋭による切なくも美しい第一長編。/解説=渡邊利道
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商品情報
- シリーズ
- 闇の中をどこまで高く
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 海外文学セレクション
- 書籍発売日
- 2024.03.08
- Reader Store発売日
- 2024.03.11
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 315ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
日系アメリカ人の方が書いているからか、日本人名や地名が多く出てきたし、一貫して家族との別れと向き合う物語だった。
レビューの続きを読む
章ごとに語る人物が変わっていき、脇役だった人の数年後の視点になってたり、後々にリンクしてさっきのあのキャラがこんな所に出てきた!って楽しめる。
1つ1つの章が短いし、疫病が流行った世界での対策がどんどん進んでいく過程も面白いし読みやすい。
特に笑いの街と豚息子は悲しくて仕方なかった。
最後の章で、ある装飾品を持っている人が度々変わるなと思ってたけどそういう事か!と納得
読み終わってから何度か読み返してしまった。
カバーはめちゃくちゃカッコイイし、タイトルもマッチしててジャケ買いしたけど大当たり!
終末ものが好きならおすすめ
投稿日:2024.03.20
このレビューはネタバレを含みます
パンデミックでSFと聞いて興味をもって読んでみた。面白かった。解説でも言われていたが、登場人物がモザイク状に繋がっていて面白い。逆に、キャラが出てくるたびに、これは出てた?初出?とちょっと悩む。それく…らいキャラが多くエピソードが多彩。
レビューの続きを読む
北極病という、内蔵が別の内蔵になる病気。怖すぎ。別の何かになるという変身モノでもある。最後に読んで、やっぱお前(異星人)のせいか!となった。
パンデミックでSFではあるが、テーマとして家族の死別がある。いろいろな死別。いろいろなお別れの仕方。感情の後始末の話。泣いた。
「三万年前からの弔辞」
娘(クララ)を亡くした父親(クリフ)の話。孫娘はユミ、妻はミキ。よくわからないウィルスをネズミに注入するのは危険という教訓。
ここで、なんかはるか昔に異星人がいたんじゃないかなあという予感がする。
娘が考えていたことを知りたくて娘の仕事場(北極)にやってきていろいろ考える。
「笑いの街」
子供を安楽死させるテーマパークの従業員(スキップ)の話。母親(ドリー)とその息子(フィッチ)と親しくなる。
死を看取るというか、死に追いやるというか。そんな異常な中での子供への愛を感じられて面白かった。
「記憶の庭を通って」
ここの赤ん坊は後の話でも触れらる。スキップも出てくる。SFチックだが、スピリチュアルな部分が強い。
死者からの目線。
「豚息子」
フイッチの父親(デイヴィッド)の話。
豚(スノートリアス)は人を助ける。その献身さに泣いてしまう。フィッチに出来なかったことをスノートリアスにしてあげたのかなあと考えてしまう。
「エレジーホテル」
葬儀会社が経営するホテルで働く弟(デニス)の話。兄はブライアン・ヤマト。
死期が近い母親に会いたくない。父親にも会いにいかなかった。死んでからようやく会いにいく彼の気持ちが良い。やらなくちゃいけないとわかっていてもやれない人間の話。
「吠えろ、とってこい、愛してると言え」
母親(綾乃)を亡くした父親と息子(明希)の話。綾乃の歌や声が吹き込まれているロボット犬のハリウッド。
そのハリウッドがとうとう壊れそうになり、また母親を失うような気持ちになる。
いつまでも乗り越えられない。乗り越えられないまま終わるが日常は続く。
「腐敗の歌」
献体希望者のレアードとその姉(オーリー)た、献体を扱うラボの職員(オーブリー)とその夫(タツ)の話。
夫婦仲がとっくに終わっていることの描写が良い。
避けようの無い別れ、死と結婚生活。
「事象の地平面のある暮らし」
ブライアンとその妻(テレサ)の話。
テレサは紫水晶のペンダントを持っている。クララだ。
SF全面すぎて、話としては普通。
もうすぐ死ぬかもしれない男の目線。どんな変化が起こるのかわからない不安。それでも日常は続く。記録も付けなければいけない。
「百年のギャラリー、千年の叫び」
クリフの妻のミキと孫娘のユミ、そしてドリー。宇宙船内のあちこちに絵を描くのが良い。星の描写も良い。どんどん時間がズレていく、進んでいく。
「パーティーふたたび」
再生の話。弁護士のダン・ポール。刺青を入れているメイベルにも触れられている。
「東京バーチャルカフェの憂鬱の夜」
ふらふらしている彰とVRカフェの店主(高橋)と佳子とその父親(小林誠司)の話。パンデミックを乗り越えても自殺をする人はいるし、父娘の和解は叶わない。だからこそ、明は生きているうちに母親に会いにいったのかなと思う。
この高橋はクララだと思う。
「きみが海に溶ける前に」
刺青を入れているメイベルと彼女の遺体を加工し海に溶かすサービスを請負う会社の社員の話。
燃やすのではなく、溶かすというのが面白い。そこそこ安全に形が失くなっていくのを眺められる。最後の最後まで一緒にいられる。世界の一部になるのを見届けられる。
「墓友」
田舎は最悪というのを描かれていて面白い。
両親と妹(珠美)と自分。
祖母の葬式によって実家に帰ってきて、改めてここが嫌だったというのを実感していく。それはどんな状況になっても変わらないというのがわかる。
「可能性スコープ」
クララもといクウェリの話。
同族との間でできた娘のヌリ、そして、地球人とできた娘(後にアニーと呼ばれる)。
最後に遠く離れた地で生きているヤマトの船長のメッセージ。
壮大な話ではあるものの、描かれるのは家族の話だった。続きを読む投稿日:2024.04.30
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