魔法のない世界で生きるということ
秋鷲(原案)
,岩佐まもる(著者)
/KADOKAWA
作品情報
私のせいで親友は死んだ。だけど死者を蘇らせる方法はある。あとは生贄だけ。あの時から、私の長い贖罪の日々は始まった。YouTubeで370万再生超え!光溢れる世界を描き出す新進気鋭のクリエイター秋鷲の作品が小説に!大人気声優・佐倉綾音とHoneyWorksのGomが推薦。【あらすじ】―ねぇ、ネモ?あの時、私はなんていえばよかったの?魔女と共に生きる街、ウルガルズ。魔法学校に通うベナ、サラ、そしてネモラは、禁断の魔法が書かれた本を見つける。その本いわく、想い人に会えるという『魔女の涙』がウルガルズの大樹にあるという。興味津々の彼女たちは、三人は一緒に大樹へ向かうが、そこには危険が潜んでいて・・・。これは切なくて寂しい、「死者を蘇らせる禁忌術」と3人の魔女と生贄の少年の物語。
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この作品のレビュー
平均 5.0 (1件のレビュー)
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「いつまでも仲良く」
そう願い続ける少女達の物語。
先に何度もアニメーションを見てからの本書。
先の展開、結末、それらを知っていたけれど、知っているというには不十分すぎる程の内容が本書には記されている…。
それぞれの想い、過去、願い。それらが一致した読後、もう一度アニメーションを見て涙を流さずにはいられなかった。
ーーーーー↓ネタバレありーーーーー
私は過去に友人からこんな言葉を聞いた。
「謝罪はいつしか自己満へと変化する。」
その言葉を私には実感のない理解出来る物として片隅に置いておいた。
けれど、本書を読んで納得した。言わば贖罪、執着、そういうものに変化し、誰かに許しを乞うて生きていく。ましてや謝罪の対象は生死という人間においての最大のものである。
魔法のない世界ではそれはどうしようもない、受け入れざるを得ない事実として鎮座する。しかし魔法のある世界では成す術がある。そこに付きまとう倫理観という障壁。
ファンタジーと呼ぶにはリアルと多く重なる倫理観が、彼女達への同情を招いた。
〜考察〜
○べナの告解
視点はサラを基本に物語が進んでいくが、これはベナの記録だ。
度々挟まる「ベナの告解」
告解とは、キリスト教での罪の赦しを得るための儀式や告白といった行為のこと。言い換えれば懺悔のようなものだ。
(本書がキリスト教をメインに世界観を構築していることは、散りばめられた語句や土葬を行うところから感じ取れる。)
そこで「…だからこれは自己弁護で終わってしまう記録だ。」と述べられている。
赦しをこう場で自己弁護をする。すなわち、許されないと思い続けているのだ。それはモネラに「ハル・フィリーシア」“自由にあれ“と言われてもなお、続く。
しかし、最終章。サラの願いを叶える時、ベナはやっと、「私はサラの願いを叶えたい。許しなどいらない。ただ、それだけの願い。」とモネラの言う「あなたはあなたの時間を生きて」という言葉に沿って自由に動くことができたのだ。
○ハルの部屋
ハルの部屋を訪れたべナ。そこには蝶の標本があったと書かれている。ハルは幼い時に虐待を受けていた家で虫取りなんかで遊べるような状況ではなかったと推察できる。となると標本はサラが初めに見せた魔法による影響だと考えられる。
〜アニメーションの歌詞への考察〜
1番はサラ。2番はハルの視点で歌詞が進んでいく。2人の思いが交差し、最後に旧世界で出会う。
「あなたは信じてくれるかな?」
そうサラの言葉から始まる。一見魔法や砂時計の話だと感じるが、2番でハルが「あなたが信じてくれるから色づき始めた景色」と言うことから、魔法を見せることへの信頼関係についての文章だったことが読み取れる。
また、興味深いのはハルを連れて帰った後に食事でハルが泣きじゃくるシーンである。本書ではサラの心情は描かず、微笑む様子だけをハルの憶測と共に記されている。
しかし、1番の歌詞をサラの視点だと汲み取ると、ハルの涙が感情が零れたものだったからとサラは理解している。2人の間では言葉が無くても既に感情を共有していたのだ。続きを読む投稿日:2024.03.01
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