マリエ
千早茜(著)
/文春e-book
作品情報
私の幸も不幸も、私が決める。そう、決めた
40歳目前に離婚した桐原まりえは、寂しさよりも清々しさを感じていた。新直木賞作家が描く、おとなの女性の幸福と結婚を巡る物語。
『マリエ』は、『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞されたのが記憶に新しい千早茜さんの最新長篇です。
物語は、主人公の「桐原まりえ」が40歳を目前に離婚したところから始まります。離婚理由には納得がいかないものの、もう誰にも属していない、という軽やかさを感じているまりえ。すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望、たとえば恋愛などに呑み込まれたくはない。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気も・・・・・・。
ひょんなことで懐いてきた由井君のことは好ましいのだが、折に触れ、7つの歳の差を感じるばかり。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録します。そこで彼女は、切実な「現実」や結婚に対する思いもよらない価値観を次々と突きつけられるのです。
千早さんは本作を、「生き方」の小説、と話されます。その言葉通り、これまでの千早作品のなかでもっとも著者に近いと言える主人公が、等身大で挑む日常の「冒険」には抜群のリアリティがあります。無防備に新しいことに飛び込んでいける年齢を過ぎて、仕事も落ち着き、結婚生活もリセットされ、コロナ禍に価値観を揺さぶられ・・・・・・そんな「今」の生き方を問う意欲作です。
考え続けるまりえの軌跡を共に歩めば、きっと、「自分が今後の人生に求める幸せ」の輪郭が見えてくることでしょう。
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商品情報
- シリーズ
- マリエ
- 著者
- 千早茜
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2023.08.25
- Reader Store発売日
- 2023.08.25
- ファイルサイズ
- 4.7MB
- ページ数
- 248ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (137件のレビュー)
-
本作品は9編で構成されていて、そのタイトルが全て3つの言葉で表されている。そこに新鮮さを感じ興味を引かれながら、想像を膨らませて読み進めることができた。例えば、始まりの1編目は、「離婚、新しい香水、白…いシーツ」。1編目からインパクトのあるタイトルで、物語が進む中で、主人公はどうなっていくのだろうと想像を膨らませた。主人公は桐原まりえ。冒頭、夫の森崎と2人で離婚届を役所に提出する場面から始まる。そこに悲壮感はなく、淡々とした手続を踏む2人のやりとりがあった。2人は、離婚に向けて2年近く費やしていた。円満離婚という表現に、まりえの心情を想像する。自分で離婚という選択をしているところが、まりえの清々しさに表れているのだろうか。森崎の方の離婚の理由は「恋愛したい」というもの。しかし、相手はいないという状況。それで離婚という選択に理解に苦しむのだけれど、そもそも当事者の2人にしか分からないことなのだろうな。一方で、相手の心の中は当事者でも分かり合えないこともあるだろうなと、そんなことも思いながら読み進めた。
この作品の中で、香りが扱われる場面は、私が読了した『透明な夜の香り』と『赤い月の香り』といった千早さんの作品を思い出す。それぞれの作品世界とのつながりを感じ、そこも読み進める中での楽しさとなった。
まりえは40歳手前である。その年齢からくる様々な心情が細かく描かれていて、まりえ目線になって読み進めている感覚をもった。離婚後、桐原まりえとしての生活が始まる。
千早さんの細かで丁寧な描写により、個性的で魅力的な登場人物たちが表れる。その都度、まりえの心の動きを想像し、切なくもなり、嬉しくもなる。
まりえがいきつけのフレグランスグッズを扱う店の店員である林。そのやりとりの中で、まりえは身に纏う新たな香りを求めていた。そこで選んだ香水が『マリエ』とい名前の香り、繊細なマリッジブーケをイメージして作られた香り、その表現からイメージすることは難しいが、幸せを彷彿するような印象を受けた。
ワインバーで知り合った、親ほども年齢の違うマキ。まりえを心配するマキ。その関係は居心地がいいのだろうな。そんな人がいれば、癒されるし強くなれそうだし、前を向いて進めそう。
まりえの大学時代のサークル仲間、早希。早希は結婚、離婚、不倫、そして、妊娠、結婚という人生を歩んでいた。そして、早希は不倫を続けていた。それでもまりえにとっては、笑い合える友人であった。まりえの纏っている香りで安心する早希、そこに2人のつながりの温かさを感じる。
サークルの先輩、尊。尊は3年で離婚、たまたままりえと同じ時期に離婚していた。この後、尊と登場人物との関係が気になる。
観月台先輩は、大学のサークルの女性の先輩。背が高く、女性が憧れるような外見なのだけれど、コンプレックスを感じていた。婚活をしていたが、なかなか進展せず、相手の「認める」という言葉に、すれ違いを感じていた。相手の趣味を認めるというのは、どうなのだろう、そこに対する納得できない感覚もあるのかな。
林の紹介で出会う由井、銀髪の長身の男の子。7歳下の年が離れた若い男性、この出会いが、これからのまりえの生活を変化させていく。一緒に帰る夜道、お礼に出したガーダスープ、何か特別な状況を予感させていた。まりえの自宅で休日の昼間に、小麦粉料理を一緒にすることになる。そして、一緒に食べる。その関係は、自然な流れであるかのように感じた。由井の気持ちは明らかになっていない中で、物語は進んでいく。2人の進展を気になりながら読み進めた。
まりえは結婚相談所に行く。紹介された3人と会ってみたまりえ。その中の1人である本田と再会をする。そんな中、由井との関係が進展する。それでも、本田との見合いは続けていくまりえ。そこに、難しい状況と心情を想像する。選べないのか、選ばないのか。
まりえは、子供が授かりにくかった。産婦人科の経過観察は続く。由井との関係を続ける中で、結果的に判明した身体症状。不安を感じながら読み進めた。マキの明るい反応はまりえにとって救いだったろうな。困ったことを曝け出せる誰かがいることの救いを感じた。マキのアドバイスがまりえの心に沁みていく。由井との関係やマキとの関係を言葉にしようすることに、楽しむという自由さがもてればいいのだろうな。難しさも感じるけれど、それでも由井に口にしてしまうまりえの心も苦しいだろうな。
本田との3回目のお見合い。でも、そこでのやりとりによって由井との自然さに気づくのも、めぐり合わせかな。誰かとの関係は、他の誰かとの関係によって、気づくこともあるだろうな、その違いに気づくから。まりえ宛の結婚相談所からの封筒で、由井にそのことを気づかれる。由井の衝撃が痛みをもって伝わってくる。まりえの辛さも伝わっていくる。このようなことは起こりうるかな。結婚と恋愛の違いは何だろう。自分の気持ちは、どのようにして素直になるのか、ならないのか。まりえは結婚相談所を退会する。それは自然な感じであった。
ラストは、まりえの心がはっきりと伝わり、ほのぼのとしながらも前向きな思いが心地よい。これまでに読了した千早さんの作品との違いを感じながら、登場人物の気持ちに寄り添って読み進める楽しさを存分に味わった。そして、新たな読了感を得た。次の千早さんの作品との出会いが楽しみとなった。
続きを読む投稿日:2024.02.10
このレビューはネタバレを含みます
現代の女性の生き方は多様化していて、結婚して子どもを育てるのだけがあたりまえではない。好きなように生きていいと寄り添ってくれているように感じた。恋愛なんて興味がないように振る舞うマリエも結局、恋愛がや…められない。気づいたらハマってて夢中になってしまっている。彼のいる生活に慣れてしまって、連絡がないことにもやもやしている姿に共感した。辛くなってやめたくても、好きという感情はなかったことにはできないから時が過ぎるのを待つしかない。恋愛感情なんてなくなればいいのにと苦しい恋愛をしている時は思ってしまう。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2024.04.14
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