デオナール アジア最大最古のごみ山
ソーミャ・ロイ(著)
,山田美明(著)
/柏書房
作品情報
インドに関する本を一冊読むなら、この本を読んでほしい。――ギーター・アーナンド(ピューリッツァー賞作家)2013年夏、ムンバイでマイクロファイナンスを扱うNPOを運営する著者は、融資を求めてやってくるある人々の存在に気づく。市街地の端にあるデオナールごみ集積場でお金になるごみを集め、それを売ることでその日暮らしをするくず拾いたちだ。絶えず欲望を追いかけてモノで心を満たそうとする現代生活の産物でもあるそのごみ山は、20階建てのビルほどの高さになる。腐った食べ物、古い端切れ、割れたガラス、ねじ曲がった金属、ときには赤子の死体、花嫁の遺骸、医療廃棄物など、あらゆる夢の残骸がそこに行きつく。誰の目にも見えるところにありながら、誰の目にも見えていない広大なごみの町。著者と住民との8年以上にわたる長いつきあいが始まる。ごみ山が放つ有害な後光(自然発生する火災、都市の上空を覆う有毒ガス等)が目に見えるかたちをとり、無視できなくなるにつれて、市当局による管理の動きも露骨になっていく。その影響を受けるのは当然、そこで生きる人々だ(そもそもこの地区の起源は19世紀末、植民地時代の感染症対策にある)。これまで以上に足場が脆くなるなかで、ある四家族の生活を著者は追い続けた。とりわけ注目したのが、10代の少女ファルザーナー・アリ・シェイクだ。彼女はごみ山で生まれ、そこで愛を知り、子をもうける。悲劇的な事故にまきこまれながらも。彼女らの目を通して、最も荒涼とし腐臭に満ちた場所であっても、美や希望、愛が花開くことを私たちは知ることになる。同時に、グローバル資本主義が最も脆弱な立場にいる人々にどのような影響を与えるのかも知るだろう。〈いまや彼らは、目に見える世界に戻るために闘っていた。その姿を見せるために闘っていた。姿を見せる相手とは、すぐそばにいた彼らを避けてきた人々、くず拾いをひき殺す事故に責任を負うべき人々である〉著者は記す。この地で生まれる物語がまるで非現実的な気がしたとしても、その大半は現実である。そしてそれはごみ山で暮らす人々の物語であると同時に、どこにでもある物語なのだと。行き場のない核のごみ、不法投棄や環境汚染、連鎖する貧困、新生児遺棄、メガイベントの裏で排除されるホームレス・・・・・・。日本で起きていることと、ふと重なる瞬間が訪れるはずだ。不思議な既視感を覚える、寓話的ノンフィクション。
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この作品のレビュー
平均 2.5 (2件のレビュー)
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インド最大都市ムンバイのごみ捨て場デオナール。ごみ山を、絶えず欲望を追いかけてモノで心を満たそうとする現代生活の産物であるかのようだと著者は考える。
ファルザーナーの家族を始めとする、ごみ山に暮らす…人々については引き込まれるように読んだ。
ごみ山で手や脚は傷だらけになり、汚染物質から出る有毒ガスに体を蝕まれる。ごみ山から抜け出したくても、生きていくためにごみ山を離れることができない人々。
シャイターンと呼ばれる悪霊、護符や霊廟が生活の中で当たり前のように存在している。
あらゆることが興味深かった。
並行して書かれている司法・行政の動きが私には難解だった。
さまざまな縮小・処理計画が出たかと思えば頓挫し、閉鎖の延期が繰り返され、読んでいるうちにわけがわからなくなってしまった。
珠玉のルポタージュであることは確かだが、私にはどうにも読みにくく、読み終えるまでにかなり時間がかかってしまった。続きを読む投稿日:2023.11.18
ゴミ山の中で生活って比喩的なものではなく、まんま現実で、読んでて臭いが漂ってきそうで気持ち悪くなった。そこから衣食住を拾い上げるだけじゃなく、出産から埋葬まで!? 理解が追いつかない。最強の吐き気は、…事なかれ見ぬふり先送り行政のはびこり感。どういうこと?続きを読む
投稿日:2023.12.03
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